成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:水稲のアカヒゲホソミドリカスミカメに対する水面施用粒剤の残効特性と施用時期
       (水面施用剤を活用した水稲のカメムシに対する新防除体系の確立)
担当部署:上川農試 研究部 病虫科
        中央農試 環境保全部 クリーン農業科
予算区分:民間受託
研究期間:2006〜2007年度(平成18〜19年度)
1.目的
人体や環境への負荷を低減する水面施用粒剤を活用し、水稲のアカヒゲホソミドリカスミカメ(以下カメムシと省略)に対する茎葉散布剤使用回数を削減した新たな防除体系を確立するため、水面施用粒剤の残効特性を明らかにし、最適な施用時期を提案する。
2.方法
1)カメムシ放飼試験:ポットおよび網枠を用いた放飼試験を行い、生存虫数、産卵数、 斑点米率等を調査して各薬剤の施用時期別(表1)残効期間の評価を行った。
(1)ポット試験(H18年)…3ポット/処理、放飼数;4頭(雄雌各2頭)、放飼時期;出穂期か ら7日間隔で出穂期21日後まで、放飼期間;7日間(最終日に放飼虫の生死を確認し除去)、 産卵調査;収穫時10〜20茎/ポット (2)水田網枠試験(H18〜19年)…1網枠(10株)/処理、 放飼数;10頭(雄雌各5頭)、放飼時期;出穂期から7日間隔で出穂期21日後まで、放飼期 間;7日間(最終日に殺虫剤を散布)、産卵調査;収穫時100茎/網枠(10株)
 

2)水田試験(H18〜19年):上川農試は現地圃場(旭川市東旭川)、中央農試は農試圃場(岩 見沢市)で各薬剤を4時期(表1)に施用し、すくい取りによるカメムシ密度および斑点 米率などから防除効果の検証を行った。
3.成果の概要
1)カメムシ放飼試験において、水面施用粒剤は各薬剤とも同様の残効特性を示し、出穂期 以前の施用による残効日数が出穂期以降の施用による残効日数より長くなった(表2)。
2)水田試験において、水面施用粒剤の1回施用で高い防除効果(各年次における無処理区 の斑点米率を100とした場合の対無処理比30以下)を示す施用時期が認められた(表3)。
3)カメムシ放飼試験及び水田試験から、1回施用で高い防除効果が認められた水面施用粒 剤とその施用時期(施用後残効日数)を求めた(表2,表3)。
・エチプロール粒剤:出穂期10日前(27日間),出穂期(18日間),出穂期7日後(14日間)
・クロチアニジン粒剤:出穂期(15日間),出穂期7日後(12日間)
・ジノテフラン3%粒剤:出穂期施用(22日間),出穂期7日後施用(14日間)
・ジノテフラン1%粒剤:出穂期施用(17日間),出穂期7日後施用(15日間)
4)上記水面施用粒剤は1回の施用で少なくとも出穂期後第2週目まで残効期間が認めら れ、茎葉散布剤の2回散布(出穂期および出穂期7日後)と同等の防除効果が期待でき るので、水面施用粒剤を利用することで2回の茎葉散布を省くことができ減農薬が可能 になると考えられる(表4)。
5)水面施用粒剤はその種類、あるいは施用時期によって出穂期後第2週目以降も残効が期 待できるが、出穂期後第3週目にはすくい取りなど発生モニタリングを行い、カメムシの 発生動向に十分注意することが必要である(表4)。

表2 カメムシ放飼試験より求めた
各薬剤の施用時期別残効日数
表3 水田試験における各薬剤の
施用時期別斑点米率(%)
残効日数:カメムシの各放飼時期における無処理区の          
  斑点米率を100としたときの対無処理比で30以下を
  高い防除効果と判定して、高い防除効果と判定した
  放飼時期の放飼最終日までの日数
*印:有効数が少なく1事例のみから求めた残効日数
出穂期以降残効日数:平均残効日数を出穂期以降の日数に換算した
薬剤施用時期:出-20;出穂期20日前、出-10;出穂期10
          日前、出;出穂期、出+7;出穂期7日後
無処理:各水田試験におけるカメムシ発生程度、
出穂期、出穂期、幼虫初発日、斑点米率%を示す
網掛け部分:高い防除効果(無処理区の斑点米率を
100とした場合の対無処理比30以下)が認められた薬剤施用時期
*茎葉散布:エトフェンプロックス乳剤散布をH18上川では3回
(出,出+7,出+14)、その他では2回(出,出+7)実施
    
表4 水面施用粒剤の有効施用時期と残効期間
出穂期後第1週目:出穂期〜7日後
    〃 第2週目:出穂期8日後〜14日後
    〃 第3週目:出穂期15日後〜21日後
    〃 第4週目:出穂期22日後〜28日後
 ●:薬剤の有効施用時期 
  網掛け部分:残効期間


4.成果の活用面と留意点
1)本試験の成果はカメムシに対して水面施用粒剤を使用する上での参考とする。
2)水面施用粒剤の施用に当たっては湛水状態で均一に行い、施用後7日間は湛水状態を保ち、落水及びかけ流しを行わない。

5.残された問題とその対応
1)水面施用粒剤を活用した減農薬体系防除の実証