成績概要書 (2008年1月作成)
研究課題:飛散防止カバー付き畦間散布装置を用いた除草剤の低飛散・畦間散布技術
       (畦間散布装置を利用した除草剤の低ドリフト散布技術)
担当部署:中央農業試験場 生産研究部 機械科
協力分担:植調北海道試験地
予算区分:受託
研究期間:2006−2007年度 (平成18−19年度)
1. 目的
作物体への付着およびドリフト(漂流飛散)を最小限に抑制する飛散防止カバー付き畦間散布装置の改良とその検証および薬液散布時の除草効果を大豆作にて明らかにすることを目的とした。

2. 方法
(1) 畦間散布装置の概要:
畦間散布装置は懸垂型のソリ型バーに畦間散布用のノズルと飛散防止カバーで構成される。畦間散布装置は4畦用で、乗用管理機の前方ブームに取り付けた専用フレームにゴム製の波ベルトで固定する簡易な構造であることから多様な畦幅に対し調節可能である。(図1、表1)。
(2) 供試ノズルの噴霧量および粒径分布試験(室内試験:2007):
供試ノズルは噴霧角70°の扇形ノズル(PC5-70)を用い、ポンプ(MS800S)にて噴霧した噴霧量および粒径分布を散布圧力4段階(0.3、0.5、0.7、1.0MPa)で測定した。
(3) 畦間散布によるドリフト(漂流飛散)および付着特性(現地試験:2006(長沼町)〜2007(南幌町)):
大豆(「スズマル」:畦幅66cm、「トヨムスメ」:畦幅60cm)を対象とし、長沼町(2006/7/25)および南幌町(2007/7/31/)にて実施した。散布ノズルはPC5-90(2006)および飛散低減のため噴霧角を70°に改良したPC5-70(2007)を用いた。散布試験はブーム高さを地上より70cm、畦の最上部(平均畦高さ:2006年度7.8cm、2007年度7.2cm)と散布部の飛散防止カバー最上面の高さが一致するように飛散防止カバーの角度を調整し実施した(図2)。
○ドリフト測定: 散布区域の境界から風下側に0.0m、1.0m、2.5m、5.0m、7.5m、10m(6段階)、大豆の草高(試験区内平均:2006年度:30.9cm、2007年度:52.3cm)を目安に感水紙を設置した。
○付着測定: 大豆の株間のほぼ中間位置に付着測定用感水紙を貼り付けたグラスファイバー製支柱(高さ:畦の最上部〜草高の上部まで)を、垂直と平行に設置した。ドリフトおよび付着測定の判定は薬剤付着度標準図を用い高さ1cmごとに0〜10段階で評価した。
(4) 除草効果の解明(現地試験:2006(長沼町)):
使用薬剤はビアラホス液剤(非選択性、接触剤)を用いた。薬量は300mL/10a、500mL/10aの2段階とし、散布水量は100L/10aとした。散布試験は長沼町(2006/7/25)にて実施した。調査項目は雑草の種類、雑草重量とし、8日後に効果測定を行った。

3. 結果の概要
(1) 供試ノズルは低圧散布用の扇形ノズルである。ノズル1個あたりの噴霧量は3.16 L/min (0.3MPa)〜7.02 L/min(1.0MPa)であり、平均粒子径は312〜342μmであった(表1)。
(2) 畦間散布装置では風速2.7m/sの条件下(2007年度)においても、機体より風下10mまでの感水紙に付着が認められなかったことから、ドリフトが生じていないものと判断された(表2)。
(3) 噴霧角90°の散布ノズル(PC5-90)では、作物体下部への付着が見られたが、畦間60〜66cmにおいて噴霧角70°の散布ノズル(PC5-70)では、作物体への付着は認められなかった。噴霧角の改良により作物体への薬剤付着に関する問題が解消された(図3)。
(4) 現地試験における、除草効果は明らかで、一部に、下位葉への付着による薬斑がみられたが、大きな薬害は認められなかった(表3)。
(5) 作業能率試験は面積29.4a(220m×13.2m)の圃場で実施した。作業人員は供試機の操縦者1名であった。平均作業速度1.03m/sで、作業能率は0.80ha/h、燃料消費量は2.16 L/hであった(表4)。

図1 供試機の概要
       
図2 飛散防止カバーの調製法


  図3 薬剤付着度標準図を用いた付着特性
表1 供試畦間散布装置および乗用管理機の概要
表2 ドリフト特性


表3 雑草種、草重および無処理区比


表4 作業能率


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. 成果の活用面と留意点
(1) 本成績は大豆に対するビアラホス液剤の畦間処理を対象とし、乗用管理機に装着した4畦処理の試験である。
(2) 薬剤の使用基準および北海道「農作物病害虫・雑草防除ガイド」を遵守すること。なお、ビアラホス液剤の大豆に対する畦間処理は平成20年1月の北海道農業試験会議に提出する予定である。
(3) 播種後に除草剤の土壌処理等を行うなど、雑草発生の抑制に努めること。
(4) 機械除草や中耕等で株近傍に土寄せした場合は、飛散防止カバー上端を土寄せ高さに合わせること。

5. 残された問題とその対応
(1) 他の作物、薬剤に対する畦間散布の検討