| 研究課題：てんさい，たまねぎおよびレタスに対するアゾスピリラム菌の接種効果 （環境保全型農業推進のための窒素固定微生物等の有効利用技術の確立 (4)アゾスピリラム菌の有効利用技術の確立） 担当部署：北見農試 生産研究部栽培環境科・中央農試 環境保全部土壌生態科 協力分担：北海道大学、帯広畜産大学、北農研センター、十勝農協連 予算区分：道費 研究期間：2005〜2007年度（平成17〜19年度） |
てんさい､たまねぎおよびレタスに対するアゾスピリラム菌(以下､アゾ菌：窒素固定能と植物ホルモン(インドール酢酸)分泌による根の伸張促進機能を有する)の接種効果を圃場レベルで明らかにする。
２．方法
供試菌株:十勝農協連農産化学研究所分離株から幼植物試験により、てんさいまたはたまねぎに対し生育増進が認められた4菌株（てんさい用：A、C株、たまねぎ用：B、D株）。レタスにはA株を使用。
1) てんさい、たまねぎに対する接種効果（北見農試）
(1)生育・収量に対する接種効果（2005〜2007年）
供試品種：てんさい｢きたさやか｣､たまねぎ｢ｽｰﾊﾟｰ北もみじ｣、試験地：農試圃場、農家圃場2〜4地点
処理:菌接種2水準(本葉展開期(てんさい)または発芽後(たまねぎ)接種107cfu/株､無接種)､施肥標準量
(2)接種効果に及ぼす各種条件の影響（2005〜2007年）
①接種時期3水準（発芽時･本葉展開期･移植直前(てんさい)、発芽前･発芽後･移植直前(たまねぎ)）、
②菌密度3水準(10５､10６､107cfu/株）、
③窒素施肥量3水準(標肥､30%減肥､無窒素)×菌接種2水準(接種･無接種)、
④土壌の硬さ2水準（堅密:踏圧､膨軟:全層心破施工)×菌接種2水準(接種･無接種)
2) レタスに対する接種効果（中央農試）
(1)育苗期および定植後の生育に対する接種効果（2005〜2006年）
供試品種：「みずさわ」 育苗試験：菌接種2水準（発芽後接種106〜1010cfu/株、無接種）×培土の種類4水準（a〜d）、圃場試験（施肥量は施肥標準または農家慣行）：菌接種2水準×土壌3水準（4カ所）
(2)接種効果の再現性の検討（2007年）
育苗試験：培土養分含量4水準（多、中、少、極少）×育苗時期3水準（3〜4月、4〜5月、5〜6月）
圃場試験：施肥量3水準（2.2、1.5、0.7Ng/株）×土壌3水準（黒ボク土、灰色台地土、褐色低地土）
３．成果の概要
1) アゾ菌接種で、てんさい、たまねぎの根量(根数)が増え、たまねぎでは収量が640kg/10a、N吸収量が1.1kg/10a増加し、てんさいでは根重が420kg/10a、N吸収量が1.9kg/10a増加する傾向にあった(表1)。しかし、増収程度およびＮ吸収増加量は圃場間の変動が大きく不安定であった。
2) 接種効果は接種法、施肥量、土壌理学性で次のように変化した。
①接種時期：てんさいでは本葉展開期、たまねぎでは発芽後以後で高かった(表2)。
②窒素施肥量：施肥標準量で効果が高く減肥条件で低かった(表3)。
③作土が厚い(25cm以上)膨軟な圃場で高かった(図1)。また、菌接種密度は10５〜107cfu/株では接種効果に大差はなく(表4)、接種効果は菌株の種類でも変化することが示唆された(データ省略)。
3) レタス苗へのアゾ菌接種により、育苗期には苗の葉重や窒素等の養分含有率が、圃場定植後には結球重や総重が増大する事例がいくつか認められた（表5）。また、接種効果の発現程度は、無接種区の生育量がある一定の範囲内で顕著となる可能性がうかがわれた（図2）。
4) レタスに対する接種効果の再現性を、効果発現に関与すると考えられる諸要因（施肥量、栽培時期等）の影響を考慮しつつ検討したところ、育苗期での効果は比較的安定していたが、定植後の効果は不安定で、効果発現程度と無接種区の生育量との関係が判然としない圃場もあった（図3）。
5) 以上のように、アゾ菌の接種により、てんさい、たまねぎおよびレタスの生育・収量が増大する事例が認められた。なお、接種効果は必ずしも安定的でなく、接種法、窒素施肥量、土壌条件等で変化し、無接種区の収量や菌株の種類でも変化する可能性が示唆された。
表1 菌接種がてんさいとたまねぎの収量、窒素吸収量および根本数に及ぼす影響
表2 菌接種時期が収量に及ぼす影響 (05年) 表3 窒素施肥量が菌接種効果に及ぼす影響
図1 たまねぎ圃場の作土深と菌接種による増収率の関係
注）*:無接種区を100とした接種区収量の相対値
表5 菌接種がレタスの生育量および養分含有率に及ぼす影響（05〜06年）
図2 無接種区のレタス苗葉重と接種効果との関係
(育苗試験・05〜06年、**及び*はそれぞれ無接種区との間に1%、5%水準で有意差あり)
４．成果の活用面と留意点
1) 本成果はアゾ菌資材の効果安定化技術開発の参考とする。
５．残された問題とその対応
1) アゾ菌接種効果の安定発現条件の解明