成績概要書(2008年1月作成)
研究課題 : 根釧地域における極早生とうもろこしの安定栽培技術
      (地域資源を有効活用した自給飼料主体TMR供給システムの開発)
      (粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発(えさプロ))
担当部署 : 根釧農試 研究部 作物科
協力分担 : 中標津町農業協同組合
予算区分 : 道費(重点領域特別研究)、独法受託(えさプロ)
研究期間 : 2005〜2007年度(平17〜19年度)、えさプロ;2006〜2007度(平18〜19年度)
1.目的
 自給飼料を主体とするTMR供給システムをはじめ、冷涼な根釧地域で飼料用とうもろこしの無マルチ(以下「露地」とする)栽培を希望する酪農家等のための技術的指針を作成する。

2.方法
1)狭畦露地栽培法の有効性 : 他栽培法と生産性等を比較(場内および現地)
2)狭畦交互条播栽培法の検討 : 障害型冷害回避を目的とした交互条播の、構成品種単植に対する生産性等を調査(場内)
3)播種床造成法の簡略化の検討 : プラウおよびロータリハローの省略の可否を検討(場内)
4)安定栽培地域区分の策定 : 極早生品種の気温−生育モデルを構築し、GISによるマップ化を図る(場内および現地)
5)総合考察 : 栽培法の整理、生産コストの試算


3.成果の概要
1)狭畦露地栽培(畦間50または56cm、株間18cm程度)の収量は、年次によって傾向が異なる場合もあったが、気象条件を勘案すると、マルチ栽培の85%程度、慣行畦間露地栽培(畦間72または75cm、株間18cm程度)の94〜120%程度であった(表1)。狭畦露地栽培の耐倒伏性はマルチ栽培より劣り、慣行畦間露地栽培と同程度かやや優った(表2)。
2)「ぱぴりか」は生育初期の低温処理により雄穂の長さが変化することはなかったが、供試した他の品種は、雄穂が短くなり、障害型冷害感受性と考えられた(図1)。「ぱぴりか」と他品種との交互条播は、圃場全体の障害型冷害抵抗性と収量性を両立できた(図2)。ただし、生育良好年には「ぱぴりか」が過度に抑圧されて低収傾向となる。また、組合わせる品種による相性の存在が示唆された。
3)ディスクオープナ型播種機を用いた場合、草地からの転換時(グリホサート系除草剤で前植生を完全枯殺)、連作中ともに、プラウおよびロータリハローの省略が可能であった(図3)。
4)極早生品種について積算気温と熟度との関係を数式化し、GISを活用した1kmメッシュの「黄熟初期以降に達する確率」マップを作成した(図4)。
5)本試験を通じて明らかとなった各栽培法の特徴をまとめた(表3)。作業工程別コストおよび資材費を仮設定し、期待収量に基づく栽培コストを試算した(表4)。

 以上から、根釧地域における極早生とうもろこしの露地栽培では、狭畦栽培が収量性において安定的であり、耐倒伏性は慣行畦間栽培と同程度かやや優る。障害型冷害耐性を持つ「ぱぴりか」を用いた交互条播が望ましい。また、播種機によっては、播種床造成時のプラウ、ロータリハローともに省略可能である。

  

  

  
                  図3.播種床造成法別のTDN収量
                  注)慣行法;堆肥投入→プラウ→ディスクハロー→ロータリハロー。
                    「慣行-ロータリ」はロータリハローの省略を、「春堆肥」は堆肥投入をプラウ後に行ったことを示す。
                    草地跡では前年秋にグリホサート系除草剤処理を行った。

   
4.成果の活用面と留意点
1.本試験の成果は、根釧地域においてとうもろこしを露地栽培しようとする場合の指針となる。
2.とうもろこしを露地栽培しようとする際には、本試験で示した「黄熟初期以降に達する確率マップ」を活用して、その地区での適否を慎重に判断すること。
3.コスト計算は仮に設定した数字のみに基づいているため、実際には、個々、条件に応じて再計算する必要がある。

5.残された問題点とその対応
1.新品種に関する障害型冷害耐性および交互条播適性の検討
2.安定栽培地域区分の精度向上
3.圃場条件に応じた簡易耕起施工法の検討
4.簡易耕起および狭畦露地栽培に対応した施肥法の開発