「とうもろこし(サイレージ用)「TH058」」(普及奨励事項)

                                    北海道農業研究センター作物開発部トウモロコシ育種研究室
                                    上川農業試験場研究部畑作園芸科
                                    畜産試験場環境草地部草地飼料科
                                              執筆担当者 濃沼 圭一

 「TH058」は“中生の中”に属し同熟期の標準品種「クラリカ」と比較して、次のような特性をもち、対象地域での安定栽培が可能である。絹糸抽出期、収穫時の熟度および乾物率はいずれも並である。耐倒伏性は強い。すす紋病抵抗性はやや強く「キタユタカ」より強い。ごま葉枯病抵抗性は弱く「キタユタカ」並である。発芽は並で初期生育は並かやや優れる。乾物総重および推定TDN収量は平均で5%高く、乾雌穂重割合は並である。

1 試験目的
 サイレージ用とうもろこし外国導入品種の各地域における適応性を評価し、優良品種を選定する。

2 試験方法
   品種名:TH058
   組合せ:単交雑(デント×フリント、構成系統は不明)
   育成者:コサードセメンセス社(フランス)
   導入者:タキイ種苗株式会社
   登 録:OECD  2000年

3 試験成績
 (1) 熟    期
  絹糸抽出期、収穫時の熟度および総体乾物率はいずれも「クラリカ」並で、熟期は“中生の中”に属する。
 (2) 耐倒伏性
  「クラリカ」より強い。
 (3) 発芽および初期生育
  発芽は「クラリカ」並で、初期生育は「クラリカ」並かやや優れる。
 (4) 収量性および乾物特性
  乾総重および推定TDN収量は「クラリカ」より平均で5%高い。乾雌穂重割合は「クラリカ」並である。
 (5) 形態特性
  稈長は「クラリカ」よりやや高く、着雌穂高は「クラリカ」よりやや低い。
 (6) 耐 病 性
  すす紋病抵抗性は「キタユタカ」より強く「クラリカ」よりやや強い。ごま葉枯病抵抗性は「キタユタカ」並で「クラリカ」より弱い。


表1 生育および収量調査の結果概要1)

 
注  1) 畜試滝川試験地の平成16年は、春先の天候不順による播種の遅れとその後の湿害による生育異常のため、倒伏および折損を除き参考成績とした(倒伏合計と折損はH15〜1
    の3か年平均)
     2) 1:極不良〜9:極良の評点
     3) 倒伏と折損の合計個体率
     4) 品種間差異が認められた試験の平均
     5) 推定TDN収量=乾茎葉重×0.582+乾雌穂重×0.85

 

表2 病害抵抗性に関する特性検定試験結果(北海道農研)1,2)


 注 1) 罹病程度の評点値(1:無〜9:甚)
   2) 接種方法は、すす紋病では粉砕罹病葉懸濁液を感染源品種(エマ)に接種、
        ごま葉枯病では麦粒培養した菌または粉砕罹病葉懸濁液を全個体に接種

 

4 試験結果及び考察
 「TH058」は、“中生の中”の熟期で、収量性、耐倒伏性およびすす紋病抵抗性等に優れることが示された。対象地域での安定栽培が可能であると判断される。

5 普及指導上の注意事項
  普及対象地域:北部を除く道央地域
  普及見込み面積:      900ha
  配布しうる種子量:   20t