成績概要書(2006年1月作成)

課題分類:
研究課題: 十勝地域における帯状条播による秋まき小麦「ホクシン」の安定多収栽培技術
       (民間流通に対応した秋まき小麦高品質・安定多収栽培技術の実証)

担当部署:十勝農試 技術体系化チーム
担 当 者:
協力分担:
予算区分:道費(農業先進技術実証事業)
研究期間:2000〜2005年度(平成12〜17年度)

1.目的
 十勝地域における条間12cm帯状条播による秋まき小麦「ホクシン」の収量及び品質に対する効果を実証し,経済効果を提示する。

2.方法
 1)  播種様式及び供試機
   実証1:条間12cmまき幅6cm(縦軸回転ロータリハロー付き帯状条播グレンドリルGCCOMPACT)
   実証2:条間12cmまき幅6cm (帯状条播グレンドリル ハローなしMASTER3)
    対照:条間30cmまき幅10cm(施肥装置付きグレンドリルTDWJ-10GD)

  

図1 実証機1(ハロー付きGCCOMPACT)と出芽状況   12cm帯状条播                30cm条播

 2)  試験場所および土壌
   山麓地方( 本別町 :褐色森林土5,普通黒ボク土1, 士幌町 :褐色低地土1),
   沿海地方( 豊頃町 :低位泥炭土2,灰色低地土2, 忠類村 :褐色森林土5),
   中央地帯( 芽室町 :多湿黒ボク土6)数字は試験圃場数
 3)    調査項目
  播種作業能率,生育・収量及び品質(フォーリングナンバー,子実蛋白含量,容積重,灰分),経済性

3.結果の概要
 1)    十勝地域の乾性土壌において,条間12cm帯状条播による精麦収量は,慣行の30cm条播よりも多く,慣行に対する百分比は110であった。また,子実蛋白含量,フォーリングナンバ
   ー,灰分,容積重において慣行区よりも劣ることはなかった。従って十勝地域の乾性土壌では,品質は慣行と同等に維持され,約10%の増収が可能である。
 2)    湿性土壌においては実証区が慣行よりも収量が劣る事例が多く,耕耘方法を変更した場合,作土の層厚を増し,土壌物理性が改善されることにより,慣行区よりも増収する事例は
   あるが,効果が得られない場合もあり,対策技術について今後さらに検討を要する。
 3)    実証播種体系で追加される基肥散布作業の労働時間はhaあたり1時間未満である。慣行の施肥播種作業は2人組作業であるが,実証の播種作業は1人作業となり,耕起・砕土・施
   肥・播種作業の労働時間合計は慣行よりも減少する。
 4)    播種機の価格が慣行区<帯状条播(実証2区)≪帯状条播(実証1区)であるため、10a当たり費用もこの順であり、実証(1、2)区は慣行区よりも低下することはない。
   ただし、作付面積が大きいほど、格差は縮小する。
 5)    変動費は慣行区と実証区とでほとんど差がないが、固定費は実証区が高く、ことに実証1は高い。10a当たり生産費は、作付面積が大きいほど低下するが、慣行<実証2<実証1
   の順は変わらない。60kg当たり生産費は作付面積が大きいほど低下し、実証2では4ha程度で慣行と同等になりこれ以上では低くなるが、実証1では作付面積15ha程度でもほとんど
   差がない。十勝地域の乾性土壌に立地する畑作経営では、秋まき小麦(ホクシン)の作付面積が4ha程度以上であれば、従来と同じ作付面積でもより生産費を低減できるので、播種
   機更新の際に「30cm条播」播種機よりも単体タイプの「12cm帯状条播」播種機を導入することが有利である。

        
 図2  播種様式による収量の違い                          図3  播種様式による子実蛋白含量の違い

 

 表1 播種様式による収量及び品質の違い

表2 作業体系と労働時間

 

表3  実証技術導入に伴う生産費試算のための基礎数値
 


図4 実証技術の経済性−10a当たり生産費−                        図5 実証技術の経済性−60kg当たり生産費−
   注)10a当たり生産費=変動費+(固定費/作付面積)                     注)60kg当たり生産費=10a当たり生産費/(10a当たり収量/60kg) 

  

4. 成果の活用面と留意点
 1)   十勝地域の乾性土壌における「ホクシンの安定多収技術」として利用可能である。

5. 残された問題点とその対応 1)湿性土壌における収量不安定要因の解明と対策