成績概要書(平成19年1月作成)
研究課題:牛胚性判別キットを用いたフリーマーチンの迅速診断 (等温DNA増幅法(LAMP法)を活用した微量DNA迅速検出技術の開発) 担当部署:道立畜試 基盤研究部 受精卵移植科 |
1. 目的
ウシ異性双子由来の雌子牛の多くは血中性染色体キメラによるフリーマーチンとして肉用に処理されるが、なかには正常な繁殖性を持つ個体もおり、雌牛の価値の高いホルスタインでは経済的な損失が大きい。そこで、本実験では、フリーマーチン判定法の簡易化を目的として、先に我々が開発し市販されているLAMP法によるウシ胚性判別試薬キットを活用した血中性染色体キメラの検出技術を開発する。
2. 方法
1) 血液試料の簡易処理方法の検討
①血液希釈倍率の設定
②雄特異的DNA検出感度の検討
2) LAMP法による血液キメラ検査
3. 結果の概要
1)-① 血液最終希釈倍率が10〜500倍希釈では、加温後に濁度が上昇し、0.2を越えた(図1)。1000倍希釈では、加温前後ともに濁度の上昇は認められなかった。以降の試験では血液
最終希釈倍率を1000倍とし、濁度が0.2を越えた場合にDNAが増幅された陽性反応と判定した。
1)-② 10〜0.01%のXY白血球を含むすべての血液で雄特異的DNAが検出された(図2)。血液は、NaOHによる簡易DNA抽出後に試料として用いることができた。判定に要する時間は血
液の処理を含め約1時間であり、従来の染色体検査(3-4日)あるいはPCR法(4-5時間)に比較して短縮された(フロー1)。
2) 異性双子由来の雌子牛から採取した血液のキメラ検査を実施した。LAMP法の結果は、すべて染色体検査およびPCR検査の結果と一致した(表1)。LAMP法で正常と判定された4例
中3例は、後日受胎あるいは分娩が確認された。残りの1例も発情を確認し、人工授精が実施された。
本実験では、LAMP法によるウシ胚性判別試薬キットを活用して血中性染色体キメラを検出する方法を示した。本方法により、血液を試料として約1時間で性染色体キメラに基づくフリーマーチンの判定が可能であった。
フロー1 LAMP法による血液キメラ検査手順
① 採血
② 血液50mlを蒸留水4.95mlで希釈
③ 希釈血液0.5mlに0.05N NaOH 0.5mlを添加
④ 室温で5分以上静置(DNA抽出)
⑤ DNA試料5mlをLAMP反応液に添加
⑥ 63℃、35分間保温
⑦ 濁度測定
![]() 図1 血液による濁度測定への影響 |
あああああ | ![]() 図2 雄特異的DNAの検出感度 |
表1 異性双子由来雌子牛における染色体検査およびDNA分析の比較
-; 未計測
4. 成果の活用面と留意点
1) 血液キメラ検査に基づく簡易フリーマーチン判定法として利用する。
2) 陰性対照としてDNA合成酵素を含まない反応を実施し、血液添加による非特異的な濁度の上昇がないことを確認する。
3) 血液添加による非特異的な濁度の上昇がある場合は、DNAの精製処理を行なった後、検査を実施する。
5. 残された問題とその対応
なし