成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:トマトの病害虫に対する生物農薬を活用した減化学農薬防除技術
     (ハウス野菜の病害虫に対する生物農薬の適応性検定)
     (ハウス野菜の病害虫に対する生物農薬を活用した減化学農薬防除体系)
担当部署:道南農試 研究部 病虫科
協力分担:
予算区分:農政部事業(クリーン)
研究期間:2005〜2007年度(平成17〜19年度)
1.目的
トマトの地上部には各種の病害虫が発生し減化学農薬栽培を難しくしている。一方、生物農薬について現地から適用性や活用法の確立が求められている。そこで、トマトの病害虫に対する生物農薬の適用性を明らかにし、各種防除法と組み合わせた減化学農薬防除技術を確立する。

2.方法
1)バチルス・ズブチリス剤(BS剤)の防除効果評価:灰色かび病、葉かび病、うどんこ病
2)耕種的防除法の検討:抵抗性品種、栽培管理
3)BS剤を活用した減化学農薬防除体系の防除効果評価
4)主要害虫に対する各生物農薬の防除効果評価:オンシツコナジラミ、ミカンキイロアザミウマ、アブラムシ類
5)病害虫に対する生物農薬を用いた減化学農薬防除体系実証

3.成果の概要
1)灰色かび病に対してBS剤のインプレッションとエコショットで防除効果が高く、エコショットは散布による果実の汚れもなく、収穫期の使用が可能であった。葉かび病に対してはいずれのBS剤も効果が不安定だった。うどんこ病に対してもBS剤は防除効果を有した(表1)。
2)葉かび病は、Cf-9を持つ抵抗性品種で発生を回避できる。初発時の罹病葉除去は葉かび病の伸展抑制効果があり、薬剤散布と併用することでBS剤の防除効果が安定する。
3)半促成作型では、灰色かび病の初発時から、化学農薬・BS剤交互散布の防除体系(化学農薬の使用回数5割減)で慣行と同等の防除効果が得られた(表2)。夏秋どり作型では以下の防除体系で化学農薬の使用回数を半減できた。(1)葉かび病抵抗性品種の利用と上記の交互散布(2)罹病性品種の場合、交互散布のBS剤を葉かび病発病複葉率1割を超えた場合にポリオキシン複合体水和剤(Po)に置き換える。また、夏秋どり作型ではうどんこ病が発生する場合もあったが、上記散布体系で同時防除が可能であった(図2)。
4)モニタリング法として、オンシツコナジラミ成虫の黄色粘着板による捕獲状況(1日1頭以上が連続して捕獲される場合)はトマトでの寄生初発をとらえるのに有効であった。すす汚染は、平均幼虫密度5頭以下/小葉で少なかった。ミカンキイロアザミウマは青色粘着板よりも葉での被害痕や寄生虫数を調べる方が初発を検出し易かった。
5)オンシツコナジラミに対して、ボーベリア・バシアーナ剤(Bo)、バーテシリウム・レカニ剤及びペキロマイセス・フロモセウス剤は防除効果があり、特に、Bo剤の効果が高かった。ミカンキイロアザミウマに対しては、Bo剤とククメリスカブリダニ剤で防除効果がみられた。アブラムシ類では速効的に有効な微生物農薬はなかった(表3)。モニタリングによりコナジラミやアザミウマ(少発生条件下)の初発をとらえて、これらの生物農薬を複数回散布することで(図2)、化学農薬を用いなくても密度を低く抑えることが出来る(図1)。アブラムシ類は通常防除がいらないが、増加する場合には化学農薬で対応する。
6)本実証試験では、これら病害虫に対して発生対応と各生物農薬を活用した防除体系により(図2)、YES!clean基準以下に化学農薬の使用回数を抑えた。





                       
図2 トマトの病害虫に対する生物農薬を活用した減化学農薬防除体系モデル

4.成果の活用面と留意点
1)トマト栽培の減化学農薬でYES!cleanの基準をクリアする防除技術として活用する。
2)病害虫の発生に応じてこれらの生物農薬を用いた防除法を組み合わせて活用する。

5.残された問題とその対応
1)新規生物農薬の評価
2)ミカンキイロアザミウマの多発条件下での効果実証