成績概要書(2007年1月作成)
研究課題:道央水田転換畑における秋まき小麦「ホクシン」の大豆畦間ばらまき栽培法 担当部署:中央農試 作物研究部 畑作科、生産研究部 水田・転作科 |
1.目的
秋まき小麦の連作回避を目的とした、「ホクシン」の大豆畦間ばらまき栽培技術について、道央水田転換畑地域の気象条件や土壌条件に適応した耕種法を確立する。
2.方法
1)試験場所および試験年次
中央農試 本場(夕張郡長沼町):褐色低地土(2000年播種〜2005年播種)
岩見沢試験地(岩見沢市):泥炭土及びグライ土(2004年播種〜2005年播種)
2)供試品種:「ホクシン」
3)試験処理:各年次、土壌において、播種期1〜2水準(9月上旬、中旬)、前作大豆1〜2水準(中早性、中生)、播種量2〜3水準(255〜510粒/m2)、基肥1〜2水準(N0,4kg/10a)、起生
後施肥1〜4水準(起生期標準N6kg/10a、起生期増肥、止葉期追肥、増肥+追肥)の組合せ試験を実施。
3.成果の概要
1)越冬前茎数や収量の安定のため、小麦の播種は大豆の落葉前に行う必要があった。播種期は、通常栽培よりやや早めの9月上旬が、収量が安定し適期と考えられた(図1)。
前作大豆の条件としては、倒伏や欠株、雑草が少なく、9月上旬に黄葉始を迎える中生品種が適していた。
2)越冬前茎数は播種量に従って増加したが、年次や土壌によって大きく変動した(図2)。播種量による収量の変動は比較的小さかった(図2)ことから、播種量は340粒/㎡程度で十分
と考えられた。
3)基肥窒素は越冬前の生育確保に必要であったが、地力の高い泥炭土(熱水抽出窒素12.4mg/100g)では基肥窒素施用により過繁茂となった。基肥窒素施用条件で越冬前茎数が
1800本/ m2を超える場合は、基肥窒素なしでも1200本/ m2以上の越冬前茎数が確保された(図3)。このため、地力の高い泥炭土など、越冬前の過繁茂が懸念される圃場では、基肥
窒素を省略できると考えられた。試験土壌はリン酸とカリ含量が診断基準値内であり、両要素を無施用としても大きな減収はなかった。
なお、起生期茎数は越冬前茎数と同等からやや多い程度であり、ほぼ読み替えが可能であった。
5)通常栽培の慣行施肥体系(起生期6kg+止葉期4kg)では、起生期茎数が1000〜1500本/ m2の時に、収量(500kg/10a以上)が安定的に高まった(図4)。また、倒伏は、穂数600本/ m2
前後、止葉期茎数900本/ m2前後から発生する傾向にあった。これらは、通常栽培における知見と概ね同様であり、起生期以降の管理は通常栽培の基準を適用可能であった。
6)起生期茎数が800〜1000本/ m2と少ない場合は、起生期に3〜4kgN/10aを上限として増肥することで収量を確保可能であった(図4)。この場合の止葉期追肥は、通常栽培の基準に
従う(止葉期茎数800〜900本/ m2以上では倒伏の危険があるので止葉期追肥不可)。また、起生期茎数が800本/ m2を大きく下回った場合は、遅れ穂の発生や蛋白含量が過剰に上
昇する危険があった。
7)間作区の収量は、通常栽培より20%程度劣る場合があったが、通常栽培の耕起時に練り返しが生じた場合や連作障害が発生した場合は、間作区の収量が優った。大豆間作栽培
は、作目の限られる転換畑において、短期的に連作を回避する技術として有効である。
8)以上の結果より、道央水田転換畑地域における大豆畦間ばらまき栽培体系を表1にまとめた。
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4.成果の活用面と留意点
1)本成果は、空知中部以南の低地土および泥炭土における成績に基づいている。
2)本試験で用いた圃場は、土壌pHの改善や排水対策を施している。
5.残された問題とその対応
1)越冬前茎数過剰となった場合の起生期後施肥管理技術の確立
2)間作栽培を利用した大豆—小麦交互作体系の持続性評価