成績概要書(2008年1月作成)
近年、青果用ホワイトアスパラガスの需要が伸びているが、慣行培土栽培法では収穫作業性や適応土壌などから栽培が限定され、供給量増加が妨げられている。本試験ではハウス作型での生産を目指し、遮光フィルムを用いた無培土栽培法について検討した。 2.方法 1) 場内試験 (1) ハウス半促成春どり栽培における大型トンネルを用いた遮光フィルム被覆法の検討 試験年次:2006〜2007年度 供試品種:‘ウェルカム’ 作型:ハウス半促成春どり栽培 試験規模:1区34株×2反復 供試フィルム:「ホワイトシルバー」((株)東罐興産製) 処理水準:遮光フィルム被覆ホワイト収穫区(ホワイト区)、グリーン収穫区(グリーン区)、同一ハウス内に試験区を設置 トンネルサイズ:高さ200cm、幅215cm 収穫期間:35日間 収穫調査:形状や茎色に問題がなく、24cm調製時に8g以上となる若茎を規格内とした。 (2) ハウス立茎栽培における小型トンネルを用いた春季遮光フィルム被覆法の検討 試験年次:2006年度 供試品種:‘ウェルカム’ 作型:ハウス立茎栽培 試験規模:1区9株×3反復 供試フィルム:同上 処理水準:同上 トンネルサイズ:高さ60cm、幅80cm 収穫期間:2006年4月21日〜9月20日(春芽収穫は35日間) 収穫調査:同上 (3) ハウス立茎栽培における大型トンネルを用いた春季遮光フィルム被覆法の検討 試験年次:2007年度 供試品種:‘ウェルカム’ 作型:ハウス立茎栽培 試験規模:1区9株×2反復 供試フィルム:同上 処理水準:同上 トンネルサイズ:高さ150cm、幅240cm 収穫期間:2007年4月16日〜9月15日(春芽収穫は35日間) 収穫調査:同上 2) 現地試験 (1) 春先のハウス側窓管理の検討 場所:栗山町 試験年次;2007年度 供試品種:‘スーパーウェルカム(現地圃場A)’、‘グリーンタワー(現地圃場B)’ 作型:ハウス立茎栽培 供試フィルム:同上 処理水準:遮光フィルム被覆ホワイト収穫区(大型トンネルを用いた遮光フィルム被覆法を用い、フィルム被覆直後から収穫開始まではハウス側窓閉め切り管理)、グリーン収穫区(慣行の温度管理)、処理はハウス単位で実施 試験規模:1区30株、反復なし 3. 成果の概要 1)ハウス内の大型トンネルに遮光フィルムを被覆することで無培土のホワイトアスパラガス生産が可能であった。この方法を用いたホワイトアスパラガス栽培ではグリーンアスパラガス栽培と比較して収穫本数は減少するものの、若茎一本重が増加するため収量性は同程度であり(表1)、若茎頭部の形状はグリーンアスパラガス若茎よりも締まりが良く、アントシアニン着色も目立たなかった(図表省略)。 2)フィルム被覆によりトンネル内の地温上昇が抑えられ、収穫開始期が遅れる傾向にあった。また、収穫作業は暗黒下で行うが、グリーンアスパラガス栽培と比較して収穫作業性が大きく劣ることはなかった(図表省略)。 3)小型トンネルの場合は収穫作業効率が著しく劣った。また、若茎にアントシアニンが着色し、グリーンアスパラガス栽培よりも春芽規格内収量が減収した。一方、大型トンネルの遮光フィルム被覆法をハウス立茎栽培に導入することにより春季をホワイトアスパラガス、夏季をグリーンアスパラガスとして収穫することが可能であった(表2)。 4)現地試験のハウス立茎栽培においても春季ホワイトアスパラガス、夏季グリーンアスパラガス収穫が可能であった(表3)。また、フィルム被覆直後のハウス側窓閉め切り管理によりトンネル内の地温上昇効果が認められた(図表省略)。 5)青果用ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラガスより高単価で取引されており、必要資材導入費を差し引いても充分な利益が期待できる(表4)。 6)“ハウス作型における遮光フィルム被覆による無培土栽培マニュアル”を作成した(図1)。 ![]() ![]() ![]() ![]() 1)フィルム被覆 ・萌芽を確認したら速やかにトンネルを設置して遮光フィルムを被覆する(本試験では(株)東罐興 産製の「ホワイトシルバー」を「ホワイト面」を表にして被覆した)。 ・トンネル内に光が少量でも入ると若茎にアントシアニンが着色するためトンネル内は常に暗黒条 件を維持するように努め、光漏れを見つけた場合は速やかに修復する。特に入り口付近は光が漏 れやすいので注意する。 2)トンネル内の温度管理 ・フィルム被覆直後から収穫開始期までは地温確保を目的としたハウス側窓閉め切り管理を行う。 ・収穫開始期からはトンネル内の気温(地上高15cm)35℃以下を目安にハウスの換気を行う。 3)収穫作業 ・日の出とともにトンネル内の気温は急上昇し、高温多湿条件となるので収穫作業は早朝に終わら せる。また、事故防止のため日中のトンネル内作業は避ける。 ・ハウス立茎栽培での春芽収穫期間は35日、春芽目標収量は1.0t/10aとし、目標収量に達した場 合は35日に満たなくとも収穫を打ち切る。明らかな低収圃場やハウス半促成春どり栽培ではこ れまでのグリーンアスパラガス栽培での春芽平均収量を算出し、その値を目標収量に設定する。 ・収穫作業時には頭にヘッドライトを装着すると作業しやすい。 ・アントシアニン着色を防ぐために収穫物にも極力光を当てない。 4)水管理 ・グリーンアスパラガス栽培同様にpF2.0を目安に潅水を行う が、春先の潅水は地温を低下させるので極力避ける。また、高 温時の潅水は若茎のヒビ割れの発生要因となる。 5)収穫終了後の管理 ・速やかにフィルムを撤去し、立茎作業もしくは株養成を行う。 ![]() 図1 ハウス作型における遮光フィルム被覆による無培土栽培マニュアル 4.成果の活用面と留意点 1)3年生株以降のハウス圃場(ハウス立茎および半促成春どり作型)に導入できる。 2)遮光フィルムは(株)東罐興産製の「ホワイトシルバー」を使用した。 5.残された問題とその対応 1)適切な収穫打ち切り時期・収穫量の検討 2)被覆時期に対応したフィルム面(ホワイト面、シルバー面)の検討 3)収穫後のアントシアニン着色抑制対策の検討 |