成績概要書(2006年1月作成)
課題分類: 担当部署:道立畜試技術体系化チーム |
1.目 的
チモシー主体草地1番草のサイレージ調製において発生する排汁の量と性状を把握し、収量や植生に影響を及ぼさない2番草への施用方法を明らかにする。
2.方 法
1)牧草サイレージ排汁の発生量と成分
(1)原料草の水分含量の実態
(2)原料草の水分含量と排汁発生量
(3)排汁の成分含量とその推定法
2)牧草サイレージ排汁の草地への施用
(1)排汁施用が2番草の収量、植生および土壌に及ぼす影響
(2)排汁施用時期の検討
(3)サイレージ排汁の施用指針
3.成果の概要
1)-(1)
① 調査農家のべ9戸での牧草サイレージの調製では1日予乾が多かったが、予乾後の平均水分含量は72.8%で、サイレージ調製の適水分域である60〜70%に到達しているのは2戸
であった。
② 十勝農協連に持ち込まれた1番草牧草サイレージの水分含量は平均74%であり、75〜80%の高水分域のものが全体の40%以上を占めた。
1)-(2)
① 畜試サイロにおける排汁量(n=6)は原料草の水分含量が高いほど多く、83%のときに最大162L/原料草t発生し、67%では発生しなかった(表1)。畜試の測定値とよく一致した既往
の推定式を用いると、排汁量は水分含量75,80,85%でそれぞれ20,90,200L/原料草t程度と推定された(図1)。
② 排汁は牧草収納後早期に多量に発生し、8〜28日後までに全排汁量の50%に達した。
1)-(3)
① 畜試サイロにおける排汁原液の成分は平均でpH;4.2、全窒素;0.20%、リン酸(P2O5);0.13%、カリウム(K2O);0.58%、BOD;34000mg/Lであり、肥料成分や汚濁物質を多く含んでいた
(表2)。
② 排汁の肥料成分含量はサイロ、排出時期、雨水の混入等により変動し、電気伝導度(EC)の測定により推定可能であった(表3)。
2)-(1)
① 1番刈り後に排汁を施用すると、牧草再生量が多い場合、接触障害による減収や植生悪化が認められた。シロクローバは排汁施用による衰退が認められた(表4、5)。
② 排汁施用によって、増収効果がみられる場合があったが、牧草および土壌中のカリウム含量は増加し、特に2t/10a以上の施用で顕著な蓄積(表4、5)が認められた。
2)-(2) 1番草刈り取り後3日および1週後の施用では、乾物収量の低下はみられなかったが、2週後では低下傾向がみられた(表 6)。
2)-(3) 施肥標準を勘案し、サイレージ排汁の2番草への施用指針(暫定)を表7にまとめた。
以上より、 バンカーサイロの排汁量は原料草の水分含量に大きく依存し、水分含量83%では原料草の15%以上の多量となるが、67%では発生しなかった。排汁はpHが低く、BODが高いので水系への流出がないよう適正な管理が必要となる。排汁は草地に施用でき肥料効果があるが、接触障害やカリウムの施肥標準を考慮すると、2番草への施用は原液で1t/10a程度が上限であり再生開始前の施用が望ましい。
表1 畜試サイロにおける原料草収納量、水分および排汁量
図1 排汁量と原料草水分含量の関係および既往の排汁推定式
表2 牧草サイレージ排汁の成分
表3 ECによる排汁成分推定早見表
表4 2番草に対する排汁施用が収量、草種構成、牧草中K、土壌中K2Oに及ぼす影響(2003年更新2年目草地)
表5 2番草に対する排汁施用が収量、草種構および土壌中K2Oに及ぼす影響(2004年更新3年目草地)
表6 排汁施用時期が2番草の収量および草種構成に及ぼす影響
表7 牧草サイレージ排汁の2番草への施用指針(暫定)
4.成果の活用面と留意点
1)本成績はチモシー主体草地に適用する。
2)スラリー・尿汚水の貯留槽にサイレージ排汁を混入しても良いが、有毒ガス(硫化水素)が発生する危険性があるので密閉された貯留槽・屋内貯留槽では混合しない。
5.残された問題とその対応
1)サイレージ排汁の肥効率の検討
2)1番草への施用効果の検討