成績概要書(2007年1月作成)
課題分類: 研究課題:アイヌワカメに含まれる機能性成分の鶏卵・鶏肉への移行 (未利用海藻の鶏飼料化による機能性成分の 鶏卵・鶏肉への濃縮に関する基礎研究) 担当部署:道立畜試 家畜研究部 中小家畜飼養科、道立釧路水試 利用部 原料化学科 |
1.目的
未利用海藻であるアイヌワカメには、抗アレルギー成分を含むω3系列関連脂肪酸と高コレステロール障害を抑制するフコステロールおよび抗肥満効果が期待されるフコキサンチン等の脂溶性の機能性成分が含まれている。アイヌワカメを処理したものを飼料に添加し、不断給餌条件下で、これらの機能性成分が鶏卵及び鶏肉中へ移行する可能性について調査する。
2.方法
1)乾燥アイヌワカメ粉末添加が、鶏卵に及ぼす影響
2)熱水処理乾燥アイヌワカメ粉末添加が、鶏卵に及ぼす影響
3)アイヌワカメの脂溶性成分の添加が、鶏卵・鶏肉に及ぼす影響
3.成果の概要
1)乾燥アイヌワカメ粉末の添加では、高い塩分濃度の影響により飼料摂取量が低下し、産卵性が悪化した。また、機能性成分の鶏卵への移行は認められなかった。
2)塩類を含む水溶性成分を除去した熱水処理乾燥粉末の添加では、アイヌワカメの添加量が増えるに従い飼料摂取量が少なくなる傾向がみられた。添加による鶏卵への機能性成分
の移行は認められなかった。
しかし、免疫賦活作用を表す血液中の偽好酸球の化学発光能・マクロファージの走化性が5%添加で高くなり、鶏の自然免疫機能の向上が示唆された。
3)アイヌワカメから抽出した脂溶性成分の添加では、鶏卵中に生理活性作用のあるω3系列関連脂肪酸の1つであるDHA量が増加し(図1)、フコステロールやフコキサンチンの代謝産
物と考えられるフコキサンチノールが蓄積することが明らかになった(図2,3)。
鶏肉(皮なしもも肉)は、色調、ω3系列関連脂肪酸量およびコレステロール量に差がなく、フコステロールやフコキサンチン類も検出されなかった。
また、脂溶性成分3%添加でも偽好酸球の化学発光能・マクロファージの走化性が有意に高くなり、鶏の自然免疫機能の向上が示唆された。(表1、2)。
アイヌワカメから抽出した脂溶性成分の添加によって、鶏卵に機能性成分が移行し蓄積するだけでなく、鶏の自然免疫機能の向上が示唆された。熱水処理乾燥アイヌワカメ粉末5%添加は、鶏卵への機能性成分の移行は期待できないが、鶏の自然免疫機能向上が示唆された。
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あああ | ![]() |
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図3 飼料および卵黄の色素
※異文字間で有意差有り(P<0.05) ※異文字間で有意差有り(P<0.05)
4.成果の活用面と留意点
1)本試験では、脂溶性成分を実験室レベルで効率的に抽出する手法の一つとして、有機溶媒を使用した。
2)アイヌワカメを含む未利用海藻の機能性成分に関する研究の基礎資料となる。
5.残された問題とその対応
実用化に向けて、海藻から脂溶性成分を大量に抽出するためには、生物への安全性がより高い超臨界抽出法などの検討が必要である。