成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:根釧地域におけるイタリアンライグラスを用いた雑草防除法
 (地域資源を有効活用した自給飼料主体TMR供給システムの開発 1.自給飼料主体TMRの開発)
担当部署:北海道立根釧農業試験場 研究部 作物科、乳牛飼養科 
協力分担:JA中標津
予算区分:道費(重点領域特別研究)
研究期間:2005〜2007年度(平成17〜19年度)
1.目的 
 リードカナリーグラス(以下RCG),シバムギ(以下QG),レッドトップ(以下RT)、ギシギシ類(以下Rx)等の雑草に対して、イタリアンライグラス(以下IR)を用いて、除草剤を用いずに生態・耕種的に防除する技術を開発する。

2.方法
1)IRを用いたRCGの生態・耕種的防除法の検討:
 ①ロータリハロー(以下RH)施工回数による防除効果 ②IR2年間栽培の評価
 ③IR品種の検討          ④IR1ヶ年栽培後翌年TY導入の施工結果
2)IRを用いたQGおよびRTの生態・耕種的防除法の検討:同上
3)IRを用いたRxの生態・耕種的防除法の検討:同上
4)IRを用いた雑草防除法の現地実証:
別海町(3ha)、標津町(4ha)のRCGおよびQG優占草地
5)根釧地域で栽培されたIR主体草地の収量性および栄養価
6)施工コストの評価

3.成果の概要
1)RCG優占草地に対し、RHによる表層攪拌回数を増やす等の丁寧な施工により、RCG地下
 茎断片からの再生が少なくなり防除効果は高まる(図1、表1)。
2)表層攪拌でIR栽培を2年間実施することにより、前年秋にグリホサート系除草剤を
 散布して翌年表層攪拌IR栽培を行った場合とほぼ同程度にRCGを抑圧することが可能
 である(表2)。
3)北海道優良品種の「ビリオン」および「マンモスB」の品種間で、RCG防除効果に
 大きな差は認められなかった。
4)1ヶ年IRで防除し、2年目に表層攪拌法でチモシーを導入した場合は、RCGが乾物
 収量中で1割程度を占め、経年化によるRCG割合の増加が懸念される(表2)。
5)IRのQGおよびRTに対する防除効果は、RCGに対する防除効果とほぼ同様であった。
6)IRのRxに対する防除効果は、実生発生のRxには効果が認められるが、地中の未発
 芽種子や断根片には不十分と考えられる(表3)。IR栽培後のTY導入方法は、実生雑
 草との競合が起きるので、土壌を表面に出さない播種方法の検討が必要と考えられる。
7)RCGやQGが優占している別海町および標津町の農家圃場における、実証試験では、
 試験場内のプロット試験と同様の防除効果が認められ、再現性は高いと考えられた。
8)根釧地域において、IR主体草地の年間合計乾物収量はおおむね886kg/10a(うちIRは
 732kg/10a)程度であった。IR主体草地の栄養成分レベルは、雑草割合が少ない場合は、
 日本標準飼料成分表の値に近かったが、雑草割合により各成分値はばらついた。
9)IRを用いた生態的・耕種的防除法による播種までの施工費用は162,867円/ha。播種当 年の粗飼料生産金額まで加味した年間総経費は164,436円/haと試算された。

 以上から、雑草萌芽後にRHで15cm深の表層攪拌を4回以上施し、IRを3.5〜4.0kg/10a播種。その後、生育日数を1番草50日、2番草30日、3番草45日程度で年3回採草する方法を2ヵ年行うことにより、RCG、QGおよびRTの地上部および地下部を除草剤を用いずに抑圧することが可能である。また、Rx優占草地では実生発生Rxを除草剤を用いずに抑圧が可能である。

  
4.成果の活用面と留意点
1)根釧地域において、除草剤を使用せずに、雑草を防除する場合に活用できる。
2)自然下種による野生化を防ぐため、開花期前に収穫する。
3)イタリアンライグラスはアカヒゲホソミドリカスミカメの発生源となるので本技術の
 稲作地帯への導入は避ける。
4)本技術は特許出願中(特願2007-030193)である。

5.残された問題点とその対応
1)技術適用範囲(根釧以外の地域・土壌、他の雑草種、施工回数・機種等)の検討
2)防除能力が十分な新しい優良品種の選定
3)標準的な栄養価の査定と、肥培管理、サイレージ調製技術の開発
4)越冬性の確認と後作物(TY、AL、飼料用とうもろこし等)の適正な導入方法

写真1 RCG優占草地におけるIR導入
試験終了後の0.5×0.5mの根量
左:前年秋にグリホサート処理し翌年IRを
  導入した区の根量
中央:春に無除草剤で表層攪拌してIRを
   導入し年3回採草した区の根量
右:リードカナリーグラスの地下茎量
                      
4.成果の活用面と留意点
1)根釧地域において、除草剤を使用せずに、雑草を防除する場合に活用できる。
2)自然下種による野生化を防ぐため、開花期前に収穫する。
3)イタリアンライグラスはアカヒゲホソミドリカスミカメの発生源となるので本技術の
 稲作地帯への導入は避ける。
4)本技術は特許出願中(特願2007-030193)である。

5.残された問題点とその対応
1)技術適用範囲(根釧以外の地域・土壌、他の雑草種、施工回数・機種等)の検討
2)防除能力が十分な新しい優良品種の選定
3)標準的な栄養価の査定と、肥培管理、サイレージ調製技術の開発
4)越冬性の確認と後作物(TY、AL、飼料用とうもろこし等)の適正な導入方法