【指導奨励上参考に資すべき事項】
水稲苗代様式に関する試験成績

上川支場

 

1. 試験成績
 第1表 苗代期に於ける生育調査
区別 播種期
(月日)
発芽期
(月日)
被覆紙
除去日
(月日)
紙被覆
日数
(日)
移植期
(月日)
苗代
日数(日)
1 冷床 5.6 5.14 - - 5.31 25
2 紙被覆陸苗代 5.6 5.14 5.20 14 5.31 25
3 無蓋陸苗代 5.10 5.25 - - 6.12 33
4 被覆折衷苗代 5.6 5.16 - - 5.31 25
5 紙被覆折衷苗代 5.6 5.16 5.24 18 5.31 25
6 無蓋折衷苗代 5.10 5.25 - - 6.12 33
7 保温折衷苗代 5.6 5.17 5.24 18 5.31 25
8 被覆水苗代 5.6 5.16 - - 6.12 37
9 普通水苗代 5.10 5.18 - - 6.12 33

 第2表 移植当日調査
区別 草丈
(cm)
葉数
(枚)
生体重
(g)
1 冷床  11.48   2.89 5.12
2 紙被覆陸苗代 10.94 3.08 6.70
3 無蓋陸苗代 10.29 3.84 13.25
4 被覆折衷苗代 12.48 2.72 6.80
5 紙被覆折衷苗代 10.39 3.00 7.50
6 無蓋折衷苗代 9.63 3.79 13.65
7 保温折衷苗代 9.75 2.50 5.70
8 被覆水苗代 12.88 3.82 10.60
9 普通水苗代 10.35 3.96 10.33

 

2. 本田に於ける生育並びに収量調査
 (1) 本田に於ける生育調査
試験
番号
区別 成熟期に於ける
稈長 穂長 穂数
1 直播 63.00 14.25 23.32
2 冷床 68.45 15.15 15.65
3 紙被覆陸苗代 67.17 15.70 15.52
4 無蓋陸苗代 71.27 16.30 15.22
5 被覆折衷苗代 68.95 15.50 15.77
6 紙被覆折衷苗代 68.75 15.70 16.17
7 無蓋折衷苗代 71.85 16.32 15.15
8 練床式被覆折衷苗代 68.72 15.82 15.62
9 保温折衷苗代 68.57 15.20 16.27
10 被覆水苗代 70.57 16.17 14.27
11 普通水苗代 68.55 16.37
0.89
14.45
  有意限界差 t=0.05 1.84   2.08
  有意限界差 t=0.01 4.95 1.21 2.80
  変異係数 0.0370 0.0403 0.0898

 (2) 収量調査
区別 出穂期
(月日)
反当玄米
重量(貫)
反当
玄米容(石)
1 冷床 7.28 119.115 2.998
2 紙被覆陸苗代 7.29 113.317 2.859
3 無蓋陸苗代 8.2 106.644 2.696
4 被覆折衷苗代 7.28 122.281 3.071
5 紙被覆折衷苗代 7.29 118.539 2.994
6 無蓋折衷苗代 8.2 99.332 2.517
7 保温折衷苗代 7.29 110.926 2.817
8 被覆水苗代 8.3 102.741 2.600
9 普通水苗代 8.3 97.898 2.501

 

3. 考察
 (1) 育苗期に於いて、保護苗代の中の陸苗形式のもの、折衷形式のものは明らかに水苗形式(保温折衷苗代を含む)のものよりも生育が優りその影響は本田初期迄継続していたが、
   其の後に於いて水苗形式中の保温折衷苗代との間に於いて優劣の差は統計学的に認められなくなり、被覆水苗代との間にのみ最後迄優劣の差があった。又当然ではあるが普通
   苗代よりも早く播種し、保護を加えたためその優劣は本田に於いて後期迄継続された。
 (2) 本試験に於いては、保護苗代は保護を加えない苗代に優るが、保護苗代間に於いての優劣の差は統計学的には認め難い。(但し被覆水苗代は特に悪かった)…収量について
   水苗形式のものは他の形式のものに比較して明らかに劣る。
   一般に折衷形式(上川支場の折衷苗代は、発芽時だけは踏切り溝に水をいれるが、それ以後は全く落水して陸苗形式にする)のものは最も優れたる結果を示したが、陸苗形式のも
   のと育苗場所が異なるので一概に断定し得ないので再検討を必要とする。
 (3) 総じて保護苗代のものは普通苗代より出穂期も早く多収であり、寒冷地向きの稲作法と云える。又陸苗形式(その事が保護苗代でも普通苗代)のものが水苗形式の物よりも寒冷地
   に於いては優る傾向を示しているようである。