成績概要書(2008年1月作成)
課題分類:
研究課題:脱水機構をもつ建設機械装着型堆肥切り返し機
担当部署:農研機構・北海道農研・資源化システム研究北海道サブチーム、
       生産支援システム研究北海道サブチーム、北海道経営研究チーム、
       北海道水田輪作研究チーム
担当者名:村上則幸・宮浦寿美・藤田直聡・向弘之
協力分担:北海道農研・研究支援センター、北海道キャタピラー三菱建機販売(株)
予算区分:高度化事業、重点事項研究
研究期間:2004〜2007年度(平成16〜19年度)
1.目的
北海道の酪農では、冬期間は堆肥化が進まない上に、積雪により圃場散布も難しいために家畜糞尿の循環サイクル構築が困難である。そこで北海道の高水分畜産排せつ物の通年堆肥化システム構築を目的として固液分離機能をもつ堆肥切り返し機を開発する。

2.方法
(1)脱水機構をもつ建設機械装着型切り返し機の試作
 加圧による水分低減機能と粉砕機能を兼ね備えた7tクラスのパワーショベルに装着できる堆肥切り返し用バケットを試作する。
(2)実証試験
 試験は北農研大型堆肥舎及び滝上、足寄の現地2カ所の計3カ所でそれぞれ約1ヶ月行う。切り返しは約2週間おきに2回行い、処理区とホイル(フロント)ローダ利用の対照区で堆積内部温度、かさ密度、成分、作業所要時間等を比較する。なお対象とする家畜排せつ物はしき料に麦桿を使用しており、原料水分は北農研が80.1〜81.4%、現地試験は82.2〜84.9%、84.1〜84.4%、かさ密度がそれぞれ493kg/m3、526kg/m3、711kg/m3である。

3.成果の概要
(1)試作機の概要と基本性能
 試作機は根元と先端の2カ所が可動のカバーと、バケット底部による可変容量機構を備えている(表1、図1)。バケットカバーは油圧制御により最大60回/分の頻度で連続開閉が可能である。作業は原料すくい上げの後、カバーによるバケットへの充填・圧搾、その返し動作に連動するバケット底部での原料の再圧縮による脱水。最後にカバーを連続開閉して原料を粉砕しながら放出する(図2)。図2左の状態でカバー開閉を行うことにより、一層の圧搾効果が得られ、1分間の連続開閉では最大約5%の水分低減が可能であった。
(2)原料初期水分を指標とした開発機の作業適応範囲
北農研での試験では、処理1回目の水分の低減は1〜2%程度、処理区のかさ密度が493kg/m3から443kg/m3に変化し、空気の混入効果も認められた。処理後、各区間に明らかな品温差が見られた。ただし、処理2回目後は対照区の最高品温61.4℃に対し、処理区は40℃台であった。乾物減少率は処理区が35.5%に対し対照区は12.2%であり堆肥化促進効果が確認されたものの、C/N比に区間の差異は認められなかった(表2)。作業能率は工程あたりの圧搾(カバー開閉)時間20〜30秒で21.5t/時、ローダ利用時の1/2〜1/3である。滝上における試験での水分低減効果は北農研の試験と同様である。処理2回目後、処理区は68.5℃まで上昇し、対照区と明らかな品温差がみられたが、C/N比は北農研での試験同様、差異は認められなかった(表2、図3)。足寄の試験では、原料の品温はいずれの区も10〜20℃で堆肥化促進効果は確認できなかった(表2)。以上の結果より、本機が適応できる原料の水分及びかさ密度は84%、550kg/m3未満である(表3)。
 表1 バケットの仕様


      図1 パワーショベルに装着した開発機
    
                 図2 一連の切り返し動作
   (左:カバーによる原料の把持と圧搾,中:バッケトを返して底部で圧搾,右:粉砕しながら放出)
  表2 原料の減水効果と品温

       図3 原料の品温の推移(滝上)
          表3 開発機による切り返し作業の目安

4.成果の活用面と留意点
1)麦桿以外のしき料については未検討である。
2)特許出願中(特願2007-108319、2007-108320)の受注生産品(250万円)で、一般的な7tクラス以上のパワーショベルに取り付け可能である。
5.残された問題とその対応
1)作業能率向上のため、ホイルローダ装着の改良型を開発する。