成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:細断型ロールベーラを利用したTMRの品質保持技術
   〔 予算課題名:地域資源を有効活用した自給飼料主体TMR供給システムの開発
            1)自給飼料主体TMRの開発 4)夏季製造TMRの品質保持技術 〕
担当部署:根釧農試 研究部 酪農施設科
協力分担:なし
予算区分:道費(重点領域特別研究)
研究期間:2005-2007年度(平成17-19年度)
1.目的
自給飼料を主体とするTMR供給システムでは調製後のTMRを変敗させない品質保持・供給技術の確立が求められている。本試験では細断型ロールベーラによる梱包密封がTMRの品質保持に及ぼす効果を明らかにする。

2.方法
1)ロールベール梱包TMRの品質および嗜好性の評価
供試機:細断型ロールベーラ(ロールベール寸法φ85×85cm)+自走式ベールラッパ
供試材料:1番草サイレージを用いたTMR(粗濃比55:45〔DM34%〕)
供試期間:梱包から2,4,7,14,21日後に開梱(梱包日2005.8.1)
嗜好性の評価:農試FS牛舎個別飼槽に供試材料と当日調製TMRを交互配置、搾乳牛(27〜29頭)による選択採食
測定項目:ロールベール重量、ロールベール内部温度(センサ封入)、DM、抽出液のpH、酸含量、VBNなど
2)TMR配合材料の違いによる保存性の比較
供試機:ラッパ一体型細断型ロールベーラ(ロールベール寸法φ115×100cm)
供試材料:1番草サイレージを用いたTMR(粗濃比50:50〔DM38%〕,同74:26〔DM32%〕)
2番草サイレージを用いたTMR(粗濃比50:50〔DM38%〕,GS100%〔DM22%〕)
とうもろこしサイレージと2番草サイレージを用いたTMR(CS:GS:濃厚飼料 52:26:22〔DM35%〕)
 供試期間:梱包から3,7,14,21,28日後に開梱(梱包日2007.7.20)
梱包日調製TMRと28日後開梱TMRについては開放型容器(容積36L)によるバラ貯留試験を実施
測定項目:1)に同じ
3)細断型ロールベーラの作業性
供試機:ラッパ一体型細断型ロールベーラ(ロールベール寸法φ115×100cm)  供試材料:2)と同じ
測定項目:作業時間内訳、ロールベール重量、作業時のTMR損失量など

3.成果の概要
1)バラ貯留すると1〜2日経過後に明らかな温度上昇を示すTMRでも、細断型ロールベーラによって梱包すると4週間の貯蔵期間中、顕著な温度上昇は示さなかった(図1)。
2)貯留後のTMRロールベールを開梱し、バラ貯留した場合の温度上昇はTMR調製直後からバラ貯留したTMRに比べ上昇傾向が緩やかだった(図2)。
3)ロールベール梱包したTMRは貯留中に乳酸・酢酸含量、VBNが増加し、pHは低下したが、酪酸含量の変動は無く、酵母の活性化や糸状菌発生の兆候は認められなかった(表1)。
4)ロールベール梱包による貯留後のTMRは当日調製のTMRに対し、選択採食性は劣ったが、給餌時間全体の採食量に有意差は認められなかった(図3)。
5)ラッパ一体型細断型ロールベーラで作製したTMRロールベールの重量は708kg(DM38%)〜932kg(DM22%)で、乾物密度は概ね200kg/m3以上と高密度であった。成形梱包時の損失は現物で0.5〜0.8%であった(表2)。
6)自走式ミキサーから電動コンベアによってラッパ一体型細断型ロールベーラにTMRを供給する体系において、28個のロールベールを成形梱包するのに要した時間は待機時間を除きおよそ1時間30分で、ロールベール1個あたり約200秒であった(表3)。

以上の結果から、細断型ロールベーラによるTMRの梱包密封はTMR調製後の好気的変敗を少なくとも1ヶ月間防止できることが確認され、TMRの品質劣化対策として有効であることが示された。
 

   図1 TMR ロールベール内部の温度 

   図2 バラ貯留したTMRの温度 

  図3 飼槽内の残量推移(2005/8/22)
   表1 TMRロールベールの成分推移
 
       
         表2  TMRロールベールの重量 (平均値)
        

        表3  細断型ロールベーラの作業時間
        

.成果の活用面と留意点
1)本技術はTMRセンターなどにおいて、TMRの配送や調製作業の効率化のため、調製後TMRを一時的に貯留しなければならない場合の品質劣化抑止技術として利用できる。
2)作製したTMRロールベールの貯留は直射日光を避け、ラップフィルムの破損に留意する。また、TMRの貯留中は鳥獣害のおそれがあるため、貯留場所周辺環境の整備に努める。

5.残された問題とその対応
1)長期貯留における品質の検討