新品種候補                             (作成 平成20年1月)
  
注:1)*1 試験箇所数は、農業試験場は延べ11ヶ所、現地試験は延べ15ヶ所
   2)*2 中以上いも重および中以上いも率の成績
   3)*3 ポテトチップ加工に適する規格の比率
   4)*4 各試験地の結果による(「ワセシロ」については北見農試のみ)
   5)*5 北農研センターの結果による
   6)*6 各試験地の結果による。早掘りは枯凋期の2〜3週間程度前、普通掘りは収穫適期(枯凋後)、9℃貯蔵後は2〜3月
   7)*7 特性検定試験等の成績による
   8)括弧内はばれいしょ種苗特性分類調査報告書(昭和56年)の分類による(「−」は未記載)


2.ばれいしょ「CP04」の特記すべき特徴

 ばれいしょ「CP04」は加工(チップ)用系統で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性と中程度のそうか病抵抗性を持つ。枯凋期はほぼ「トヨシロ」並の中早生で、収量性は「トヨシロ」より低い。ポテトチップ加工適性は高く、特に早掘り、普通掘りでのチップカラーは「トヨシロ」、「ワセシロ」を上回る。

3.優良品種に採用しようとする理由

 近年、北海道におけるばれいしょは作付面積、生産量とも減少傾向にあり、特に生食用、でん粉原料用においてその割合が大きい。その中でポテトチップ用は平成に入って以降安定して20万トン台後半の消費量で推移しており、ばれいしょ消費における重要な位置を占めるとともに、今後の需要拡大も期待できる用途である。
 現在の道産ポテトチップ用原料としては、塊茎の肥大や枯凋期が最も早い「ワセシロ」が早掘りや収穫直後に使用され、その後主力品種である「トヨシロ」が中心となり、次年3月あたりからは長期貯蔵後のチップ品質に優れる「スノーデン」などが、本州産に切り替わる6月頃まで使用される。
 この中で、「ワセシロ」はチップに褐変が発生しやすい他、貯蔵後の使用やチップ以外のスナック製品に向かないため使用が極めて限られ、作付面積が減少している。一方、ポテトチップ、スナック製品に使用される「トヨシロ」は完熟に至らないとチップカラーが悪いため早掘りには向かない。さらに、ポテトチップ用の多くの品種は現在発生面積が増加し続けているジャガイモシストセンチュウに対する抵抗性を持たないため、作付面積の増大は難しくなっている。このため、より早い時期からのポテトチップ加工に使用でき、高品質で汎用性のあるジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ優良な品種の開発・導入による生産増大は緊急の課題となっている。
 「CP04」は「トヨシロ」並の枯凋期で、早掘り、普通掘りでのチップカラーは「ワセシロ」、「トヨシロ」より優れる。塊茎品質も良く、「トヨシロ」と比較して原料不良率が低いため、工場ラインでの評価も高い。また、低温での長期貯蔵には向かないが、「トヨシロ」より9℃貯蔵後のチップカラーがやや優れ、2〜3月までの使用も可能であり、さらにチップ以外のスナック製品への適性もあるため原料の需給調整という点において柔軟な対応が可能となる。「トヨシロ」より低収ではあるが、品質の高さ、原料不良率の低さは価格設定への有利性があり、でん粉価の低さも、製品の製造上は問題のない範囲である。またその他にも、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、そうか病にも中程度の抵抗性を有するため、特に早掘りの多い地域や、これらの病害虫発生地域を中心とした普及が期待できる。
 以上のことから、「CP04」を北海道の優良品種とし、ポテトチップ原料用「ワセシロ」、「トヨシロ」の一部に置き換えることにより、高品質原料の安定供給が可能となり、道産ばれいしょ栽培の振興に寄与するものと考える。

4.普及見込み地帯
北海道の加工用ばれいしょ栽培地帯
                 
図 普及見込み地帯における「CP04」の規格内いも重、中以上いも重の「トヨシロ」、「ワセシロ」対比 (%)
 注:1)数値は「トヨシロ」対比であり、[ ]は「ワセシロ」対比
   2)●は道立農業試験場で規格内いも重対比、◆は現地委託試験で中以上いも重対比
   3)道立農業試験場は平成16、18、19年の平均(中央農試のみ平成16、18年の平均)。現地委託試験は平成18、19年の平均(倶知安町は平成18年のみ)

5.栽培上の注意

 1)開花期以降にウイルス病様(モザイク、えそ斑、葉巻症状)の生理障害が発生することがある。特に干魃条件下や乾燥しやすい圃場で多発する傾向があるので、保水力が高く肥沃な圃場を選択し、適切な肥培管理に努める
 2)原採種栽培におけるウイルス罹病株抜き取り作業の際は、生理障害との区別に留意する。