成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
研究課題:飼育期間の短縮可能な改良型高品質肉用鶏「北海地鶏Ⅱ」
(高品質肉用鶏「北海地鶏」の大型化)

担当部署:道立畜試 家畜生産部 特用家畜科
予算区分:受託
研究期間:2003〜2005年度(平成15〜17年度)

1.目的
 
北海地鶏は、シャモ中型系統の雄にロードアイランドレッドの雌を交配したF1雌鶏に、名古屋種の雄を交配する三元交雑鶏であり、平成4年に造成されて以来、高品質肉用鶏として評価を得ていた。しかし、経済性からみて飼育期間の短縮が必要であるとの課題が指摘されていた。
そこで、肉質を落とさず発育を向上させるため、北海地鶏の基礎系統の1つであるシャモを中型系統から大型系統に置き換えた改良型高品質肉用鶏「北海地鶏Ⅱ」を作出し、飼育期間の短縮化を図り、生産効率の向上を目指す。

2.方法
 
1)シャモ大型系統の特性調査と中型系統との比較
 2)大型系統を利用したF1雌鶏と中型系統を利用したF1雌鶏の比較
 3)大型系統を利用した改良型高品質肉用鶏「北海地鶏Ⅱ」の作出と従来型北海地鶏との比較
 4)順次出荷方式が肉質特性に及ぼす影響
 5)飼育モデルの設定と収益性の試算

3.成果の概要
 
1)43週齢の体重は雄雌ともに有意に大型系統が重く、採精量および総精子数も大型系統が多かった。
 2)産卵率は、従来型F1雌鶏が70.7%に対し、改良型F1雌鶏が61.6%と低かった(表1)。
  F1雌鶏1羽当りの出荷雛数は、従来型が192羽に対し改良型が134羽と低く、生産コストの低減を図る上で、改善すべき点であると考えられた。
 3)-① シャモ大型系統にロードアイランドレッドの雌を交配したF1雌鶏に名古屋種の雄を交配して改良型高品質肉用鶏「北海地鶏Ⅱ」を作出した。
 3)-② 4週齢以降の体重推移は改良型が従来型より有意に重く、大型系統による効果は三元交雑鶏でも顕著であった(図1、2)。
 3)-③ 改良型の設定出荷体重(雄2,800g、雌2,200g)に到達する日齢は、雄は99日、雌は105日であり、従来型より雄で12日、雌で11日短縮された。
 3)-④ 改良型の飼料要求率はやや低く、雄は3.68、雌は3.94であった。と体に対する正肉割合に差はなかった(表2)。
 3)-⑤ 改良型は肉色ではL値(明度)が高い傾向にあり、剪断力価は低い傾向にあったが、イノシン酸およびグルタミン酸含量に差はなかった(表2)。
 4) 出荷体重に達した個体から順次出荷する方式を想定した場合、改良型と従来型ともに雄15〜18週齢、雌17〜20週齢の間で剪断力価は高くなる傾向にあったが、それ以外の肉質
  特性に大きな差はみられなかった。
 5) 雄種鶏およびF1雌鶏と三元交雑鶏を飼育する農場を想定して肉生産性、飼料費等の費用および正肉販売額を比較すると、改良型は費用は増加するが、飼育期間が短縮したこと
  により年間生産正肉量が増加し、収入増となると試算された。

 北海地鶏の基礎鶏であるシャモの中型系統を大型系統に置き換えることにより、肉質を維持したまま発育の向上した改良型高品質肉用鶏「北海地鶏Ⅱ」を作出した。これにより飼育期間が短縮でき、生産効率の向上に寄与できる。

 4.成果の活用面と留意点
 1)改良型F1雌鶏は産卵率が低い傾向にあるので、改良型を生産する場合は雄種鶏およびF1雌鶏を多く用意する必要がある。
 2)悪癖の発生には十分注意し、場合によってはデビーク等の適切な処置を行う。

5.残された問題とその対応
 1)F1雌鶏の産卵性の改善による三元交雑鶏の生産性向上
 2)北海地鶏Ⅱに適した飼養管理技術の確立