成績概要書(2008年1月作成)
研究課題 :ぶどうの品種特性
       (ぶどう新品種育成試験)
       (「種なしぶどう」の品種選定と高品質果実生産技術の確立)
担当分署 :中央農試作物研究部果樹科
協力分担 :
予算区分 :道費
研究期間 :2000〜2007年度(平成12〜19年度)

1.目的 現在、道内で栽培されるぶどうのうち、醸造用では高品質で耐寒性の強い品種、生食用では需要の低下が著しい「キャンベルアーリー」に代わる良食味品種が求められている。そこで道外で育成されたぶどう品種・系統について、栽培特性・果実品質・耐寒性などの特性を明らかにし、北海道に適応する品種を選定する。
2.方法
 1)醸造用ぶどうの品種特性 供試系統 「山梨38号」、「山梨44号」、標準品種「セイベル13053」、比較品種「ツバイゲルトレーベ」。2000年定植 定植時樹齢1年生
 調査項目;生育相、樹体生育、発芽率、樹勢、収穫期、収量、果実品質、酒質
 2)生食用ぶどうの品種特性 供試品種 「甲斐美嶺(かいみれい)」、「サニールージュ」(ジベレリン(以下GA)処理無核品種)、標準品種「キャンベルアーリー」(有核品種)、比較品種「デラウエア」、「バッファロー」(GA処理無核品種)、2001年定植 定植時樹齢2年生
 試験場所;長沼町(無加温ハウス)、仁木町(露地)
 調査項目;生育相、樹体生育、発芽率、樹勢、収穫期、収量、果実品質
3.成果の概要
 1)醸造用ぶどうの品種特性(表1、4)
「山梨38号」;10月中下旬に収穫できる赤ワイン用の醸造専用系統である。果汁糖度は18〜19%、酸度は1.2g/100ml程度で、やや高い。酒質は、標準品種並の酸味で、ワイン色はやや薄い。官能評価では、‘バランスがよい’などの評価がされた。耐寒性は‘やや強’であり、果実品質・酒質が良好であることから有望な系統である。
「山梨44号」;10月中下旬に収穫できる赤ワイン用の醸造専用系統である。果汁糖度は約19%、酸度は1.2g/100ml程度で、やや高い。酒質は、標準品種と比べ酸味がやや強く、ワイン色は濃い。官能評価では、‘しっかりした味わい’などの評価がされた。耐寒性は‘強’、収量が多く、果実品質・酒質が良好であることから有望な系統である。

 2)生食用ぶどうの品種特性(表2、3、4)
「サニールージュ」;果皮は赤紫色、満開期と満開10日後のGA処理(各25ppm)で無核化する種なし品種。樹勢はやや強い。収穫期は「デラウェア」よりやや遅く、仁木町露地栽培で9月20日前後。露地栽培も可能だが、裂果が多い年もあることからハウス栽培が有効である。糖度は17〜18%程度で「キャンベルアーリー」より明らか高い。酸度は0.6g/100ml程度。果粒重は5〜6g程度で「キャンベルアーリー」よりやや大きい。適度な香りがあり食味はかなり良く品質が優れることから、種なしぶどうとして有望な品種である。
「甲斐美嶺」;果皮が黄緑色、満開期と満開10日後のGA処理(各25ppm)で無核化する種なし品種。樹勢は強い。収穫期は「キャンベルアーリー」と同時期、仁木町露地栽培で9月末〜10月始め頃。開花直前〜開花始期に花穂先端を10cm程度残すように整房すると良形の房になる。糖度は18%程度、酸度は0.7〜0.8g/100ml程度。果粒重は4g。種なしで食味は良く品質が優れるが耐寒性がやや弱い。

表1 醸造用ぶどう系統の特性


表2 生食用ぶどう品種の生育相・収量・樹体生育・果実品質


表3 生食用ぶどう品種の果実形質・抵抗性等

表4 各品種・系統の総合評価

4.成果の活用面と留意点
  ・ぶどう産地における品種導入において活用する。
  ・「山梨38号」「山梨4号」は全道の醸造用ぶどう栽培地域で栽培可能である。「サニールージュ」はハウス栽培を基本とし、全道の生食用ぶどう栽培地域で栽培可能である。
  ・冬期は枝おろしを行う。着果過多などで耐寒性が低下しないよう注意する。また、生食用2品種はべと病の防除を行う必要がある。
  ・醸造用系統の「山梨38号」は「ビジュノワール」として出願公表中であり、「山梨44号」は品種登録準備中であるため、苗木の販売までには数年を要する。
5.残された問題とその対応
   醸造用系統について北海道内メーカーによる酒質評価を引き続き行う。