成績概要書(2006年1月作成)
課題分類:
研究課題:マイクロチューバーによる種馬鈴しょ栽培体系
(マイクロチューバーによる種いも栽培体系の確立)

担当部署:十勝農試 生産研究部 栽培システム科
協力分担:(委託元)北農研 畑作研究部 ばれいしょ育種研究室
予算区分:受託(ブランドニッポン)
研究期間:2002〜2005年度(平成14〜17年度)

1.目的
  マイクロチューバー(MT)の栽培特性を明らかにし、栽植密度等の試験によりばれいしょ採種栽培に適応できるMT直播栽培法、紙筒移植栽培法の検討や機械化栽培体系の検討を行った。

2.方法
 1)MTの直播栽培、紙筒移植栽培における栽培方法の検討

 耕種概要:試験場所 十勝農試(芽室町)
   播種期・移植期:MT直播・普通種いも(5/7〜10)、MT移植(5/20〜31)
 調査項目: 萌芽期、開花期、枯凋期、サイズ別収量、澱粉価
    種いも規格収量:2S〜Mサイズ(20〜120g)の塊茎の10a当たりの収量
    種いも個数:2S+S+(M×2)の10a当たり生産される個数(Mサイズは2つ切り)

 2)MTの機械化栽培の検討
  既存播種機、移植機(総合播種機、真空播種機、野菜用移植機(紙筒))の適応性調査
  管理作業機(中耕作業機、株間除草機)による雑草管理法の検討
  既存ハーベスタによる収穫作業の検討

3.結果の概要
 1)MT直播栽培に関する試験
  中サイズMTでは、普通種いもと比較し、標準栽植密度において枯凋期は2週間遅れ、種いも規格収量は7〜8割であった。浅植密植栽培で生育が前進化し、枯凋期が早まった。
  いも数が増加し、平均一個重は小さくなるが、種いも規格収量は普通種いも比106〜139%、種いも個数は108〜150%となった。密植栽培では中サイズMTは大〜特大サイズと同等の
  収量性が確保できた。(図1)。
 2)MT紙筒移植栽培に関する試験
  0.1〜0.5gの極小、小サイズのMTが紙筒移植で利用できた。育苗期間は17〜25日間、草丈5〜7㎝が目安である。 枯凋期は中サイズの直播よりやや早く、普通種いもに近づいた。
  密植により枯凋期はやや早まり、いも数が増加し、平均1個重も小さくなり、種いも規格収量、種いも個数が増加した(図2)。
 3)機械作業に関する試験
 (1)播種機によるMT直播播種精度に関して、中サイズの欠株率は,総合施肥播種機、真空播種機とも概ね5%以下であった。催芽長が7〜8㎜と長い場合、株間のばらつきが大きくな
   った。真空播種機では播種時にMTサイズが大きいほど塊茎や芽の損傷が増加する傾向がみられた。
 (2)移植機によるMT紙筒苗移植精度に関して、野菜用移植機による株間は,いずれの品種,MTサイズにおいても設定通りであった。
 (3)MT紙筒移植栽培の機械除草に関して、半培土前に2〜3回の中耕作業を行うことにより雑草発生を抑制できた。株間除草機で雑草処理効果が向上した。
 (4)機械収穫に関して、既存の収穫機で「こぼれ」が少なく収穫できた。
 4)本試験の結果より、種馬鈴しょ栽培にMTを使用する場合の栽培体系を表1のとおりまとめた。

 

      
  図1.MT直播栽培の栽植密度・植付深さが種いも                       図2.MT移植栽培の栽植密度・MTサイズが種いも 
   規格収量、個数に及ぼす影響(H14〜17)                           規格収量、個数に及ぼす影響(H15〜17)
  注)MT0.5〜1.0g、5、2:植付深さ㎝、標、密:株間30㎝、15㎝                注)極小0.1〜0.3g,小0.3〜0.5g,標、密:株間30㎝、15㎝

 

表1.マイクロチューバー(MT)による種馬鈴しょ栽培体系

 

4 成果の活用面と留意点
 1)「マイクロチューバーを用いた種馬鈴しょの増殖に関する取扱要領」(平成11年3月4日北海道農政部長通知 農産第2506号)を遵守する。
 2)播種、移植以降の管理は「北海道種馬鈴しょ生産管理基準」を遵守する。

5 残された問題とその対応
 1)大サイズ以上(1.0g以上)のMTの効率的直播播種機の開発。