成績概要書(2007年1月 作成)
研究課題:尿素添加によるでん粉粕のカビ抑制技術および肉用牛への給与法 担当部署:道立畜試 家畜研究部 肉牛飼養科・肉牛育種科 環境草地部 畜産環境科 |
1.目 的
でん粉粕のカビ抑制技術として、サイレージ表面への尿素添加および混合添加の効果を明らかにし、尿素混合添加でん粉粕サイレージの飼料価値および肥育牛へ給与した場合の産肉性を検討する。
2.方 法
1)でん粉粕のカビ抑制および貯蔵技術
2)尿素添加でん粉粕サイレージの飼料特性
(1)でん粉粕への尿素添加と4-メチルイミダゾール生成の検証
(2)でん粉粕への尿素添加と消化率およびルーメン内発酵との関係
(3)尿素添加でん粉粕サイレージに対するバイパス性蛋白質の併給効果
3)でん粉粕サイレージを給与した去勢牛の産肉性
3.結果の概要
1)尿素のカビ抑制効果が発現される条件を調べたところ、でん粉粕をすみやかに密閉してサイレージ調製することが必要であった。その条件下で適添加量を検討すると、表面に
100g/m2程度の散布をすることで抑制効果があることを認めた(図1)。
2)粗蛋白質含量の向上をねらいとした尿素0.5%混合添加でもカビ抑制効果も認められた(表1)。
3)可溶性の糖類を多く含む粗飼料をアンモニア処理すると、家畜に毒性がある4−メチルイミダゾール(4MI)が生成される場合がある。しかし、でん粉粕への尿素添加では4MIの生成は
認められなかった。
4)0.5%の尿素を混合添加すると、サイレージ貯蔵中に可溶性成分割合が増加した。尿素添加でん粉粕サイレージを給与した牛では、ルーメン内容液の揮発性脂肪酸(VFA)中酢酸割合
は飼料給与直後に低下し、プロピオン酸割合は増加した(図2)。でん粉粕サイレージによる配合飼料の代替率を20%→50%→80%(乾物ベース)へ高めると、消化率等の低下が示唆さ
れた。
5)尿素添加でん粉粕サイレージと併給する蛋白質源としては、大豆粕(SBM)よりコーングルテンミール(CGM)の方がルーメン内アンモニア濃度の急増を抑えることができる(図3)。
6)肥育前期では、配合飼料の20%をでん粉粕サイレージで代替給与しても総乾物摂取量に差はなく、増体量は高い値を示した。肥育中期以降では、でん粉粕サイレージを給与した区で
摂取量が低下したため増体は鈍化し(表2)、枝肉重量では対照区と比較して約18kg低かったものの420kg以上は確保できた。BMS No.や歩留基準値など格付成績は配合飼料主体の
対照区と同等であった(表3)。
7)でん粉粕サイレージを給与した肥育牛では、飼料費が約69,000円節減された。枝肉単価を1,800円/kgとして計算すると、18kgの枝肉重量差(32,400円に相当)を考慮してもコスト面で
の有利性が示された。
![]() 図1 尿素100g/m2表面添加の有無におけるカビ数 |
あああああ |
表1 尿素0.5%混合添加の有無におけるカビ発生程度 (n=5) |
![]() 図2 ルーメン内容液中VFAの酢酸とプロピオン酸割合 |
あああああ | ![]() 図3 蛋白質補給源とルーメン内 アンモニア態窒素濃度 |
![]() |
ああ あああ | 表3 でん粉粕サイレージを給与した牛の肥育成績![]() |
4.成果の活用面と留意点
1)尿素添加でん粉粕のサイレージ調製に際しては、サイレージ調製の原則を守ることが必要であり、取り出し開始後もシート被覆を行うこととする。
2)配合飼料の一部をでん粉粕サイレージに置き換えて肥育牛に給与する場合、その代替率を20%以下(乾物ベース)で利用することが望ましい。
3)尿素は「飼料の安全性確保及び品質の改善に関する法律」の指定添加物であるため、関係法令を遵守して取り扱う必要がある。
4)尿素添加でん粉粕は、自己の飼養する家畜に給与することは差し支えないが、他者に販売または譲渡することはできないことに留意する。
5)ジャガイモ塊茎褐色輪紋病ウイルス(PMTV)を媒介するジャガイモ紛状そうか病菌は耐久体を形成し、他の病原菌と比較して熱などに対する耐久性が高いおそれがあることから、病
原を拡散させないため、でん粉粕を給与した牛のふん尿堆肥は草地に還元し、当面畑地への還元を避ける。
5.残された問題とその対応
1)肥育ステージ別、特に肥育中・後期の代替割合等に関して検討が必要である。
2)ジャガイモ塊茎褐色輪紋病ウイルス(PMTV)を媒介する粉状そうか病菌のでん粉粕中における存否解明とその飼料利用場面における消長
3)でん粉粕にビートパルプやフスマを混合して給与する効果については今後検討する必要がある。