成績概要書(2007年1月作成)
研究課題:小豆の抗酸化成分による生理調節機能の解析 (小豆の抗酸化成分の変動要因と生理調節機能の解明) 担当部署:中央農試 基盤研究部 農産品質科、十勝農試 作物研究部 小豆菜豆科、 |
1.目的
抗酸化活性を有するポリフェノールを主体とした小豆エタノール抽出物および小豆煮汁を用いて、小豆が有する生理調節機能を生活習慣病予防の面から検討する。
2.方法
1)健常動物を用いた生理調節機能の解明
ddYマウス(健常マウス)に小豆エタノール抽出物(ABE)を2週間連続投与し、16時間の絶食後スクロースを投与し、その後の血糖値の経時的変化を調査した。また、Fisher系ラット(健常
ラット)にABE添加高コレステロール飼料を与えて3週間飼育し、その間のコレステロール値の変化を調査した。
2)疾患モデル動物を用いた生理調節機能の探索
高血圧未発症の自然発症高血圧ラット(SHR)および既に高血圧を発症しているSHRにABEを8週間投与し、その間の収縮期血圧の推移を調査した。また、SD系ラット(健常ラット)にメタ
ボリックシンドロームを発症させる際に用いるフルクトースとABEをともに8週間投与し、その間の収縮期血圧の変化を調査した。
3)小豆水溶性成分が人体に及ぼす影響
小豆煮汁加工飲料(小豆飲料;1缶175g)の生理調節機能確認試験は3回実施した。
飲用量および期間は、平成16年度は1日3缶、4週間、平成17年度は1日4缶、12週間、平成18年度は1日3缶、12週間とした。
調査項目は、血圧、血液生化学検査、尿検査、アンケートによる自覚症状の聞き取り調査を行った。なお、検査については長谷川クリニックに委託して行い、検査結果に基づくデータ解
析について助言を受けた。
4)小豆抗酸化成分の変動
製アン業者に依頼し、製アン過程における渋切り水、煮汁、生アン等の試料の提供を受け、それぞれに含まれるポリフェノール含量を測定した。ポリフェノール含量の測定はフォーリン-
デニス法により行い、標準物質としては(+)カテキンを用いた。
3.成果の概要
1)健常マウスに小豆エタノール抽出物(ABE)を投与後、糖負荷試験を行ったところ、ABE投与群はコントロール(ABE無投与)群と比較して血糖値の上昇が抑えられた(図1)。
2)健常ラットに高コレステロール飼料にABEを添加した飼料を与えたところ、ABEによるVLDL+IDL+LDL値の上昇抑制効果が認められた(図2)。
3)遺伝的に高血圧を発症する自然発症高血圧ラット(SHR)にABEを投与したところ、収縮期血圧の上昇抑制効果および血圧降圧効果が認められた(データ省略)。また、健常ラットにフ
ルクトースとともにABEを投与したところ、ABE投与群はコントロール群と比較して収縮期血圧の上昇が低く抑えられた(図3)。
4)人体における小豆煮汁加工飲料の生理調節機能確認試験では、中性脂肪値が高めの人が小豆煮汁加工飲料を飲用することにより、飲用前と比較してその平均値が低下する傾向が
見られたが、正常な人ではそのような傾向は見られなかった(表1)。また、LDL値に関しては、飲用前の値にかかわらずその値が低下する人が多かった(図4)。
5)製アン過程において、原料豆のポリフェノールの約84%が渋切り水および煮汁に含まれていた(図5)。
6)以上の結果より、小豆エタノール抽出物および小豆煮汁加工飲料は生理調節機能を有することが期待できる。また、それらの主成分であるポリフェノールの多くは、加工過程において
煮汁等に溶出していることが明らかとなった。
![]() 図1 ABEが血糖値に及ぼす影響 平均値±標準誤差(n=6) *p<0.05 vs Control
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![]() 図2 ABEがコレステロール値に及ぼす影響 平均値±標準誤差(n=5) *p<0.05 vs Control
表1 小豆飲料摂取による中性脂肪値の変化
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4.成果の活用面と留意点
1)小豆が有する生理調節機能に関する研究の参考となる。
2)人体における生理調節機能の効果確認試験については、小豆煮汁加工飲料(1缶175gあたり105mgポリフェノールを含む)を1日3缶、4週間以上飲用した場合の結果である。
5.残された問題とその対応
1)煮熟した小豆の動物実験における生理調節機能の探索
2)人体において小豆煮汁加工飲料の一過的投与による生理調節機能の確認