成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:高温・高圧分解(MMCS)有機物の農業資材特性解明とその活用
      (MMCS有機物の特性解明とその農業利用の検討)
担当部署:上川農試研究部 栽培環境科,株式会社西村組
協力分担:なし
予算区分:共同研究
研究期間:2005〜2007年度(平成17〜19年度)
1 目的
 MMCS処理(約200℃・20気圧)に伴う各種有機物の特性変化を明らかにし,農業利用可能な素材の探索と評価を行い,新たな農業用資材としての展望と課題を示す.

2 方法
1)MMCS有機物の特性解明:MMCS処理前後での有機物の性状(物理・化学的)変化と物質収支,土壌還元化作用,乾燥特性および臭気低減機能など.
2)MMCS籾殻の抑草効果の解析:コンテナおよび圃場試験によりMMCS籾殻施用量と水田雑草抑草効果の関係解析および実用化に向けた展望と課題の整理.
3)MMCS魚液の肥料特性解析:MMCS魚液の有機質液肥としての基本的な特性や作物に対する肥効特性,実用化に向けた展望と課題の整理.

3 結果の概要
1)MMCSの爆砕効果により,有機物は極めて微細なレベルで破砕された.また,加圧熱水の加水分解作用により,有機物中の非構造性炭水化物はオリゴ糖に(図1),タンパク質の多くはペプチドにまで低分子化された(図2).なお,MMCS処理の前後で主要成分含量に大きな変化はなく,水蒸気排出に伴うわずかなロスを除いて物質収支は保たれると考えられた.
2)MMCS籾殻を1t/10a施用することにより,水田の主要雑草であるノビエの発生量は無施用区対比20%以下に抑制されたが(図3),その効果は草種により違った.ただし,このような抑草効果と同時に水稲に対する生育抑制も認められたが,N増肥(側条施肥)などによりある程度の回避は可能である(表1).
3)MMCS籾殻による抑草効果の発現機作は,高ECによる雑草種子の発芽抑制,土壌表面に生成する黒色物質層による遮光,急激な土壌還元の進行による生育阻害などの複合作用と推察された.
4)MMCS魚液の全N含量は1.75%,C/N比は4.5で,N以外の肥料成分含量は低く肥効は期待できない(表2).重金属含量は低く特に問題はなかった.また,MMCS魚液は他の有機質肥料より低温でも培養初期のN無機化率が高かった.
5)ホウレンソウを用いたポット試験において,MMCS魚液の基肥N施肥効率は,他の有機質肥料に比較して高く化学肥料に近い値であった(図4).追肥に用いた場合の施肥効率はさらに高く,速効性の有機液肥として有望と考えられた.
6)MMCS魚液を追肥用肥料とした有機トマトの栽培実証試験では,化学液肥の追肥とほぼ同等の生育・果実収量が得られた.
7)MMCS籾殻の実用化に向けては,抑草機作の解明に加えて,施用量の縮減,大面積への散布方法の確立および水稲植害の軽減が課題である.また,MMCS魚液の有機質肥料としての実用化に向けては,効率的なN成分の濃縮方法の確立,保存性,害虫誘因性の確認,安定的な原料確保などの課題を解決する必要がある.
8)以上のように,様々な物理・化学的特性を持つMMCS有機物を,農業資材として活用する場合の各種の課題を明らかにした.今後これらの課題を解決することにより,MMCS籾殻は,有機栽培でも使用できる水田抑草資材として,また,MMCS魚液は速効的な有機液肥として極めて有望な素材であることが認められた.

      

           
          

4 成果の活用面と留意点
1)MMCS有機物の特性を活かした新たな農業資材開発に活用できる.
2)MMCSは株式会社西村組保有の基本特許に基づく処理システムである.
3)本研究の一部(抑草効果について)は特願2007-051894号として共同出願した.

5 残された課題とその対応
1)MMCS魚液を原料とした有機質肥料製品開発
2)MMCS籾殻を原料とした抑草資材の開発