成績概要書(2006年1月 作成)
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 研究課題:トマト青枯病およびかいよう病の診断法と防除対策
       (トマト細菌病の診断法開発および発生に対応した防除対策の確立)
 担当部署:花・野菜技術センター 研究部 病虫科・野菜科・園芸環境科
 協力分担:空知西部地区農業改良普及センター・大雪地区農業改良普及センター
 予算区分:道費
 研究期間:2002〜2005年度(平成14〜17年度)
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1.目 的
 トマト青枯病およびかいよう病の簡便な診断法を開発し、それぞれの細菌病に対応した防除対策を確立する。


2.方 法
 両細菌病の診断法として、1)選択培地による診断、2)PCRによる診断、について検討した。
 青枯病体策として、3)抵抗性台木の評価、4)土壌消毒の効果、について検討した。
 かいよう病対策として、5)種子消毒、6)薬剤の茎葉散布、7)土壌消毒の効果、について検討した。


3.成果の概要
 1)病徴として、青枯病は日中に上位葉から萎れが生じた後、急激に株全体が萎れる症状、かいよう病は下位葉が巻き上がり黒褐色に枯れていく症状、が特徴である。
  選択培地として、青枯病には原・小野培地、かいよう病にはSMCMM培地を用いて、罹病茎切断面を培地平板に押しつけるスタンプ法により、青枯病では白色で流動性のあるコロニ
  ー、かいよう病では黄色の平滑なコロニーが出現することが確認される。コロニーの性状および病徴の観察により、両細菌病の診断が可能だった。
  なお、スタンプ法は地際部もしくは維管束褐変が確認される部位で行い、切断前に表皮の汚れや水分をふき取り、カッターナイフも消毒するなど雑菌の混入を防ぐことが大切である。
 2)スタンプ法で出現した青枯病菌とかいよう病菌のコロニーは、PCRにより判別可能である。
 3)供試した青枯病抵抗性台木9品種は室内・圃場でともに抵抗性を示し、接ぎ木後の穂木品種の生育、果実品質等も問題が無かった(表1)。
  特に「Bバリア」、「PFNT1号」、「PFNT2号」の抵抗性は安定していた。
 4)青枯病対策の土壌消毒法を検討した。太陽熱消毒では青枯病菌の菌量低下が認められず、糖蜜還元消毒は菌量の低下はみられたが圃場内でムラがあり、防除効果も不安定であ
  った。米糠を2t/10a投下し、深耕ロータリで混和する深耕還元消毒は40cm深まで青枯病菌菌量を検出限界以下に低下させ、抵抗性台木と組み合わせることにより防除効果も安定
  した(表2)。また、この組み合わせによる発病抑制効果は、1作目の発病が認められなければ2作期間持続した。
  ただし、透排水性不良の圃場では深耕還元消毒を行っても十分な防除効果が得られなかった(表2)。
 5)かいよう病汚染トマト種子の消毒には、消毒効果と発芽率への影響を考慮して、55℃・25分あるいは54℃・40分の温湯消毒が有効である(表3)。
 6)カスガマイシン・銅水和剤1000倍液の茎葉散布は、トマトかいよう病に対して防除効果が認められた。発病後の、葉の接触や管理作業による拡大防止に有効と考えられた。
 7)かいよう病対策の土壌消毒法として、通常の太陽熱消毒、石灰窒素と稲わらの混和は行わず深耕ロータリで耕起してから灌水する深耕簡易太陽熱消毒は、40cm深部分で30℃以上
  の地温が1ヶ月程度確保されるとかいよう病菌の減少効果がみられた。熱水消毒の防除効果は高かった。深耕還元消毒の効果は明確ではなかった。
 8)両細菌病の診断と防除の手順を図1に示した。












4.成果の活用面と留意点
 1)トマト青枯病およびかいよう病の防除対策として活用する。
 2)青枯病抵抗性台木は他の病害抵抗性や穂木品種との親和性などを確認して使用する。
 3)深耕還元消毒は、従来の還元消毒の実施時期・期間を基本とする。また、消毒後は土壌中にアンモニア態窒素が増加するので、トマト栽培前にアンモニア態窒素の測定も含めた土
  壌診断により減肥を行うとともに、ハウス夏秋取りトマトの窒素栄養診断法(平成13年普及奨励技術)などを活用して栽培管理を行う。
 4)かいよう病対策として温湯種子消毒を行うと、3〜5日の発芽遅延がみられる。


5.残された問題とその対応
 1)青枯病が多発する土壌条件の解明
 2)低温期における還元消毒の処理条件
 3)かいよう病に対する還元消毒の効果確認