成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
研究課題:てん菜多畦ハーベスタの性能と利用費用
    (てん菜多畦収穫機の導入実用化試験)

担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科、経営科
協力分担:
予算区分:受託
研究期間:2003〜2005年度(平成15〜17年度)

1.目的
 自走式4畦用ビートハーベスタおよびけん引式2畦用ビートハーベスタの移植てん菜に対する収穫作業性能等を明らかにし、収穫作業の共同化や受委託化のための参考に資する。

2.方法
 1)多畦ハーベスタの改良と性能
  (1)試験場所 更別村、清水町
  (2)試験時期 供試機の改良:平成15〜17年 供試機性能調査:平成17年10〜12月
  (3)供試機 自走式4畦用ビートハーベスタ:「テラドス」
         けん引式2畦用ビートハーベスタ:「B-2」,チョッパ付きタッパ
  (4)測定項目 ①機体概要と旋回半径②作業精度:収穫損失、タッピング精度、損傷③作業能率:作業時間、燃料消費量④農家貯蔵打撲調査⑤土壌踏圧
 2)多畦ハーバスタの利用費用の試算

3.成果の概要
 1)自走式4畦用ビートハーベスタ「テラドス」は338kWのエンジンを搭載し、収穫部はフレール刃の茎葉チョッパ、フィーラホイール型タッパ、茎葉クリーナ、2ポイントショベル掘取りリフタで
   構成されている(表1)。作業時は土壌踏圧を軽減するため、前後輪の軌跡が重ならないよう後輪が右側あるいは左側に移動する。最外側旋回半径は10.5mである。
   タッピング精度は、作業速度が速くなると、斜め切りと切り不足が増加した。収穫損失は1%以下と低く、良好であった(表2)。損傷は打撲、尻切れが多かったが、内部黒変は深さ1cm
   未満のものであった(表3)。作業速度1.8m/sで作業した結果、作業能率は1.1ha/hで、燃料消費量は62l/hであった(表5)。走行跡の土壌硬度は、深さ5〜15cmで高まった(表4)。
 2)けん引式2畦用ビートハーベスタ「B-2」の掘取り部は2ポイントショベルで畦追従センサーが装備され、クリーナ部とともに左右、上下方向に追従する構造になっている。最小旋回半径
   (右旋回)は5.1mである。収穫前に使用したチョッパ付きタッパはトラクタ直装式4畦用で、前部にフレールチョッパ、後部にフィーラホイール型タッパで構成されている。タッピング精度
   は斜切りが2%、切過ぎ2%と少なく、良好であった(表2)。収穫損失および土砂・きょう雑物混入割合は最大で2.8%、1.5%であった。打撲傷が多かったが、内部黒変は深さ2cmのもの
   を含め20%であった(表3)。作業速度1.66m/sで作業した結果、作業能率は0.41ha/hであった(表5)。走行跡の土壌硬度は深さ5〜10cmで高まった(表4)。
 3)「B-2」と「テラドス」の利用費用をけん引式1畦用ハーベスタ(RS-510)の個別利用と比較検討した。1畦用のha当たり利用費用は、道東の畑作地帯における平均的な経営規模を想定
   した場合(経営規模30〜40ha、てんさい作付面積7.5〜10ha)、171,248〜129,244円となる。「B-2」を共同利用した場合、利用面積20ha以上でha当たり利用費用が117,278円以下とな
   り、1畦用の個別利用に比べて共同利用方式が有利となった(表6)。コントラクターや利用組合などで「テラドス」の利用を想定した場合、収穫作業適期内(10月11日から30日間とし
   た)に収穫可能な総面積は189.60haとなり、この場合のha当たりの利用費用は72,971円となり、1畦用の個別利用と比較して利用費用で有利となった。ちなみに、「テラドス」の利用面
   積が98.45haに達すると、ha当たりの利用費用が129,240円以下となることから、「テラドス」の経済的メリットを発揮させるためには、概ね100ha以上の利用面積を確保する必要があ
   る。

 

表1 供試機主要諸元
 


表2 作業精度


表3 内部黒変調査      (%)


表4 作業前後の土壌硬度    (MPa)


表5 作業能率


表6 けん引式ハーベスタの利用費用


4.成果の活用面と留意点
 1)てん菜多畦ハーベスタの導入上の資料とする。
 2)自走式4畦用ビートハーベスタは土壌踏圧が大きいので、心土破砕等の排水対策を行う。

5.残された問題とその対応
 1)収穫作業の効率化のための栽培法と利用計画の検討。