成績概要書(2008年1月作成)
課題分類:
研究課題:ケイ酸含有資材がブルームレス台木きゅうりの病害に及ぼす影響
(キュウリに対するケイ酸肥料の施用効果)
担当部署:上川農試 研究部 病虫科・栽培環境科
担当者名:
協力分担:上川農業改良普及センター本所
予算区分:民間受託
研究期間:2006〜2007年度(平成18〜19年度)
1.目的
 上川管内では耐病性の向上や果実品質向上を目的としてきゅうり圃場でケイ酸含有資材を施用している事例が多い。しかし生産現場で広く栽培されているブルームレス台木きゅうりは自根やブルーム台木きゅうりと比べケイ酸の吸収量は著しく低く、ケイ酸含有資材の施用効果は不明である。本試験ではケイ酸含有資材施用とケイ酸の吸収量およびうどんこ病を主としたきゅうりの病害発生の関連を検討した。
2.方法
1)試験場所
           2006年:上川農試ハウス1棟、上川管内生産者圃場2戸
           2007年:上川農試ハウス1棟、上川管内生産者圃場2戸
       ※農試ハウスと生産者一戸は2006年と同一圃場でケイ酸含有資材連用2年目

2)資材処理 ケイ酸含有資材:A(SiO230%)、B(SiO290%)
         ※場内では資材Aのみ、現地では資材A、Bを施用した。
        ケイ酸施用量:ケイ酸として0, 18, 36, 60kg/10a
        ポット試験のケイ酸施用量:資材Bをケイ酸として0, 120, 240, 480kg/10a

3)品種   穂木「オーシャン」、台木「ゆうゆう一輝」(ブルームレス)
         ※現地では台木栽培のみで、場内では台木と自根の両方を比較栽培した。
4)調査項目 うどんこ病、褐斑病、べと病の発生時期、発病推移
        土壌化学性(可給態ケイ酸*など)、作物体養分含有率(N、SiO2**など)
      * 土壌可給態ケイ酸は湛水保温静置法(40℃、1週間)で分析。
      **作物体ケイ酸は硝酸-過塩素酸分解後、濾別された残渣を乾式灰化し、粗ケイ酸重量を測定。

3.成果の概要
1)場内試験において、台木栽培ではケイ酸含有資材のうどんこ病、べと病に対する発病抑制効果は認められなかった(図1)。
2)自根栽培では、台木栽培と比べ葉身のケイ酸含有率が高くなり、うどんこ病の初発月日が遅くなったが、ケイ酸施用量の違いによる発病の差はなかった。発病度は初発が遅れた分、初めは低く推移したが、8月上旬以降は台木栽培とほぼ同様甚発生となった(図1,表1,2)。
3)現地圃場において、ケイ酸含有資材施用のうどんこ病、褐斑病、べと病に対する発病抑制効果や、葉身のケイ酸含有率向上に与える効果は認められなかった(図2,表3)。
4)場内および現地試験において、土壌可給態ケイ酸はケイ酸含有資材施用により上昇する傾向にあったが、施用前から可給態ケイ酸の高い圃場では判然としなかった(表2,3)。
5)葉身のケイ酸含有率は、台木栽培では自根栽培と比べ極低かった。自根栽培ではケイ酸60kg施用区で無施用区と比べ含有率が高かったが、施用量との関係は判然としなかった。また、台木栽培ではケイ酸含有資材施用による含有率の上昇は認められなかった(表2,3)。
6)ケイ酸含有資材施用による果実のブルーム発生の助長は認められなかった(表2)。
7)ポット試験によるケイ酸の高濃度施用では、葉身のケイ酸含有率は高まる傾向にあったが、ケイ酸施用量および土壌可給態ケイ酸との関係は明瞭ではなかった(表4)。
8)以上のことから、ブルームレス台木栽培はケイ酸を植物体に吸収させないようにして果実のブルーム発生を抑えるものであり、ブルームレス台木を使用する場合は、葉身のケイ酸含有率が低く、うどんこ病に対するケイ酸含有資材の発病抑制効果は期待できない。


図1 うどんこ病に対するケイ酸含有資材の効果
   (2007年、場内、無散布区)

1 ケイ酸施用量とうどんこ病
初発月日の関係
  (
2007年、場内)


図2 うどんこ病に対するケイ酸含有資材の効果
2007,上川管内生産者③)

表2 ケイ酸施用量と土壌可給態ケイ酸、葉身ケイ酸含有率および果実のブルーム発生(2007年場内)


表3 ケイ酸施用量が土壌可給態ケイ酸、葉身ケイ酸含有率に及ぼす影響(2007年現地)

表4 ポット試験のケイ酸処理が土壌可給態ケイ酸および葉身ケイ酸含有率に及ぼす影響


4.成果の活用面と留意点
1)ケイ酸吸収とうどんこ病の関係についての参考資料とする。
5.残された問題とその対応