成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
研究課題: 画像解析を用いた牛枝肉品質計測システム
        (画像処理を用いた牛枝肉品質自動計測装置の開発)

担当部署: 道立畜試 家畜生産部 育種科、道立工試、帯広畜産大学、早坂理工株式会社
予算区分: 重点領域特別研究
研究期間: 2003〜2004年度(平成15〜16年度)

1.目的
 牛枝肉横断面の高精細画像を撮影し、高精度な品質評価を実現する牛枝肉品質計測システムを開発する。さらに、開発された計測システムを用いて得られる枝肉品質情報の育種改良等への有効性を検討すると同時に、これらの情報を生産者にフィードバックする体制を構築する。


2.方法
 1)  新しい高精細枝肉横断面撮影装置の開発
  切開幅の狭い枝肉においても高精細広視野画像を撮影できる薄型撮影装置を開発する。
 2)  枝肉画像解析ソフトウエアの開発
  高精細画像の利用により高精度な品質評価を実現する画像解析方法を検討し、一連の画像解析を統合する画像解析ソフトウエアを開発する。
 3)  画像解析による枝肉品質情報の育種等への利用
  開発されたシステムを用いて得られる枝肉品質情報の育種改良等への有効性を検討し、それらの情報を生産者にフィードバックする体制を構築する。
 

3.成果の概要
 1)-① 枝肉横断面の改良型撮影装置を試作し、従来型撮影装置と比較して約2倍の撮影面積、約6倍の解像度の高精細広視野画像の撮影を実現した。
     これにより枝肉の格付けに重要な部分の画像を一回の撮影で取得することが可能となった(表1)。
 1)-② ミラーを用いた機構の採用により、改良型撮影装置の全高を約23cm(ただし枝肉挿入部のみ)に薄くした実用型撮影装置(ミラー式薄型撮影装置)を開発した。
     これにより、一般枝肉市場で多く見られる切開幅の狭い枝肉に対しても横断面画像の撮影が可能となった(表1,図1および2)。
 1)-③ レーザー光を用いた撮影面の傾き検出機構を開発し、撮影装置に搭載した。本機構の導入により、撮影作業が撮影者1名のみで可能となった。
 2)-① 枝肉画像解析ソフトウエアを開発し、現行の格付項目には含まれていない脂肪面積比やロース芯形状、脂肪交雑粒子のあらさ等についても評価が可能となった(図3)。
 2)-② 枝肉横断面画像の解析による脂肪交雑(BMSナンバ)推定値と格付値との一致率は74.2%、誤差±1以内は98.3%であった。
     従来型撮影装置と比べ、一致率は22.8%向上した(表2)。
 3)-① 本システムにより、脂肪交雑粒子のあらさやロース芯形状について数値化することが可能となり、種雄牛造成における選抜指標として有効であると考えられた。
 3)-② 脂肪交雑に関するQTL(量的形質遺伝子座)解析の結果、BMS ナンバと関連の高い脂肪面積比において高度に有意なQTLが検出され、QTL解析における有効性が示された
     (表3)。
 3)-③ 高精細枝肉画像を利用した精細な解析により、牛肉の美味しさに関係のある筋肉内脂肪中のモノ不飽和脂肪酸割合を推定できる可能性が示された(図4)。
 3)-④ 枝肉画像データベースをつくり、生産者に情報をフィードバックする体制を構築した。

 枝肉横断面撮影装置と画像解析ソフトウエアからなる牛枝肉品質計測システムを開発し、その情報を生産者にフィードバックする体制を構築した。本システムは、より客観的で精細な品質情報を得ることを可能とし、育種改良や肥育牛生産の現場等において、品質や技術向上の有効な手段となる。

4.成果の活用面と留意点
 1) 本システムより得られる情報は、育種改良等より精細で客観的な情報が必要な場面において、特に有効である。
 2) これらの情報を生産者にフィードバックし、今後の肥育生産に活用してもらうことで技術ならびに品質の向上が期待される。

 

5.残された問題とその対応
 1) モノ不飽和脂肪酸割合推定値の利用→推定に影響する諸要因の検討、画像解析ソフトウエアへの組込み
 2) 品質情報表示のリアルタイム表示→撮影装置自体に小型PCを搭載