成績概要書(2006年1月作成)
課題分類:
研究課題:水稲のYES!clean栽培高度化に向けた技術体系の実証
    (高度クリーン米栽培の体系化実証)

担当部署:上川農試技術体系化チーム、中央農試技術体系化チーム
協力分担:上川中部地区農業改良普及センター、空知東部地区農業改良普及センター
予算区分:道費
研究期間:2004〜2005(平成16〜17年度)

1.目 的 
 個別のクリ−ン農業技術を体系化し、農薬成分回数を5回(慣行栽培の25%)以内、総窒素施肥量の30%以上を有機物で代替する栽培体系について現地圃場で技術実証を行い、より高度なYES!clean栽培の普及を図る。

2.試験方法
 1)試験場所・供試品種:旭川(ほしのゆめ成苗)、滝川(きらら397成苗)、芦別(H16:きらら397中苗、H17:ななつぼし中苗)
 2)試験内容(導入技術):①雑草防除:雑草発生予測、除草剤処理、2回代かき。
                ②病害防除:温湯種子消毒(60℃・10分処理)、発生モニタリング調査によるいもち病防除要否判定。
                ③害虫防除:初期害虫発生モニタリング調査による防除要否判定および水面施用剤(ジノテフラン粒剤)施用による斑点米抑制効果の検証。
                ④有機質肥料による化学肥料の代替。
 3)調査項目:雑草、病害虫の発生状況、作物生育・収量・品質、資材費(肥料、農薬)調査。

3.結果の概要
 1)減農薬について
  (1)雑草防除
   除草剤2成分以内による雑草防除により、ノビエ、ホタルイ、一年生広葉雑草の発生が少ない圃場では、慣行(3〜4成分)と比較して雑草害が問題視されないと思われる程度まで雑
   草の発生を抑制することが可能であった。2回代かき+1成分では、2年目で2成分とする必要があった。2回代かき+機械除草では残草対策が必要と考えられた。
   これらの成果などから雑草防除対応フローを図1に示した。
  (2)病害防除
   いもち病に対しては、温湯種子消毒および発生モニタリング調査を活用することにより、殺菌剤成分回数を1回以下にすることが可能であった。
  (3)害虫防除
   2年間の当該試験圃場における害虫発生量の条件下では、初期害虫に対しては発生モニタリング調査による防除要否判定の活用、カメムシ斑点米に対しては水面施用剤1成分によ
   る防除体系で、慣行防除程度の害虫防除が可能であった(図2)。
 2)減化学肥料(有機質肥料による化学肥料代替)について
  含有窒素の無機化の速い有機質肥料を利用することにより、総窒素窒素量のほぼ30%程度まで代替 することが可能であった。
 3)技術体系導入による資材費(農薬、肥料)の比較
 肥料資材費はいずれの試験地においても増加した。一方、農薬資材費、合計資材費は試験地により 増減異なる結果であった。これは、多様な技術体系の中から、現地実態に合わせ
 て技術選択を行ったためである。

以上のように、既往のクリーン農業技術を体系化することにより、農薬成分回数を5回(慣行栽培の25%)以内、総窒素施肥量の30%を有機質肥料で代替することが可能であった。これらの結果に基づき、表1に現行YES!clean栽培の高度化に向け、安定かつ継続可能な農薬・有機質肥料利用技術体系をとりまとめた。

  


図1 YES!clean栽培の高度化に向けた雑草防除対応フロ−

 


図2 水面施用剤(ジノテフラン粒剤)処理と斑点米率(H16旭川、ほしのゆめ)

 

表1 YES!clean栽培の高度化に向けた技術体系 

  注,表中の数値は成分回数で,基幹防除(臨機防除)を示す。

  

4.成果の活用面と留意点
 1) 本成果により、YES! clean基準よりさらに農薬成分回数および化学肥料を減らした栽培が可能となる。

5.残された問題点とその対応
 1) カメムシ防除における水面施用剤の利用技術。