成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
 研究課題:草地型酪農地帯の草地における衛星リモートセンシングおよびGISの利用技術
      (農産物生育の広域モニタリング手法の開発)
      (リモートセンシング及びGISを応用した草地生産基盤評価法の開発)

 担当部署:北海道立根釧農業試験場 研究部 作物科
      北海道立天北農業試験場 研究部 草地環境科、牧草飼料科
 担当者名:         協力分担:
 予算区分:研究調整費・国費受託  研究期間:2002〜2005年度(平成14〜17年度)

  

1.目的  中解像度(数m〜30m)のマルチスペクトルバンド(以下MS)衛星データを用いたリモートセンシング(以下RS)技術およびGIS技術が、草地において産業レベルで利用可能な場
  面を明らかにする。

2.方法
 1)草地におけるMS衛星RS実利用技術
  用語解説:NDVI(正規化植生指数)=(近赤外波長−赤波長)/(近赤外波長+赤波長)〜値が大きいほど植物の光合成有効放射吸収量、植物バイオマス量が多く、葉面積指数が高いと
  される。
  NDWI(正規化水指数)=(赤波長−中間赤外波長)/(赤波長+中間赤外波長)〜水域(海や河川、湖沼、湛水された水田等)に対応する指標とされ、値が大きいほど湿潤とされる。
  (1)衛星データ取得機会
  (2)草地酪農地帯における草地の抽出法
  (3)草種判別:イネ科草間、リードカナリーグラス(以下RCG)の判別の検討
  (4)草地生産性評価:牧草収量の推定、草地整備事業への利用検討
  (5)草地湿潤程度の評価  
  (6)早春草地の越冬状態評価
  (7)マメ科牧草割合の推定
 2)草地おけるGISの活用場面
  (1)メッシュ気候データを用いた積算気温表示例
  (2)地域支援システムへの活用事例

3.成果の概要
 1)衛星データ取得機会は、根釧地域では早春や晩秋、天北地域では春に多かった。
 2)衛星データから草地を抽出するには、広域の場合は国土数値情報・土地利用メッシュによる抽出と、画像ソフトによる教師なし分類で60〜80%程度の草地を抽出できる。
   地域単位では、航空写真を用いることにより高い精度で圃場区画単位の抽出ができる。
 3)中解像度のMSデータでは草種間に特徴的な差異が認められず、広域の草地を対象とした草種判別やRCG草地の抽出は困難と考えられた。
 4)NDVIを用いて草地の収量推定が可能で、草地毎の収量性および一筆内の収量のばらつきについての評価ができる(図1,2)。
 5)中間赤外、近赤外、NDWIはO層、Ap層の含水率と有意な相関関係が認められた(表1)。また、早春の衛星データから作成したNDWI区分図は、1999年7月30日の降雨後の冠水エリア
  マップ(北海道開発局稚内開発建設部)と良く一致した。草地整備事業に適用したところ、排水改良施工後のNDWI値は施工前の草地よりも低く、排水改良の効果を評価できた(表2)。
  以上から、NDWIで草地の湿潤性を評価することができる。
 6)萌芽時期のNDVI値は、越冬後のチモシー被度や広域の裸地の多少の評価から、越冬不良な草地を抽出できる(表3)。
 7)マメ科率の推定は、草量や糞尿散布等の人為的要因が影響し困難であった。
 8)GISは、メッシュ気候データと組み合わせた営農用気象マップは飼料作物品種の適用範囲検討等に応用でき、また、圃場図・管理台帳(面積・距離・植生、他)等は営農計画や地域支
  援システムの計画・運用に活用された(図3)。
 9)以上の結果から、現状における中解像度MS衛星データを用いたRS技術およびGIS技術の広域草地管理への実利用可能性を整理した(表4)。

 

 

 

 

 

 

 

 

表4 中解像度マルチスペクトルバンド(MS)衛星データを用いたリモートセンシング(RS)技術およびGIS技術の広域草地への実利用場面

 

4.成果の活用面と留意点
 1)中解像度のMS衛星データを用いたRS技術は草地の生産性、湿潤性、越冬状態等の評価が可能で、草地整備事業等に活用できる。
 2)GISは飼料作物品種の普及範囲の解析、地域の作付け計画、地域支援システムの計画策定・運用・作業計画等で活用できる。
 3)収量推定の際は、出穂茎や節間伸長茎が出現する前の時期のNDVI値を用いる。

5.残された問題点とその対応
 1)ハイパースペクトルによる草種判別および栄養価推定の可能性の検討。