成績概要書(平成20年1月作成)
本課題では呼吸活性測定装置を用いて、生体から回収した発育ステージの異なる生体回収ブタ胚の呼吸活性を測定する。これにより各発育ステージごとの基準となる呼吸活性値を決定し、ブタ胚の品質評価法確立を目指す。 2.方法 1)生体由来ブタ胚の回収 試験場内で繋養する大ヨークシャー10頭をドナー豚として使用した。離乳後のドナー豚に過剰排卵処理を行い、hCG投与後24h目から最大3回の人工授精を実施した。ドナー豚は初回交配日をDay0とし、Day 3, 4, 5, 6, 7 にそれぞれ 2, 1, 2, 1, 4頭をと殺し、卵管または子宮から胚を回収した。 2)ブタ胚の呼吸活性測定と細胞数測定 呼吸活性の測定は呼吸活性測定装置(北斗電工、HV-403)により実施した。呼吸活性の値は F×10-14mol s-1 で算出され、このうちF値を以下呼吸活性値と呼称する。 呼吸活性を測定した胚のうち、59個のブタ生体回収胚を蛍光染色し、細胞数を測定した。 3.結果の概要 1)生体由来ブタ胚の回収 10頭のドナー豚から88個の胚を回収した。得られた胚のステージはDay3 では4〜8細胞期胚(cell)、Day 4 では8cell〜桑実期胚(M)、Day 5 では16cell〜初期胚盤胞(EB)、Day 6 ではEB〜胚盤胞期胚(BC)、Day 7 ではEB〜脱出胚盤胞(Hed)であった(表1)。 2)ブタ生体回収胚の呼吸活性 形態的な観察でAランクと判定した胚の呼吸活性値から、発育ステージごとの呼吸活性値を求めた。各発育ステージにおける呼吸活性値は4cell 0.15±0.02 、8cell 0.25±0.03、M 0.46±0.06、小型化桑実胚(CM) 0.48±0.05、EB 0.78±0.04、BC 0.90±0.03、拡張胚盤胞(Ex) 2.00±0.20、Hed 4.00±0.29であった(表2、図1)。 ブタ生体回収胚の呼吸活性値は、BC以降急激に上昇した。これは胞胚腔の形成、拡張期に代謝量が上昇し、結果として呼吸活性値が上昇しているためと考えられる。 3)呼吸活性値と細胞数の関係 呼吸活性値と細胞数の間に極めて高い相関(r=0.96)が見られた(図2)。 以上の結果から、ブタ生体回収胚の発育ステージごとに基準となる呼吸活性値を明らかにした。 ![]() ![]()
4.成果の活用面と留意点 1)呼吸活性値はブタ生体回収胚をはじめ、体外生産胚や凍結融解胚品質の指標となる。また間接的に体外受精系や、凍結保存技術の評価が可能になる。 5.残された問題とその対応 1)さらにデータを追加することで、より詳細な発育ステージごとの呼吸活性値を明らかにする。 2)本試験で実施しなかった呼吸活性値測定後の移植試験を実施することで、呼吸活性値と受胎の関係を明らかにすれば、さらに確実なブタ胚の品質評価が可能になる。 |