成績概要書(2008年1月作成)
省力的な整枝方法、定植時期の違い並びに苗の塩締めが生育に及ぼす影響について調査し、セル成型苗を利用したかぼちゃ生産の安定化を図る。 2 方法 1)省力整枝法(花野セ、和寒町、名寄市、美深町、2006-2007年)処理区:放任、処理Ⅰ(親づる摘心(現地慣行))、Ⅱ(Ⅰ+株元摘果)、Ⅲ(Ⅱ+株元整枝)、Ⅳ(Ⅲ+子づる先端摘心等)、品種:「えびす」、「こふき」、「くりゆたか」、育苗:72または78セルトレイ、施肥:現地慣行(N;8.0-11.9,P2O5;13.0-20.0,K2O;5.4-10.0kg/10a) 2)定植時期(和寒町、名寄市、2006-2007年) 定植日:Ⅰ(6/5頃)、Ⅱ(6/15頃、現地慣行)、Ⅲ(6/25頃)。整枝法:上記1)のⅡ(2006年)、Ⅰ(2007年)の方法。品種:「えびす」、「こふき」。育苗、施肥は1)と同じ。 3)苗の塩締め処理(花野セ、和寒町、名寄市、美深町、2006-2007年) (1)塩の種類と濃度:無処理,0.3%食塩水を定植5日前からかん水(花野セでは食塩水0.15%,塩化カリウム水0.15,0.3%区も実施)。品種、育苗、施肥は1)と同じ。(2)品種の反応:「えびす」等12品種を供試。無処理、定植5日前から0.3%食塩水かん水。 3 成果の概要 1)省力整枝法 (1)「えびす」では産地慣行の「親づる摘心のみ」に比較して、株元摘果、株元整枝等管理作業を行うほど、着果節位は低下し、集中する傾向を示し、規格内収量はほぼ同等〜増加する傾向であった(データ略)。 (2)整枝作業労賃、規格内収量、販売単価を考慮すると、「えびす」の場合、株元摘果・整枝を行うことで収益が向上した(図1)。しかし、草勢の弱い「くりゆたか」では収量が上がらず、労賃を差引くと収益は低下した。草勢等の品種特性を考慮して、過不足ない整枝管理が重要であった。 2)定植時期 「えびす」では定植時期が早いほど規格内収量は高く販売額(試算)も高まったことから、6月上旬定植が適していた(図2)。また、遅い作期では果実の乾物率がやや低下し、果実品質はばらつく傾向が強かった。 3)苗の塩締め処理 (1)品種により反応の程度に差異がみられたが、塩締め処理によりセル苗の本葉長、茎径は95%程度小型化し、苗の乾物率も0.4ポイント低下した(表1)。「えびす」は供試品種の中では中庸の反応であった。また、食塩水(NaCl)の塩締め処理では、子葉、本葉葉縁の黄化がみとめられた。 (2)塩締め処理はセル苗の耐干性をやや向上させた(表2)。塩締め処理により総収量は低下するが、規格外の大果が減少することで規格内収量はほぼ同等からやや増加の事例が多かった。 (3)耐干性、規格内収量性、果実品質を考慮すると、定植5日前からの0.3%食塩水かん水の塩締め効果が安定していた。 ![]() ![]() 図1 整枝作業時間と収量、収益(2007年、美深町) 処理法:Ⅰ(親づる適心のみ((現地慣行))、Ⅱ(処理Ⅰ+5節まで株元 摘果)、Ⅲ(処理Ⅱ+株元整枝)、販売額、労賃は農協単価による。 ![]() 図2 定期時期と収量、販売金額試算(2009-6,2007年、和寒町、名寄市) 品種:2006年和寒町以外は「えびす」、販売額は農協販売価格による試算 ![]() '注)育苗トレイを無かん水で簡易ハウス内に静置、2007年6月6日 調査,n=16株/区。しおれ程度:0 無、1 子葉湾曲・茎曲がり、2 本葉しなび、3 全身しなび、4 枯死。しおれ度=∑(各指数×そ の株数)×100/(最大階級値×調査株数) 4 成果の活用面と留意点 1)かぼちゃセル成型苗の直接定植栽培時の参考とする。 2)セル苗の塩締め処理はかん水省略の技術ではないので、気象、土壌水分を考慮して定植作業をすすめ、高温少雨の時期には植え穴かん水につとめる。また、品種間差異がみられるので、「えびす」以外の品種では試作を行ってから導入すべきである。 5 残された問題とその対応 1)「えびす」以外の塩締め処理の収量性確認。 2)低収年、低収畑における塩締め処理の効果は未検討。 |