成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:乳牛への直接給与生菌(DFM)剤給与による粗飼料の利用効率向上効果
       (直接給与生菌(DFM)剤による飼料の利用効率向上技術の開発)
担当部署:道立根釧農試 研究部 乳牛飼養科
協力分担:なし
予算区分:受託試験(民間受託)
研究期間:2006〜2007年度(平成18〜19年度)

1.目的
 自給粗飼料を主体とした本道酪農において、輸入濃厚飼料に依存せず、安全な牛乳を持続的に生産するためには、自給粗飼料の品質を高めるとともに、飼料を効率的に利用する必要がある。DFM(direct-fed microbial;直接給与生菌)剤は有用微生物の働きによって飼料利用効率の向上が期待されるが、微生物の組み合わせや割合によりその効果が大きく異なる。本課題で供試したDFM剤(BLCSルナシータDIBA、日本エメラル社)は、ルーメン内でプロピオン酸生成菌が乳酸とメタン生成の原料となる水素からプロピオン酸を生成することに着目したメタン生成量の削減と、繊維消化率の向上を目的として開発された製剤である。すなわち本製剤は、乳酸生成菌により乳酸が効率よく生成されるとともに、繊維分解菌が増殖しやすいように配慮された微生物の構成割合となっている。そこで、本課題では北海道酪農の主要な粗飼料であるチモシー主体牧草サイレージを用いた飼養条件において、DFM剤添加給与による粗飼料の利用効率向上効果について検証した。

2.方法
乳牛におけるDFM剤の添加給与が、摂取量、乳量、ルーメン内容液性状、メタン発生量および消化率に及ぼす影響について、以下の構成で試験を実施した。
1)乾乳牛における粗濃比100:0の飼料給与時のDFM剤添加効果
2)泌乳牛における粗濃比50:50の飼料給与時のDFM剤添加効果
3)泌乳牛における粗濃比65:35の飼料給与時のDFM剤添加効果
4)泌乳牛における粗濃比50:50の飼料給与時のDFM剤添加量増給効果

3.成果の概要
1)粗濃比100:0(乾乳牛)におけるDFM剤添加(10、20g)により、ルーメン内容液の総VFA濃度は有意に増加(P<0.05)、A/P比は有意に低下(P<0.05)したが、メタン発生量に対する影響はなく、DM、OM、およびNDF消化率は高くなる傾向を示し、0gと10g区間は有意な差(P<0.05)となり、その結果TDN含量は高くなる傾向を示した(P=0.12)(表1)。
2)粗濃比50:50(泌乳牛)におけるDFM剤添加(5、10g)は、DMI、ルーメン内容液性状、メタン発生量および消化率に影響を及ぼさなかった(表2)。
3)粗濃比65:35(泌乳牛)におけるDFM剤添加(5g)により、DMIは増加傾向(P=0.12)、プロピオン酸割合は高まる傾向(P=0.14)、A/P比は低下の傾向(P=0.11)、メタン発生量は増加傾向(P=0.06)を示したが、DMIあるいは4%FCMあたりのメタン発生量に違いはなく、NDF消化率およびTDN含量は有意に低下した(P<0.01)。しかし、これらの結果は処理よりも個体差によるDMI増加の影響が大きいと考えられた(表3)。
4)粗濃比50:50(泌乳牛)におけるDFM剤の添加(20、40g)により、総VFA濃度は高くなる傾向を示し、0g区と20g区間に有意差(P<0.05)が認められ、プロピオン酸割合は増加、A/P比は低下の傾向を示した。しかし、メタン発生量および消化率に影響しなかった(表4)。
まとめ
DFM剤の添加により、ルーメン内容液のプロピオン酸割合は高く、A/P比は低下する傾向を示したが、メタン発生量の低減は認められなかった。粗飼料割合100%DMでDFM剤を添加することにより、NDF消化率は向上し、TDN含量は高まる傾向がみられ、粗飼料の利用効率向上効果が示唆された。しかし、飼料中の粗飼料割合を65%〜50%DMに低下させると、同様の効果は確認できなかった。
以上から、本DFM剤は一部、ルーメン内容液性状および成分消化率に効果が認められたものの、その効果は飼料構成や乳牛の生理状態などに影響を受けると結論づけられた。

     

     

4.成果の活用面と留意点
1) 本試験において、DFM剤添加給与はトップドレスで行った。
2) 本製剤は「飼料の安全確保及び品質の改善に関する法律」に基づき、届出済みの飼料である。
5.残された問題とその対応
泌乳牛用飼料に適したDFM剤中の微生物構成割合に関する検討。