成績概要書(2006年1月作成)
課題分類: 研究課題:北海道産たまねぎのDNA品種判別技術 タマネギの産地判別法の開発 3.DNA増幅断片パターン解析による品種判別技術の開発 (1)北海道産タマネギのDNA増幅断片パターン解析 担当部署:中央農試農産工学部 遺伝子工学科、北見農試研究部 畑作園芸科、(独)農林水産消費技術センター技術調査部 技術研究課 |
1.目 的
北海道のたまねぎ生産量は2004年には61万tで、兵庫県、佐賀県とともに国内生産の約7割を3道県で生産している。輸入量は約30万tで、おもに中国、アメリカ、ニュージーランドから輸入されている。近年、農産物の産地表示が義務づけられたが輸入が増加する中、表示の正当性を担保する手法の開発が望まれている。たまねぎはそれぞれの産地に適した品種が栽培されていることから、品種を特定することで産地判別の手がかりとなりうる。独立行政法人農林水産消費技術センターが開発したDNAマーカーを利用して、北海道産たまねぎ品種のマーカー頻度を調査し、品種識別の可能性を検討した。
2.方 法
1)供試材料:2004年北見農試産の4品種各24個体及び7品種・系統各16個体の合計208個体を供試した。
また、主要4品種については2005年北見農試の播種用種子を使用して各24個体の合計96個体を検定し、年次変動を調査した。
2)DNAマーカー:検定に使用したDNAマーカーは、農林水産消費技術センターでRAPDマーカーの選抜を行いSTS化したもの、あるいは論文等に報告された配列情報から特異プライマー
を設計したものなど合計19のマーカーを供試した。これらのマーカーの内1種はCAPSマーカーであった。
3)検定条件等:DNAは鱗茎もしくは種子を発芽させた葉身からCTAB法で抽出した。PCRはPE社のAmpli Taq Goldを使用し、同社のGeneAmp PCR System 9700で行った。
マーカーにより高、低2種のステップダウンサイクルを使用した。PCR産物は1.5%及び3%のアガロースゲルで電気泳動後、SYBR Green Iで染色し、UV照射下で検出した。
3.成果の概要
1)品種に特異的なマーカーも少数認められたが、多くのマーカーは品種内の個体間で多型が認められた(表1、表2)。
2)主要4品種について2カ年、各マーカーの存在頻度を調査した結果、マーカーの頻度は安定していた。年次間差を検定した結果、1%水準で有意となったマーカーはなく、2品種で各1マ
ーカーのみが5%水準で有意となった(表1)。
3)以上の結果から、たまねぎのような他殖性作物においても集団としてのマーカー頻度を調査することで、品種識別が可能であった。
すなわち、多数のマーカーについて、予め品種ごとの存在頻度を調査しておき(カタログ化)、調査試料集団とカタログ品種間の有意差検定を行う(図1)。
試料集団と該当するカタログ品種集団のマーカー頻度に有意差が認められなければ、試料に表示された品種名が適正であると推定できる。
表1 主要4品種のマーカー頻度と年次変動(24個体)
*:年次間差が5%水準で有意。
表2 7品種のマーカー頻度(16個体)
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4.成果の活用面と留意点
1)たまねぎの生産、流通段階で品種表示の適否が判定できる。
2)比較品種のデータは同一年産のものが望ましい。
3)本手法は他殖性作物に広く応用できる。
5.残された問題とその対応