【指導奨励上参考に資すべき事項】
水稲苗代様式に関する試験成績

岩見沢水稲試験地

 

1. 成績の概要
  本年の天候が稀有の高温多照の天候に恵まれたため、例年の天候下に於いての苗仕立法を異にした場合の優劣を正しく判断することは困難であるが、大体次のことが云える。
 (1) 紙被覆及び無蓋の陸苗代は草丈は短いが、健苗で植傷みが少ない。しかし草丈が短いことと、分げつが大きいため挿苗作業に困難が多い。従って本育苗法を行うとする時は冷
   床苗仕方法よりも床土の培養を十分に行って苗の生育を助長させることが必要である。紙被覆陸苗代は油紙被覆中と雖も、土壌の乾燥状態によっては灌水する必要はあるが、そ
   の量は無蓋陸苗代程でなく、雀害の被害が少なく、苗立、生育状況も著しく良いことから、資材、労力を考慮した場合一部導入することは得策と思われる。
 (2) 被覆折衷及び紙被覆折衷の両苗代は冷床苗程、健苗であるとは言い難いが、床土の培養、外圍の除去期に注意すれば実用的には大きな遜色がないものの様であり、又折衷苗代
   様式両間には大差が認められなかった。
 (3) 保温折衷苗代は発芽並びに苗立が比較的良好であることは、被覆水苗代、普通苗代が稲苗腐敗病で全滅に近い惨状を呈した実態からも安全な苗仕方法と考えられる。
   しかし、苗の伸長が早くて挿苗作業には好都合であるが、苗が比較的弱く出来上がり傷みが多く要し、且苗取作業の際苗代の床土の表面が固結していることから能率が悪く、苗の
   損傷の多いことは注意を要する点で、先床土の肥培管理を行って床土の改善を行うと共に、床土土壌の性質を考慮して代掻きを加減したりすると共に、油紙除去後の灌水方法を加
   減したり、外圍の除去期に注意と工夫を行って頑健になる様な方途を講ずることが必要である。

 以上を総合すると、育苗法としては冷床苗代に優るものはないが、労力、資材を考慮して他の育苗法を採用する時は、陸苗代では紙被覆陸苗代折衷式、育苗法では被覆折衷苗代、又は紙被覆折衷苗代が適当で保温折衷苗代は普通苗代に代わって行うべき育苗法である。

2. 試験成績
 第1表 苗代に於ける調査
苗代様式 播種期
(月日)
発芽期
(月日)
被覆紙
除去期
(月日)
被覆
日数
移植期
(月日)
紙除去後
苗代日数
苗代
日数
成苗
歩合(%)
草丈 葉数 風乾
重量
冷床苗代 5.7 5.14     6.8   32 91 12.1 4.0 4.80
紙被覆陸苗代 〃  5.15 5.23 16 6.9 17 33 88 10.6 4.4 3.10
無蓋陸苗代 〃  5.19     6.13   37 79 10.5 4.4 3.55
被覆折衷苗代 5.8 5.15     6.9 16 32 89 13.3 4.2 4.50
紙被覆折衷苗代 〃  5.15 5.24 16 6.9   32 76 12.4 4.2 4.55
無蓋折衷苗代 〃  5.23     6.13   36 63 11.5 4.4 2.80
保温折衷苗代 〃  5.16 5.24 16 6.9 16 32 80 16.4 4.4 3.30
被覆水苗代 〃  5.15     6.13   36 19 - - -
普通苗代 〃  5.18      6.13   36 6 - - -

 第2表 本田に於ける調査
区別 植傷 出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
成熟期に於ける
稈長(cm) 穂長(cm) 穂数(本)
冷床苗栽培2本植 8.1 9.10 61.7 16.9 16.3
紙被覆陸苗栽培3本植 8.1 9.10 60.2 17.0 17.1
無蓋陸病栽培3本植 8.2 9.11 61.4 16.6 16.2
被覆折衷苗栽培3本植 8.2 9.10 59.2 17.3 16.4
紙被覆折衷苗栽培3本植 8.1 9.10 62.3 17.0 17.0
無蓋折衷苗栽培3本植 8.2 9.11 60.9 16.3 15.8
保温折衷苗栽培3本植 8.2 9.11 63.3 16.9 17.7
被覆水苗栽培4本植 8.2 9.11 62.2 15.7 18.3