成績概要書(2008年1月作成)
 研究課題:「切花用活性化剤PAT」によるばらの品質保持技術
    (切り花品質保持剤「PAT」の前処理およびバケット輸送における実用性)
 担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科
 協力分担:
 予算区分:受託(民間)
 研究期間:2006〜2007年度 (平成18〜19年度)
1.目的
 ばら切り花について、小売や家庭段階(後処理)で利用されている「切花用活性化剤PAT」(以下PAT)の生産者段階(前処理)及び湿式輸送段階(輸送処理)における処理剤としての品質保持効果の評価を行う。

2.方法
1) 供試品種:「ローテローゼ」(赤色)切り花長60cm、生産者から購入
2) 試験規模:1処理8本(試験3のみ1処理16本)
3) 前処理開始日:2006年6月29日(試験1)、同年8月21日(試験2)、2007年7月30日(試験3)
4) 処理方法:前処理(10℃、24時間)→輸送処理(10℃、48時間)→後処理(23℃、70%RH、1000Lux(白色蛍光灯)12時間日長、花持ち終了まで)
5) 前処理(試験1、2):PAT35倍(以下PAT35)、PAT70倍(以下PAT70)、市販のばら前処理用品質保持剤(以下剤A)
6) 輸送処理(試験1、2):PAT35、PAT70、市販のばら輸送処理用品質保持剤(以下剤B)
7) 後処理:蒸留水、PAT70、市販後処理用品質保持剤(以下剤C)
8) 花持ち調査条件:輸送処理後50cmに切り戻して後処理を実施し、毎日調査を行った。
9) 調査項目:花持ち日数(後処理開始後、以下a〜cの条件のうち一つが当てはまるまでの日数、a:花を触ったときに花弁の張りが無くなった、b:1枚でも花弁が散った、c:花首が曲がりベントネックを起こした)、切り花重推移、花色(ハンディ色差計を用いて水生け7日後に測定)、処理液中のバクテリア数
10) その他:特に記載がない場合、前処理は剤Aを、輸送処理は剤Bを、後処理は蒸留水を使用した

3.成果の概要
1) 前処理、輸送処理でPATを単独もしくは連続して使用した場合、市販剤と同等以上の花持ちとなり (表1、表2、表3)、切り花重も同等もしくは高めに推移した(図1、図2、図3)。さらに前処理、輸送処理及び後処理でPATを連続使用することにより花持ちがさらに向上し(表4)、切り花重比率も高く推移した(図4)。
2) 花色について、前処理、輸送処理及び後処理でPATを使用した場合、剤A、剤B及び蒸留水使用時より明度L*と色相角度hが高くなり、明るい赤色が維持された(表5)。前処理もしくは輸送処理でPATを使用した場合についても市販剤処理を使用した場合より明度と色相角度がやや高くなった(データ略)。
3) 前処理、輸送処理と後処理においてPAT35で処理した場合については後処理後に葉に障害が見られたがPAT70では認められなかった(データ略)。
4) 以上より、ばら切り花に対する前処理剤及び輸送処理剤としてPATは実用性があると判断した。なお、使用する際の希釈倍率は70倍が適当である。


図1 PAT前処理時における切り花重推移(試験2)

図2 PAT輸送処理時における切り花重推移(試験2)

図3 PAT前処理及び輸送処理連続使用時における切り花重推移(試験2)
※(前処理剤)/(輸送処理剤)の組み合わせ


図4 PAT前処理、輸送処理及び後処理連続使用時における切り花重推移(試験3)
※(前処理剤)/(輸送処理剤)/(後処理剤)の組み合わせ

4 成果の活用面と留意点
1) ばら切り花の前処理剤及び湿式輸送処理剤選択時の資とする。
2) 花色については赤色のばら(ローテローゼ)における結果である。

5 残された問題とその対応