成績概要書(2008年1月作成)
小麦育種の効率化のため、小麦の品質に関連する遺伝子型を判別するDNAマーカーを作成し、その有効性を検討する。 2.方法 1) DNAマーカーの作成 既往の研究報告およびデータベース (DDBJ)などの情報を参考として、小麦の硬軟質性を決定するピュロインドリンの主要な遺伝子型、高分子量および低分子量グルテニンサブユニットの主要な遺伝子型、Wx-B1遺伝子の欠失をそれぞれ判別できるDNAマーカーを作成した。 2) DNAマーカーによる遺伝子型の判別 小麦葉身からDNAを抽出し、PCR法を用いて遺伝子を増幅した。PCR増幅産物は2%アガロースゲルで電気泳動し、サイバーゴールドで染色後、遺伝子型を調査した。 3.成果の概要 1) 硬質(パン用、中華めん用等)小麦、軟質小麦の判別ができるDNAマーカーを作成した(表1、図1)。圃場立毛中に遺伝子型の調査を行うことで、収穫前に硬質小麦を選抜することが可能となった。 2) パン用小麦育種の効率化のために、製パン適性が向上するグルテニンサブユニットGlu-D1d型が判別できるDNAマーカーを作成した(表1)。また、小麦の生地物性に関与するグルテニンサブユニットの遺伝子型を判別できるDNAマーカーも作成した。DNAマーカーを利用することで、収穫前に生地物性や製パン適性の推定が可能となった。 3) アミロース含量がやや低く、粘弾性に優れる日本めん用小麦の遺伝子型であるWx-B1欠失型を判別できるDNAマーカーを作成した(表1)。収穫前に基本系統の遺伝子型調査を行うことで、Wx-B1欠失型に固定した系統を確実に選抜することが可能となった。 4) 北海道小麦品種・系統、遺伝資源について作成したDNAマーカーを用いて遺伝子型の調査を行い、遺伝資源の特徴を明らかにできた。 ![]() ![]() 図1 DNAマーカーを用いたピュロインドリン遺伝子型の判別例 4.成果の活用面と留意点 1) 本方法は小麦品種改良における選抜、遺伝解析材料作出、有望系統の早期作出等に幅広く活用でき、育種の効率化に貢献できる。 2) 以下の遺伝子に関連するDNA配列はこれまで報告がなかったことから、データベースに登録した。Pina-D1b領域(AB262660)、Glu-B1i領域( AB263219)、「ホクシン」のGlu-B3g領域(AB262661)、「ホクシン」「きたもえ」のWx-B1領域(AB272097、AB272098)。 5.残された問題点とその対応 品質関連遺伝子の組み合わせが品質に及ぼす影響の検討 |