成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
研究課題:農家チーズ工房の経済性と発展方向

担当部署:根釧農試 研究部 経営科
担当者名:
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:2003〜2005年度(平成15〜17年度)

1.目的
 
北海道では近年チーズを導入する酪農経営が増加している。しかし、生産量が少ない経営が多い。生産量が少なければ、チーズ導入による経済的なメリットを得られていない可能性があり、継続性に影響しかねない。 そこで酪農経営のチーズ導入の目的と労働力利用の関係に着目し、チーズの経済性を検討し、農家チーズ工房の発展方向を明らかにする。

2.方法
 
1)既存統計整理により、チーズ消費動向と道内の農家チーズ工房の特徴を整理する。
 2)経営実態調査により、チーズ導入の目的と特徴を整理する。
 3)頭数規模拡大との比較により、目標となるチーズの経済性を提示する。
 4)事例経営のトレースにより、戦略としくみの変化の整理と課題の抽出を行い、農家チーズ工房の発展方向と課題解決方法を提示する。

3.成果の概要
 
1)チーズは特にナチュラルチーズの増加が伸びてきたが、消費の多様性が落ち着きを見せ、消費量の伸びが鈍化し、価格のディスカウント化が進んでいる。
 2)農家工房の増加が著しいが、ハード系のチーズを主体に生産量が少ないのが現状である。ただし、原料乳数量が20-50tの階層では、チーズ以外の乳製品も取り入れ、レストラン・軽
  食も組み合わせた農家工房が見られ、経営の多角化が図られていた。
 3)チーズを導入する酪農経営は、経産牛頭数が40頭近辺が多かった。チーズ部門に対して所得意識を強く持っている経営では、経営全体で労働力が4人程度以上であり、チーズ部門
  に専任従事者を配置し、チーズの生産量が多く、個人客を確保していた。(図1、2
 4)経済的部門と位置づけてチーズを導入する酪農経営として、後継者を確保し労働力に余力があると見られる家族労働力4人体制で経産牛40頭程度の経営を想定した。
  チーズ導入に要する投資は約2,000万円であり、これは経産牛40頭程度と60頭程度の経営の農業固定資本額の差とほぼ同値であった。このときの農業所得の差は350万円であった。
  目標所得水準を350万円と設定したとき、専任労働力1人と補助労働力1人を確保し、少なくとも原料乳数量で20-30t程度、100g単価350-450円程度、販売額で900-1,000万円程度確
  保することが目安となる。(表1
 5)事例のトレースから、農家チーズ工房の発展方向として、酪農(第一次産業)を経営の基軸にしながら、付加価値部門の経済性も意識しつつ、労働力を増加させ、加工業(第二次産
  業)、小売業(第三次産業)を経営内に取り込み、経営を第六次産業化(垂直的多角化)し、お客(消費者)との距離を近づけ、ニーズ把握を直接に行う方向であることを導き出した。
  その行き着く先は、雇用労働力を組み入れた多角経営と想定された。(図3
 6)発展方向を進む上で、技術習得、販売・経済性、経営全般についての課題解決方法を整理すると、技術指導体制、地域内のグリーン・ツーリズム実践者との連携など、周辺環境整
  備や関係構築、雇用労働力の導入が重要と考えられた。(表2

     

  

 

  

 

4.成果の活用面と留意点
 
1)経産牛頭数40頭程度で労働力に余裕がある家族経営に対して、今後の方向の選択肢のひとつとして提示する際の参考資料とできる。

5.残された問題とその対応
 
1)チーズ工房の生産規模別の装備と経済性の検討
 2)雇用労働型経営のマネジメントの検討
 3)チーズ工房組織、消費者組織など組織間連携の検討