成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:西洋なしの品種特性(特産果樹品種比較試験)  (大果・高品質で、耐寒性 に優れ安定多収
       なセイヨウナシ品種の育成と追熟、日持ち性等諸特性の解明)
担当部署:中央農試 作物研究部 果樹科、北海道農研・寒地地域特産研究チーム
協力分担:
予算区分:道費、基盤研究費
研究期間:2001〜2007年度(平成13年〜19年度)
1.目的
西洋なしは冷涼な気候を好み、耐寒性が強いことから北海道に向いた果樹である。1995年には55haだった栽培面積は2007年には92haと増加している。そのうち「バートレット」、「ブランディワイン」で約70%を占めているが、「バートレット」は果実品質がやや低く、「ブランディワイン」は小玉であるなど問題があり、新たな品種が求められている。そのため、国内・国外から導入した西洋なし品種について、耐寒性・収量・熟期・果実品質などの特性を明らかにし、北海道に適応する品種を選定する。

2.方法
 1)試験場所:長沼町(中央農試)、札幌市(北農研)
 2)供試品種:12品種 (中央農試:12品種 北農研:8品種)
 3)標準品種:「ブランディワイン」「バートレット」  
 4)台木:日本なし実生またはヤマナシ
 5)栽植距離:中央農試 :5.5m×4.5m (40樹/10a)
         北海道農研:5.0m×6.0m (33樹/10a)
 6)樹数:1〜2樹/品種 
 7)樹形:変則主幹形
 8)調査項目:生育相、樹体生育、収量、果実品質、耐寒性等

3.成果の概要
 1)供試品種中優れた特性があり、本道で有望と考えられるのは以下の3品種であった。
「マルゲリット・マリーラ」:収穫期は9月中旬。この時期としては非常に大果であり400gを超えることも多い。果肉はやや粗いが風味や食味は良く品質良好。追熟後は果皮が黄色くなることから適食期がわかりやすい。ただし、大果であることから強風による落果が起こりやすい。
「オーロラ」:収穫期は9月中旬、満開後日数115日頃。果実重は年による変動があるが、250gを超える年もあり中程度の大きさ。平均糖度が15.4%と極めて高く、肉質も緻密で風味や食味が良く品質は優れる。樹勢が弱く収量が少ない。
「ゼネラル・レクラーク」:収穫時期は10月上〜中旬。果実重350g前後と大きく、糖度も14%程度と高い。果肉は緻密でなめらか、風味、食味良好で多汁である。品質は優れる。ただし年によりやや渋みを感じることがある。大果であるため強風による落果が起こりやすい。
 2)「プレコース」「ミクルマス・ネリス」「コンファレンス」「ハイランド」「エルドラド」「パッカムス・トライアンフ」の6品種は本道での栽培は可能であり有用な形質を持つが、問題となる欠点もある。
 3)「カリフォルニア」「シルバーベル」「ル・レクチェ」の3品種は本道での栽培には向かないと判定する。
 4)各品種共に慣行防除では問題となる病害虫は発生しなかった。凍害も認められず、耐寒性に問題はなかった。

表1 生育相・収量・果実品質(中央農試)


表2 生育相・収量・果実品質(北農研)


表3 各品種の評価


4.成果の活用面と留意点  西洋なし産地における品種導入において活用する。
5.残された問題とその対応   ・新品種の特性調査。
                    ・「オーロラ」の収量性を改善する栽培法の検討。