成績概要書(2006年1月作成)

研究課題:草地酪農における道産飼料100%の乳牛飼養法
           (地域資源を活用した北海道型乳牛飼養法の確立)

 担当部署:根釧農試 研究部 乳牛飼養科・乳質生理科・作物科
 協力分担:
 予算区分:道費(農政部事業)
 研究期間:2002〜2005年度(平14〜17年度)

 

1.目的
 
地域資源を活用した安全・安心な畜産物生産という観点から、輸入飼料に依存せず、道内で自給される粗飼料と農業副産物を用いた泌乳牛飼養法を提示する。

2.方法
 
1.牧草サイレージあるいは放牧草と農業副産物による泌乳牛飼養法
  1)農業副産物(小麦、ビートパルプ、米ヌカ)を用いた牧草サイレージ主体混合飼料
    (TMR)の第一胃内発酵特性
  2)牧草サイレージと農業副産物を用いたTMR給与による一乳期成績
  3)放牧草と農業副産物による乳生産
             

 2.高栄養価粗飼料の探索とその利用可能性
  1)とうもろこし(サイレージ用)
  2)イタリアンライグラス

3.成果の概要
 
1.牧草サイレージ主体TMRにおいて小麦あるいは米ヌカの混合割合を高めると、前者では第一胃内pHの低下、後者では第一胃内アンモニア態窒素濃度の上昇が認められた。
  本試験条件下では、小麦の混合割合15.5%、米ヌカの混合割合8%までは第一胃内発酵に顕著な影響を及ぼさなかった(表1)。

 2.牧草サイレージと農業副産物(規格外小麦、フスマ、米ヌカ)を用いたTMRの給与により、乳成分、繁殖成績を良好に保ち一乳期7,300kgの乳生産が可能である(表2および3)。
  このTMRは、分娩後150日までは粗濃比50:50(乾物)を基本とし、CP14%、TDN73%以上を目安に設計したものである。農業副産物の価格は34円/現物㎏であった。このTMR構成では、
  150日以降に過肥の傾向がみられた。この点を考慮した、道内自給飼料を主体とするTMRの構成例を表4に示す。

 3.放牧泌乳牛に農業副産物(小麦、フスマ、ビートパルプ)を併給することにより8,000㎏の乳生産が可能である。農業副産物の価格は、分娩後150日までは33円/現物㎏、150日以降では
  31円/現物㎏であった。このときの放牧草の摂取量と農業副産物の給与量に基づく、道内自給飼料を主体とする放牧泌乳牛の飼料設計例を表5に示す。

 4.道内自給飼料を用いた乳生産を志向する生産者の農場において、放牧泌乳牛の併給濃厚飼料のうち配合飼料の部分を小麦に変更したところ、小麦の摂取量は配合飼料よりも少な
  く、日乳量は25.8㎏から21.0㎏に減少し、一乳期乳量は6,500㎏程度であった。乳量の減少には、放牧草摂取量や併給粗飼料の栄養価が低かったことなども影響していた。
  繁殖成績はおおむね良好で、乳牛の健康状態に変化はなかった。

 5.道東地域において、サイレージ用とうもろこし早生品種を狭畦露地栽培すると1,100〜1,300㎏/10aのTDN収量が得られる可能性がある。また、イタリアンライグラスは、700〜800㎏/10a
  の乾物収量が得られ、サイレージの栄養価も高い(乾物中含量CP18%、TDN71%)。そのサイレージを用いたTMRにより乳量は向上する。
  道内自給飼料を主体とする乳牛飼養へのこれらの応用が期待される。

 以上、牧草サイレージに農業副産物を第一胃内発酵に悪影響のない割合で混合したTMRにより7,300㎏の、また、放牧草に副産物を併給することで8,000㎏の乳生産が得られ、それらの飼料構成例を提示した。


   


  


  


   

4.成果の活用面と留意点
 
1.本成果は草地型酪農において道産飼料100%の乳生産を行う場合に活用する。その場合消費者ニーズの的確な把握、道産農業副産物(特にフスマや米ヌカ)の安定確保に努める。
 2.放牧泌乳牛の併給濃厚飼料として小麦を用いたとき、その嗜好性が劣る場合があるので、他飼料との混合など摂取量を高めるよう配慮する。

5.残された問題点とその対応
 
1.小麦と他のデンプン質飼料を併給した場合の第一胃内発酵
 2.放牧時に併給する飼料の摂取量向上
 3.道産飼料を用いた乳牛の哺育、育成法
 4.根釧地域における早生とうもろこしの狭畦露地栽培法の確立
 5.草地地帯におけるイタリアンライグラスの栽培利用法、適応品種および経済性の検討