成績概要書(2006年1月作成)

研究課題:環境に配慮した酪農のためのふん尿利用計画支援ソフト「AMaFe」
       (養分循環に基づく草地管理のための意志決定支援ツール「AMAFE」の開発)

担当部署:酪農学園大学 土壌植物栄養学研究室、畜産草地研究所 草地資源評価研究室、
       根釧農試 草地環境科、中央農試 環境保全科、天北農試 草地環境科
予算区分:共同研究
研究期間:2004年度(平成16年度)

 

1.目的
 1戸の酪農家を基本単位とし、環境に配慮しつつ、飼料生産性を効率よく高めるため、家畜ふん尿と化学肥料の適正利用計画立案を支援する情報提示用ソフトウエアを開発する。

2.方法
 1) 土壌診断・ふん尿肥効評価サブルーチン
  利用情報:北海道施肥ガイド、家畜ふん尿処理・利用の手引き2004、地力保全土壌図
 2) 環境影響評価サブルーチン
  アンモニア揮散(酪農学園大学)、ポット試験
  窒素溶脱(酪農学園大学、根釧農試、天北農試)ライシメータ、圃場試験
  引用:「牧草・飼料作物に対するふん尿主体施肥設計法」
  使用言語:Microsoft Excel VBAマクロ

3.成果の概要
 1) 施肥対応の論理は、一部で簡略化を図ったが、現在推奨される論理をおおむね踏襲した。
 2) 環境影響評価として、アンモニア揮散量と硝酸態窒素溶脱量を推定した。ふん尿施用時のアンモニア揮散量は、気温、土壌水分などの異なる条件で得た試験結果(図1)に基づいて設定し
  た揮散係数(表1)を、施用するふん尿のアンモニウム態窒素量に乗じて求める。
 3) 硝酸態窒素溶脱量は次の指数関数式によって推定する(図2、表2)。
       ya × ebx
   
ここで、y,硝酸態窒素溶脱量(kg/ha); ab,定数; x,有効窒素施用量(kg/ha)
  化学肥料単用の場合,有効窒素施用量=化学肥料窒素施肥量(以下、FN);
  スラリーと化学肥料併用時,有効窒素施用量=FN+スラリー中アンモニウム態窒素量-アンモニア揮散窒素量;
  堆肥と化学肥料併用時,有効窒素施用量=FN+(堆肥中全窒素量-アンモニア揮散窒素量)×0.2。
  なお、尿施用時はスラリーの計算方法を適用する。
 4) 草地更新時および維持管理時に施用した堆肥の残効情報とリン酸およびカリウムの土壌診断情報の両方を有する場合には、土壌診断による施肥対応を優先する。
 5) 以上の環境影響評価法と既存の施肥管理に関する指標に基づき、1戸の酪農家を基本単位とするふん尿利用計画支援ソフトを構築した。
  各圃場について、面積、利用区分、土壌区分、土壌診断値、飼養頭数、ふん尿の分析値等を入力すると、基本的なふん尿利用計画と購入肥料による養分の補填量およびその施肥管
  理で発生する環境負荷(窒素の溶脱量と揮散量)の推定値が表示される。入力項目の内、土壌診断値とふん尿分析値の入力は必須ではなく、任意とした。
  操作者は、その画面を見ながら、目的に応じて各圃場のふん尿施用量を手動で修正し、ふん尿利用計画を立案する(図3)。
 6) 本ソフト初版の仕様に関する注意事項を以下に示す。
  (1)土壌診断に基づく施肥対応の減肥可能年限は要素・土壌によらず1年となっている。
  (2)台地土の更新後2-5年目採草地に利用が限定される窒素の給源別供給量と土壌分析に基づく窒素施肥には対応していない。
  (3)環境影響評価の表示は、維持管理段階の採草地に限定する。
  (4)環境負荷量の表示値は、ふん尿の種類と量を変更する時の参考となるが、負荷量の絶対値を示すことにはならない。

 

 


 

 

 

4.成果の活用面と留意点
 1)酪農家および酪農技術指導者を主な対象として、環境に配慮しつつ、適正なふん尿利用計画を立案するために活用できる。
 2)本ソフトの著作権は酪農学園大学、畜産草地研究所、根釧農試、天北農試および中央農試で構成する共同研究グループに、また、本ソフトに組み込まれた地力保全土壌図データの
  著作権は財団法人日本土壌協会に帰属する。
 3) 本ソフトはCD(利用マニュアル付)で無償配布(送料実費)し、利用者による第三者への再配布は禁止する。

5.残された問題点とその対応
 1)複数の農家が所有する草地に対する地域的な養分管理への対応
 2)環境負荷評価の精密化