成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:ダイズシストセンチュウ発生圃場に抵抗性品種を効果的に導入するための簡易判定法
(予算課題名:緑肥を導入した畑輪作による線虫被害低減効果の実証)
担当部署:中央農試 作物研究部 畑作科、中央農試技術 普及部、道南農試 技術普及部
協力分担:後志地農業改良普及センター、檜山農業改良普及センター本所・檜山北部支所
予算区分: 国費補助(革新的技術導入促進事業)
研究期間: 2005?2007年度(平成17?19年度) |
1.目的
ダイズシストセンチュウ被害対策として、大豆品種のシスト寄生反応を現地圃場で土壌の移動を伴わず簡易に判定するシードテープ法を開発し、これによる道内発生圃場の実態解明を行い、生産現場で効果的な抵抗性品種の導入および今後の抵抗性品種の開発に資する。
2.方法
1)
判定品種のシスト寄生反応調査:特性検定および現地圃場に、抵抗性遺伝資源の異なるスズマル(感受性)、ユキシズカ(PI84751由来のレ−ス3抵抗性)、トヨコマチ(ゲデンシラズ1号由来のレ−ス3抵抗性)、スズヒメ(PI84751由来のレース1および3抵抗性)の4品種および比較として国際判別5品種(Lee68、Pickett71、Peking、PI88788、PI90763)を供試。
表 1 指数の調査基準
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個体当たり
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指数
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程度1)
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シスト(根粒)数
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(例)
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0
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0
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0
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1
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0.1
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3
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2
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0.2
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5
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3
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0.3
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8
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4
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0.4
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10
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5
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0.5
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13
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6
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0.6
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15
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7
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0.7
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18
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8
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0.8
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20
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9
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0.9
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23
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10
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1.0
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25
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11〜20
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1.5
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38
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21〜50
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1.7
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43
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51〜100
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2
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50
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101〜500
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3
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75
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501〜
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4
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100
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注1)
程度(例)は、例としてシスト(根粒)数が、調査個体平均4個の場合、程度は10となることを示す。
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2)
寄生反応の判定基準:個体当たりシスト寄生数にもとづく指数(表)から次式より寄生程度を算出する。判定基準は、シスト寄生程度10(未が陰性、以上が陽性)を閾値とした。
式:シスト寄生程度={Σ(指数×個体数)×100}/(4×全個体数)
3)
シードテープ法の検討:判定用4品種を封入したシードテープの製作設置および調査方法について検討する。
4)
シスト寄生反応の現地実態調査:2005〜2007年の3カ年関係機関の協力により道央と道南を中心に7支庁16市町村で実施。
3.結果の概要
1)
国際判別品種によりレース3優占圃場と推定される場合でもレース3抵抗性の判別品種「トヨコマチ」や「ユキシズカ」で寄生反応が異なる事例が認められた(表略)。
2)
判定品種の寄生反応から評価区分(R3、R3g、R3p、Rgp、R?)を設定し、大豆品種の導入適否基準を策定した(表 2)。
3)
シードテープ法は、取り扱いが容易で防疫上安全である、少人数で多数の圃場調査が可能である、現地圃場で夏期までに判定可能であるなどの長所を認めた。これに係る調査実施要領を表 3にまとめた。
4)
全体(75圃場)の61%(46筆)で寄生反応が認められ、うち評価区分R3が52%、Rgpが26%、R3gが15%、R?が4%、R3pが2%の順に分布した。レース3抵抗性品種に寄生反応を示す圃場(R3g、R3p、Rgp、R?)は、発生圃場全体の48%(22筆)であった(表 4)。


4.成果の活用面と留意点
1)ダイズシストセンチュウ被害対策として抵抗性品種を選択するために用いる。
2)線虫の発生は圃場内で局在するため、発生場所の記録をもとにシードテープを設置する。
3)判定結果が判然としない場合は、再調査の実施とともに専門機関と協議する。
5.残された問題点とその対応
1)ダイズシストセンチュウ発生地域での実態調査の拡充
2)ダイズシストセンチュウ・レース1・3抵抗性品種の早期育成と総合防除対策の検討
3)シードテープ製作に係る作業委託の検討
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