成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:LAMP法による生乳のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術
      (LAMP法を用いたエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術の開発)
担当部署:道立畜試 基盤研究部 遺伝子工学科
協力分担:(株)フロンティア研究所
予算区分:外部資金(都市エリア)
研究期間:2005〜2007年度(平成17〜19年度)
1.目的
乳製品から検出されることがある黄色ブドウ球菌は、エンテロトキシンを産生して食中毒を起こす代表的な毒素型食中毒菌である。エンテロトキシンにはいくつかの型があるが、食中毒事例において分離される黄色ブドウ球菌はそのほとんどがA型単独あるいはA型との複合型のエンテロトキシンを産生する株である。本研究では乳製品の安全性確保のための迅速かつ正確な黄色ブドウ球菌検出技術の開発を目的として、LAMP法を用いたエンテロトキシンA(SEA)産生黄色ブドウ球菌の検出技術を開発する。

2.方法
1)エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出のためのLAMP用プライマーの設計とその評価
2)LAMP法を用いた生乳および乳製品からのエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌の検出

3.成果の概要
1)エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出のためのLAMP用プライマーの設計とその評価
①SEA産生黄色ブドウ球菌検出用にデザインしたプライマーを用い、SEA産生黄色ブドウ球菌DNA を試料としてLAMP反応を行ったところ、検出が確認された。さらに、ループプライマーを加えてプライマーを計6本にすることで検出時間が短縮した(表1、図1)。 ②LAMPの反応温度について検討を行ったところ、61℃の条件で最も検出時間が短いことが確認された。 ③作製したプライマーではSEA遺伝子を保有する黄色ブドウ球菌以外の菌種は検出されず、特異性の高いプライマーであることが確認された。 ④黄色ブドウ球菌ゲノムDNAを試料とした検出感度の検討では、DNA の量が5pg/tube以上で検出が確認された。
2)LAMP法を用いた生乳および乳製品からのエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌の検出
①作製したプライマーを用いたLAMP法による生乳からのSEA産生黄色ブドウ球菌検出についてDNA抽出法を検討したところ、溶菌酵素であるアクロモペプチダーゼとDNA抽出試薬InstaGeneTMを組み合わせる方法を用いた場合に検出感度が最も良好であり、黄色ブドウ球菌数が101 cfu/ml以上の場合において検出が確認された(図2、図3)。 ②生乳からの黄色ブドウ球菌検出についてLAMP法と従来法との比較を行ったところ、LAMP法では検出までに要する時間は120分間であり、他の方法と比較して短時間での検出が可能であった(表2)。 ③LAMP法による生乳からの黄色ブドウ球菌検出限界を確認したところ、菌数103 cfu/mlレベルで100%が検出された。 ④黄色ブドウ球菌を添加したナチュラルチーズ二種を用いてLAMP法によるSEA遺伝子検出を行ったところ、それぞれ、菌数が102cfu/gおよび105 cfu/g以上の場合において検出が可能であった。このことから一部のナチュラルチーズにおいてもLAMP法による黄色ブドウ球菌検出が利用可能であることが推察された。
以上のように、LAMP法による迅速かつ正確な生乳のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術を開発した。

   表1 設計したプライマーの配列(SEA遺伝子検出用、61組)
  


1 作製プライマーを用いた
 黄色ブドウ球菌遺伝子の検出
    
  2 生乳からの黄色ブドウ球菌DNA抽出法
    (アクロモペプチダーゼ+InstaGeneTM法)

3  LAMPによる生乳中からのSEA遺伝子の検出
 表2 各種黄色ブドウ球菌検出法の比較
  
  ※RPLA:逆受身ラテックス凝集反応法


4.成果の活用面と留意点
1)LAMP法を用いたエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌の検出技術は、食品加工現場および検査機関における検査法の一つとして利用できる。
2)本技術は作製したプライマーを含む試薬としてキット化されており、自主検査の一環として使用可能である。

5.残された問題とその対応
他の食中毒原因菌との同時検出の検討