成績概要書(20081月作成) 
研究課題: エラータム、シネンシス系デルフィニウム及びばらのスクロース処理を組合せた湿式輸送技術
       (糖質を含む品質保持剤利用による主要切り花のバケット流通システムの確立)
担当部署:花・野菜技術センター 研究部 花き科
協力分担:花き研究所、千葉県暖地園芸研究所
予算区分:受託(独法)
研究期間: 2007年度(平成19年度)

1 目的
 平成19年指導参考事項「バラ、トルコギキョウおよびデルフィニウムにおける湿式輸送技術」において未検討であった、エラータム系、シネンシス系デルフィニウムに対するスクロース前処理を組合せた湿式輸送の効果を明らかする。また、ばら切り花における湿式トラック輸送条件下でのスクロース処理と切り前の影響について検討し、乾式航空機輸送との比較を行う。

2 方法
1)デルフィニウム
(1)供試品種および処理内容:エラータム系;「ブルーバード」、「オーロラブルーインプ」、シネンシス系;「スーパーマリンブルー」、「スーパーシフォンブルー」、前処理;STS0.2mM及びこれにスクロース2468%を加えた溶液で24時間処理、輸送処理;乾式、湿式輸送(蒸留水に抗菌剤)、生産者慣行(簡易湿式)
(2)試験実施時期:場内試験;821日および818日収穫、輸送実証試験;1010日出荷(由仁町)、1011日着荷(千葉県柏市(第一花き柏市場))
(3)試験規模:1処理区8本または10本を供試
2)ばら
(1)供試品種および処理内容:「ローテローゼ」、切り前;通常、早め、前処理および輸送処理時のスクロース処理;0%1(抗菌剤を標準添加)、輸送処理;湿式トラック、乾式航空機
(2)輸送実証試験における出荷および着荷日:8月出荷;湿式トラック813日出荷(深川市)、乾式航空機814日出荷(深川市)、いずれの輸送方法も815日着荷(千葉県柏市(第一花き柏市場))10月出荷(発着地は8月出荷と同じ);湿式トラック1010日出荷、乾式航空機1011日出荷、いずれの輸送方法も1012日着荷
(3)試験規模:1処理区10本を供試
3)品目共通試験方法
生産者より購入した切り花を供試した。花持ち調査は、温度23℃、湿度70%、1000x(白色蛍光灯)、12時間日長条件で実施した。

3 成果の概要

1)デルフィニウム
(1)スクロースを加えたSTS溶液で前処理することで、収穫後に開花する小花の花色が収穫前に開花していた小花の花色に近づき発色不良が抑制されるとともに花持ちも延長した(表1)。
(2)STS溶液に加えるスクロースの濃度は、エラータム系およびシネンシス系ともに4%以上では効果に差がなかったことから、4%が適当と考えられる(表1)。
(3)湿式輸送は、エラータム系およびシネンシス系ともに乾式輸送と比較して輸送後の鮮度の向上に有効であるが、花持ちは乾式輸送と同程度である(データ省略)。
(4)10月に実施した輸送実証試験において、エラータム系およびシネンシス系ともに着荷後の鮮度は湿式輸送で向上していたが、前処理におけるスクロース処理の効果は認められなかった(データ省略)。
(5)以上よりデルフィニウムにおける前処理を表2に示した。

2) ばら
(1) 8月出荷の市場着までの箱内平均温度は湿式トラック輸送、乾式航空機輸送ともに10月出荷のそれよりも高かった(表3、4)。
(2) 8月出荷における湿式トラック輸送では、スクロース処理による花持ち延長効果が大きく、切り前を早めることにより咲き進みを抑制することが可能であった(表34)。
(3) 乾式航空機輸送ではスクロース処理した湿式トラック輸送より花持ちが短く、また8月出荷では着荷時にベントネックが観察された。このため湿式トラック輸送が乾式航空機輸送よりも花持ち及び着荷時の鮮度で優れていた(表3、4)。
(4)以上より湿式トラック輸送及び乾式航空機輸送による切り花品質への影響を表5に示した。

表1 スクロースを加えた前処理がエラータム、シネンシス系デルフィニウム切り花の花持ち、アントシアニン含量(エラータム系)に及ぼす影響


表2 デルフィニウムにおける前処理技術
    

  

4 成果の活用面と留意点

1) 秋季低温期にはスクロース処理効果が小さくなる。
2) デルフィニウムの前処理に活用する

3) ばら道外出荷時における輸送方法の参考とする。

5 残された問題とその対応
スクロース処理効果の季節変動の解明