成績概要書(2008年1月作成)
課題分類:211-k-03-106
研究課題:圃場作業運転支援GPSガイダンスシステム
担当部署:農研機構・北海道水田輪作研究チーム
担当者名:井上慶一、新居和展(ジオサーフ社)、張 雲(ジオサーフ社)、村上 毅
協力分担:ジオサーフ(株)
予算区分:顕在化ステージ(科学技術振興機構)
研究期間:2006〜2007年度
1.目的
農家戸数が年々減少する中、1戸当たりの経営面積の増大、熟練者不足により、益々省力で高速かつ高精度作業が求められている。そこで、農業者が容易に利用でき、大区画圃場での高精度な作業が可能なGPSを利用した圃場作業用運転支援ガイダンスシステムを開発し、実証での適用効果を明かにする。

2.方法
1)GPSと姿勢センサ(方位センサ内蔵の3軸ジャイロ)とノートPC、外付け液晶パネルを接続し、GPSの位置、速度情報をPCに取り込み、圃場区画、作業条件に応じて目標作業経路を表示し、現在位置、進行方向、作業速度、作業範囲をリアルタイムに表示するガイダンスシステムを開発し、圃場において各種作業試験を行う。

2)姿勢センサの方向データとGPSの位置、速度情報から、フィルタリングしたシステムの位置、方向、速度データの精度を調べるため、位置精度の高いRTK-GPSと3軸FOG姿勢計測装置を搭載し、圃場を走行して精度を検証する。またGPS単体においてもフィルタリングを行い、安定性を検証する。

3)開発したガイダンスシステムを用いて、北農研圃場、安平町での広幅施肥機による小麦の追肥作業試験、佐呂間町畑作農家の大規模圃場での粗起こし作業試験、融雪剤散布作業試験などでの実証試験でシステムの実用性を検証する。

3.成果の概要
1)作業条件・圃場情報、作業方法の登録・修正、GPS情報のリアルタイム表示、各種の座標系、目標作業ライン表示、作業軌跡表示、自動画面スライド、自動作業記録・リプレイ機能、運転操作用状態予測誘導表示(0.5〜3秒後の車両位置、変位、方向を計算して表示する)、転回ガイドライン表示、シェープファイル背景図読み込み、方位視点切り替え、複数画面表示、タッチパネルによる簡単入力などの機能を有するグラフィックユーザインターフェース(GUI)の運転操作支援ソフトを共同で開発した(図1)。

2)GPSの位置、速度データとジャイロの方向、姿勢データをフィルタリングし、精度を向上させることができた(図2、3)。GPSデータが取得できないときにもデッドレコニング(内界センサ等で位置認識を行うこと)で短時間の間で位置、方向表示が可能である。作業中の表示位置誤差はRMS15cm、±40cm以内である。GPS単体でも平坦地では、位置誤差は同程度であったが、方向表示の応答性と精度は若干劣った。

3)本システムを利用してトラクタ往復走行を行う場合、目標作業経路からのずれ(運転精度)を±20cm以内とし、設定した任意の作業幅の等間隔作業ができる。慣れるに従い追随精度を向上でき、図5のように作業幅に応じて一定間隔の平行作業ができる。作業速度15km/hまで使用可能である。

4)現地農家での利用試験(図6)では、始めは画面の表示にとらわれて蛇行したが、1往復して慣れると作業精度が向上し、小麦追肥、粗起こし作業とも実用性が高いことを確認した。表示画面をトラクタパネル前面に設置して前方視野に入った方が視点をずらさずにすみ、直進が保たれる。

5)慣行法のポールを目印にした小麦の追肥作業(散布幅23m)で、散布軌跡をGPSで調べた結果、一部で最大1.2m程の散布もれがあった(図7)。ガイダンス利用により作業跡を確認しながら修正ができる。

6)圃場区画の地図取得としてGoogle Earthを利用して圃場マップ、ガイダンス背景図作成を行った。

4.成果の活用面と留意点
1)1行程距離の長い大区画圃場や傾斜地(10°以内)、またマーカの使用できない圃場でも高精度な平行直進作業や中割り、飛び越し作業が可能である。変形圃場での曲線作業には対応していない。
2)本システムの適応作業は、耕起、肥料・薬剤散布、融雪剤散布、牧草の反転集草作業などである。
3)システムの使い方に慣れるのに半日程度かかる。モニタ装置は作業時の視野の範囲内に設置する。
4)2007年9月よりジオサーフ社より市販化されている。

  



 

5.残された問題とその対応
ユーザーの用途に合わせたシステムの改良、変形圃場での曲線作業への対応、自動走行機能の付加、低価格化。