成績概要書(2008年1月作成)
研究課題:農業現場で活用可能な小豆ポリフェノールの非破壊測定技術
      (小豆ポリフェノール含量の非破壊測定技術の確立 )
担当部署:中央農試 基盤研究部 農産品質科、株式会社 日本ビュッヒ、
       株式会社 ニップンエンジニアリング
協力分担:十勝農試 生産研究部、JA十勝池田町
予算区分:共同研究
研究期間:2005〜2006年度(平成17〜18年度)
1.目的
 農業現場に普及している近赤外分光装置を用いた小豆ポリフェノール含量、原粒水分の非破壊測定の可能性および栽培年次、産地等の変動要因が非破壊測定に及ぼす影響について検討する。

2.方法
1)小豆ポリフェノール含量および原粒水分に関する検量線の作成

(1)供試試料: 2005、2006年道内各地(表1に示す)産小豆134点(検量線作成用92点、検量線評価用42点)
(2)供試品種および点数:エリモショウズ;69点、しゅまり;13点、きたのおとめ;37点、サホロショウズ;5点、きたろまん;10点
(3)スペクトルデータの測定:スペクトルデータの測定には近赤外分光装置NIRLab N-200型 (日本ビュッヒ社製)(図1)を用いた。試料150gをセルに詰め、下から光をあてて反射光を測定。試料を詰め直して1試料あたり3反復測定した。
(4)実測値の測定:ポリフェノール含量はフォーリン-デニス法により行い、標準物質としては(+)カテキンを用いた。原粒水分は試料10gを105℃、24時間乾燥させ、その重量変化より算出した。
(5)データ解析法:ポリフェノール含量および原粒水分を目的変数、反射スペクトルの吸光度(図2)を説明変数としてPLS回帰分析法(部分最小二乗法)で検量線を作成した。検量線の作成・評価および適合性評価には専用ソフトNIRCal 4(日本ビュッヒ社提供)を用いた。

2)検量線適合性評価
(1)供試試料: 2005、2006年道内各地(表1に示す)産小豆134点および2007年JA十勝池田町産小豆10点
(2)供試品種および点数:エリモショウズ;70点、しゅまり;12点、きたのおとめ;39点、サホロショウズ;11点、きたろまん;12点
表1 供試試料の産地内

3.成果の概要
1)道産小豆のポリフェノール含量および原粒水分を近赤外分光装置 NIRLab N-200型で測定するための検量線を作成した。
2)検量線作成に用いた小豆のポリフェノール含量は224〜589mg/100g FWの範囲に、原粒水分は8.7〜15.3%の範囲に分布しており、検量線作成・評価するためには十分に広い分布範囲であった(表2)。
3)作成した検量線は、予測標準誤差(SEP)がポリフェノール含量に関しては39.2mg/100g FW、原粒水分に関しては0.46%といずれも目標SEP(ポリフェノール含量;50.0mg/100g FW、原粒水分;1.0%)の値を下回っていた(表2、図3、4)。
4) 2005、2006年道内各地産小豆を用いて、作成した検量線の適合性を評価したところ、ポリフェノール含量、原粒水分ともに産地、栽培年次(表3)および品種の違い(データ省略)による影響は小さいと考えられた。また、検量線作成・評価用試料とは栽培年次の異なる2007年JA十勝池田町産試料への適合性を評価したところ、SEPはポリフェノール含量に関しては28.6mg/100g FW、原粒水分に関しては0.39%であり、適用可能であると考えられた(表3)。
5)トラック荷台内の変動係数は1.82〜2.86%であり、市販の袋詰「エリモショウズ」の変動係数を下回っていたためサンプリング点数は3点程度が適当と考えられ(データ省略)、トラック到着から測定結果が判明するまでの所要時間は20分程度と想定された(図5)。
6)以上の結果より、NIRLab N-200型による小豆のポリフェノール含量および原粒水分の非破壊測定は可能であることが明らかとなった。また、作成した検量線はバイアス補正することにより、産地および栽培年次の異なる試料に対しても適用可能と考えられた。

   
図1 測定装置およびデータ解析用コンピュータ
 
            図2 得られたスペクトルデータ(一部)
 表2 検量線作成・評価用試料の実測値および検量線精度
 
 
  図3 検量線評価用試料の実測値と推定値の関係
          (ポリフェノール含量)

        
2005、2006年道内各地産小豆

   図4 検量線評価用試料の実測値と推定値の関係
               (原粒水分)

         2005、2006年道内各地産小豆
表3 産地および栽培年次の違いが推定に及ぼす影響


図5 想定される農業現場における作業手順および所要時間
注)試料点数をトラック1台あたり3点とした場合
4.成果の活用面と留意点
1)近赤外分光装置 NIRLab N-200型を用いることにより、農業現場において小豆のポリフェノール含量および原粒水分が非破壊で簡易且つ迅速に測定可能である。
2)本試験で用いたものと同型装置においては、作成した検量線を移設することにより本技術が利用可能である。
3)本技術は農協施設で受け入れる際に測定することを想定している。
4)検量線はバイアスが生じる場合があるので毎年、当年産の小豆試料を用いてバイアス補正する必要がある。

5.残された問題とその対応
1)供試5品種以外の品種への適用