成績概要書(2006年1月作成)

研究課題:小麦α-アミラーゼ活性測定システム(ドライケミストリー法)を用いた品質区分<追補>
      (小麦α-アミラーゼ活性測定システムの適用拡大と精度向上)

担当部署:中央農試 農産工学部 農産品質科
協力分担:静岡製機㈱、富士フイルムメディカル㈱、JAいわみざわ、JA 芽室町 農業振興センター
予算区分:受託
研究期間:2004〜2005年度(平成16〜17年度)

1.目 的
 
ドライケミストリー法を用いた小麦α-アミラーゼ活性測定システムは農業現場での作業性に優れ、集荷施設受入時に利用可能なシステムである。これまでに「ホクシン」「春よ恋」について、集荷段階に仕分けを目的とした品質区分が示された(平成16年指導参考事項「小麦α-アミラーゼ活性測定システム(ドライケミストリー法)を用いた品質区分」)。本研究では、「キタノカオリ」について品質区分を設定するとともに、これらの品質区分が農業現場での品質判別に適用可能となる時期を明らかにする。

2.方 法
 
1)小麦α-アミラーゼ活性とアミロ値の品種比較
  ①供試品種 「ホクシン」「キタノカオリ」「春よ恋」
  ②採取圃場 中央農試、JAいわみざわ管内現地圃場、JA 芽室町 管内現地圃場(各地域・品種2〜4圃場)
  ③採取時期 2004年7月上旬〜8月中旬、2005年7月中旬〜8月下旬
  ④調査項目 子実水分、生麦α-アミラーゼ活性、乾麦α-アミラーゼ活性、アミロ値
 2)α-アミラーゼ活性に基づく品質区分の設定(品種:キタノカオリ)
  (1)湿潤処理によるα-アミラーゼ活性とアミロ値の変化
   処理開始時期(成熟期後)2004年8月2日、2005年8月1日、(成熟期前)2005年7月25日
  (2)α-アミラーゼ活性とアミロ値の関係
   供試材料 圃場試料(農試・現地):64点  湿潤処理試料(成熟期後処理):25点
 3)α-アミラーゼ活性に基づく品質区分の適用時期(品種:ホクシン、キタノカオリ、春よ恋)

3.成果の概要
 
1)「ホクシン」、「キタノカオリ」および「春よ恋」のα-アミラーゼ活性は、登熟期中頃以降、登熟の進行に伴い低下を続け、成熟期数日後に低い状態となり、それ以降はほぼ一定となった
   (図1、図2)。
 2)α-アミラーゼ活性が低い状態で安定的に推移する時期(=安定期)のα-アミラーゼ活性について、2004年は品種による明確な差は認められなかったが、2005年は「キタノカオリ」の活
   性が明らかに高く、成熟期直後で既に300mU/gを超えていた。一方、アミロ値は「ホクシン」が最も高く、「春よ恋」がこれに続き、「キタノカオリ」が最も低かった。
   また、3品種とも2004年に比べ2005年でアミロ値が低い傾向にあり、「キタノカオリ」は2005年の成熟期直後のアミロ値が300BU未満であった(図3)。
 3)成熟期後の湿潤処理により「キタノカオリ」のα-アミラーゼ活性は著しく上昇し、アミロ値は著しく低下した。これらの変化は圃場で降雨等に曝された場合と同様の変化であった(図4)。
 4)「キタノカオリ」の圃場試料および湿潤処理試料について、α-アミラーゼ活性とアミロ値の関係を調査した結果、全調査点数178点のうち活性200mU/g未満でアミロ値300BU以上のも
   のが79点、活性300mU/g以上でアミロ値300BU未満のものが41点あった。品質判別可能範囲の割合は71%(127/178)、品質判別の適合度は94%(120/127)であった(図5、表1)。
 5)「キタノカオリ」のα-アミラーゼ活性に基づく品質区分を①健全小麦200mU/g未満、②中間域200mU/g以上300mU/g未満、③低アミロ小麦300mU/g以上に設定した(表2)。
 6)安定期の開始時期である成熟期2〜4日後の各品種の子実水分は32〜33%の範囲であった。また、子実水分32%以上のものがα-アミラーゼ活性、アミロ値の両方が高い領域に分
  布したのに対し、32%未満のものはこの領域には含まれなかった(図6)。このことから、α-アミラーゼ活性に基づく品質区分は子実水分32%未満または成熟期4日後以降の小麦子実
  に適用可能であると判断した。
 7)以上の結果から、α-アミラーゼ活性測定システムを用いることにより、道産小麦主要3品種(「ホクシン」「キタノカオリ」および「春よ恋」)について、集荷施設で受入時にα-アミラーゼ活
  性に基づき品質を判別することが可能であると考えられた。

 

     

  

  

   

        

   

4.成果の活用面と留意点
 
1)α-アミラーゼ活性測定システムは集荷施設受入時の仕分けを目的とした小麦の品質評価に活用することができる。
 2)α-アミラーゼ活性に基づく品質区分は子実水分32%未満または成熟期4日後以降の子実に適用する。
 3)本成績は「ホクシン」「キタノカオリ」および「春よ恋」を対象としたものである。

5.残された問題とその対応
  新品種に対応した品質区分の設定