成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:まさかりかぼちゃ及び札幌大球キャベツの特性
       (地域の食文化を支援する地方野菜の特性調査)
担当部署:花・野菜技術センター 技術体系化チーム、中央農試 遺伝資源部 資源貯蔵科
協力分担:石狩農改石狩北部支所、上川農改士別支所、空知農改空知南西部支所、
       北海道農業専門学校
予算区分:農政部事業(革新的農業技術導入促進事業)
研究期間:2005〜2007年度(平成17〜19年度)
1.目的
地域の食文化多様化を支援するために、伝統的な地方野菜であるまさかりかぼちゃと札幌大球キャベツについて、栽培・品質特性と作業性等の問題点を明らかにし、現地における生産振興に寄与する。
2.方法
1)まさかりかぼちゃ
(1)遺伝資源の特性評価 作型:露地マルチ栽培、親つる1本整枝、13系統供試。
(2)系統内および系統間における採種性の検討 長沼町:3系統を系統内交配、3系統を6系統間交配。 士別市:3系統の系統内交配、4系統を7系統間交配に供試。
 
(3)系統内交配と系統間交配による系統の評価 作型:露地マルチ栽培 親つる1本整枝供試系統:(2)の交配組合せの中から供試。花・野菜セ3系統内・ 4系統間、長沼町6系統間、士別市1系統内・5系統間 札幌市2系統内・8系統間
2)札幌大球キャベツ
(1)札幌大球キャベツの栽培実態調査 生産者:石狩市3戸
(2)札幌大球キャベツの特性 品種:「札幌大球1号甘藍」、「札幌大球4号甘藍」(石狩市慣行品種)、作期:作期Ⅰ(6月下旬定植)、作期Ⅱ(7月下旬定植)
3.成果の概要
1)まさかりかぼちゃ
(1)遺伝資源の特性評価:全ての系統の果皮は硬く、まさかりかぼちゃとしての特性を備えていた。一部の系統で奇形雄花と心止り症状が発生したがほとんどの株で生育に大きな影響はなかった。肉質が粉質で乾物率が高かったのは「PGR 1210Z」,「S4 D4-3-1」,「S5 07-2-3-1」,「78 安田まさかり2」であった(表1)。
(2)系統内および系統間における採種性の検討:遺伝資源部慣行の方法により採種を行った結果、一部の系統を除き、1果当り350〜650粒程度の種子を採種することができ、発芽率も概ね良好であった(表2)。
(3)系統内交配と系統間交配による系統の評価:ほとんどの系統の果皮は硬く、まさかりかぼちゃとしての特性を備えていた。乾物率が高かったのは「PGR 1210Z」、「S4 D4-5-2」、「S4 N2-2-2」であった(表1)。系統間交配による系統は奇形の発生が見られなかった。
2)札幌大球キャベツ
(1)実態調査によると、札幌大球キャベツの可販球率は8割程度であった。ぎりぎりまで肥大させるため、主な障害は裂球であった。栽培上の問題点として収穫負担があげられた。
(2)作期Ⅰでは、「札幌大球1号甘藍」は「札幌大球4号甘藍」に比べ収穫期が20日程度早く、平均一球重が軽かった(表3)。
(3)作期Ⅱの「札幌大球1号甘藍」は、作期Ⅰに比べ平均一球重が4kgと小さく、内部品質は優っていた(表3)。また、生産者等により「札幌大球4号甘藍」と品質が同等と判断され、直売所利用者を対象としたアンケート調査では「大きさが手頃」と評価された。
(4)上記結果を基に、札幌大球キャベツ栽培のポイントを整理した(図1)。

  
 
表3.札幌大球キャベツの特性(2005〜2007年平均)


図1.札幌大球キャベツ栽培のポイント

  写真.札幌大球(H19.11.7)

4.成果の活用面と留意点
1)まさかりかぼちゃの品種選定の資とするとともに、採種栽培において劣悪形質の発現を軽減する。種子の配布は「北海道立農業試験場植物遺伝資源提供要領」により行う。
2)まさかりかぼちゃは着果期以降に草勢が著しく低下すると、皮の硬化が不充分で、乾物率も充分に上がらないので、草勢管理とうどんこ病防除に留意する。
3)既存産地とともに新たに札幌大球キャベツを生産する際の参考とする。
5.残された問題とその対応
1)まさかりかぼちゃの生育後期の茎葉枯れ上がり症状の原因解明。
2)札幌大球キャベツの収穫作業の軽減対策。