新品種候補(2008年1月作成)
北海道農業>作物>12>1−2−084−1
育種事業課題名:あずき新品種候補「十育154号」
担当研究室:十勝農業試験場 作物研究部 小豆菜豆科
キ−ワ−ド:アズキ、大納言、規格内子実重、落葉病抵抗性、茎疫病抵抗性

1.特性一覧表
系統名:あずき「十育154号」 組合せ:十系701号/十系697号
特性 長所
1. 落葉病、茎疫病(レース1、3)、萎凋病抵抗性である。
2. 加工適性が「アカネダイナゴン」「ほくと大納言」と同等以上である。
3. 百粒重が「アカネダイナゴン」より10%以上重く、普及見込み地帯における大納言規格内歩留まりが高い。
   短所
1. 子実重が「アカネダイナゴン」よりやや劣る。

採用県と普及見込み面積:北海道 500 ha





2.あずき「十育154号」の特記すべき特徴
 「十育154号」は、落葉病・茎疫病(レース1・3)・萎凋病に対して抵抗性で、「アカネダイナゴン」より百粒重が10%程度重く、「ほくと大納言」よりやや軽い大粒の大納言小豆系統である。大納言規格内子実重が「アカネダイナゴン」より優り、加工業者からは風味が優れると高く評価されている。

3.北海道で優良品種に採用しようとする理由
 北海道での大納言小豆の栽培面積は小豆作付面積の約1割を占め、主な栽培品種は「アカネダイナゴン」(昭和49年育成)、極大粒品種「ほくと大納言」(平成8年育成)、極大粒、落葉病・萎凋病抵抗性品種「とよみ大納言」(平成13年育成)の3品種である。
 大納言小豆の主な栽培地帯である道央、道南では、登熟期間の気温が高いため、大納言としては粒が小さい「アカネダイナゴン」では、子実が小粒化して大納言小豆規格(5.5mm篩上)の歩留まりが著しく低くなる場合がしばしばある。一方、極大粒の「ほくと大納言」は、収穫前の降雨により種皮色が濃くなる濃赤粒(雨害粒)が多発する場合がしばしばあり、栽培面積は減少している(大納言小豆栽培面積の約7%(H18))。同じく極大粒の「とよみ大納言」は、雨害粒発生の欠点が改良されており、落葉病抵抗性も有するため、これら2品種に換わって普及が進み、大納言小豆栽培面積の約47%(H18)を占める。しかし一方で「とよみ大納言」は“「アカネダイナゴン」「ほくと大納言」より風味が劣るため代替品として使用できない”とする加工業者があり、主に小袋詰めの一般消費者向け販売に向けられている。そのため、加工上「アカネダイナゴン」「ほくと大納言」と置き換えられ、かつ大納言小豆規格内歩留まりが高い新品種が要望されている。
 「十育154号」は、落葉病・茎疫病に抵抗性を持ち、大納言小豆規格内子実重が「アカネダイナゴン」と同等以上である。また、「ほくと大納言」より雨害粒の発生が少なく、加工業者による製品試作試験では、風味が優れ両品種に換えて使用できると評価されている。一方、「とよみ大納言」に比べると、粒大が小さく大納言小豆規格内子実重がかなり少なく、小袋詰め販売を主用途とする同品種に置き換わるものではない。
以上より、「十育154号」を、道北、道央、道南の大納言品種栽培地帯において、「ほくと大納言」の全て、及び、茎疫病の発生または小粒化による大納言小豆規格内歩留りの低下が問題になっている地域の「アカネダイナゴン」に置き換えて普及することにより、大粒、良質な北海道産大納言小豆の安定供給が可能となる。

4.普及見込み地帯
 北海道の道北、道央、道南の大納言品種栽培地帯(右図網掛け部)。

5.栽培上の注意
1)落葉病、茎疫病(レース1・3)、萎凋病に抵抗性を持つが、栽培に当たっては適正な輪作を守る。