成績概要書 (2008年1月作成)
課題分類 :
研究課題 : タンパク質分解性の違いがとうもろこしサイレージ多給時における
        ルーメン微生物態窒素合成に及ぼす影響
       (タンパク質原料の違いがとうもろこしサイレージ多給時のルーメン発酵に与える影響)
担当部署 : 畜試 基盤研究部 病態生理科、ホクレン農業協同組合連合会
協力分担 :
予算区分 : 民間共同
研究期間 : 2006年度(平成18年度)
1.目的
飼料自給率の向上が課題となっている中、高栄養自給飼料であるとうもろこしサイレージ(CS)を活用した飼養管理が求められており、本飼料の特性に合わせた配合飼料の開発が求められている。CSは易消化性デンプンを豊富に含むが、タンパク質含量が低い飼料であるため、CSのルーメン内分解性に合わせた併給タンパク質の給与が必要となる。ルーピンはマメ科の1年生または多年生草本で、その子実はルーメン内溶解性タンパク質(SIP)を豊富に含むことから、CSを多給した乳牛の飼養体系における併給タンパク源として適すると考えられる。
そこで、本試験ではSIPおよびルーメン内非分解性タンパク質(RUP)含量の異なる飼料の組み合わせが、十二指腸への窒素移行量および微生物態窒素合成効率に及ぼす影響を検討した。
2.方法
給与飼料の乾物構成比および化学成分を表1に示した。給与飼料中のCS割合は50%、粗タンパク質(CP)含量は16%とし、ルーピン、加熱大豆粕および大豆粕の混合比を変えることにより、SIP含量を2水準(30%、36%)およびRUP含量を2水準(29%、33%)設定し、2元配置で試験を行った。
ルーメンフィステルおよび十二指腸カニューレを装着したホルスタイン種乾乳牛4頭(試験開始時体重674±114kg)を供試し、1期14日間(予備期9日間+本期5日間)の4×4ラテン方格法で実施した。飼料は1日1回飽食給与した。養分消化率はクロムを指標として、微生物態窒素合成量はプリン体を指標として推定した。
  
3.成果の概要
1) 乾乳牛において、飼料中のCS割合が50%(乾物比)、CP含量が16%のとき、SIP含量を30%CPから36%CPに高めると養分摂取量、総消化管における養分消化率およびルーメン内のデンプン消化率は変化しないが、ルーメン内のNDF消化率が5〜10ポイント低下した(表2)。
2) 高SIP飼料給与時には、微生物態窒素合成効率が低SIP飼料給与時の1.5倍となり、窒素摂取量に対する十二指腸への総窒素移行量および微生物態窒素移行量が高まる傾向にあった(表3)。
3) 飼料中RUP含量を29%CPから32%CPに高めても養分摂取量、消化率および微生物態窒素合成量は変化しなかった(表2、表3)。
4) ルーメン液のpH、VFA濃度およびアンモニア態窒素濃度にはSIPおよびRUP含量の影響がみられず、SIP含量を高めてもルーメン液のアンモニア態窒素濃度が過度に高まることはなかった(表4)。

以上より、とうもろこしサイレージを多給する場合、飼料中SIP含量を30%CPから36%CPに高めると、ルーメン内のデンプン消化率は変化せずに、微生物態窒素合成が効率よく行われることが示唆された。

   

   

4.成果の活用面と留意点
1) とうもろこしサイレージ多給時における、ルーメン内のデンプン分解性に合わせた配合飼料を開発する際の基礎資料となる。

5.残された問題とその対応
1) SIPおよびRUP含量の異なる飼料の組み合わせが乳生産へ及ぼす影響については、「飼料自給率80%を目指した乳牛の破砕処理とうもろこしサイレージ多給技術の開発」(国費受託:2006〜2010年度)で検討する。