【指導奨励上参考に資すべき事項】
玉葱仔毬栽培試験
北農試本場園芸作物研究室 |
1. 試験目的
玉葱仔毬栽培の実用価値に就いて直播栽培法と熟期、収量その他を比較調査する。
2. 試験年次
昭和23年より昭和25年
3. 試験材料
札幌黄
4. 耕種梗概
仔毬養成及び栽培共下記の通り施肥した。
(1)仔毬養成
畦巾一尺五寸、株間四寸、三坪当1.2~2.4合の密播、播種期五月上中旬、収穫期九月中旬、翌春迄貯蔵
(2)仔毬栽培
五月上旬栽植、八月上中旬収穫
(3)反当施肥量
堆肥600〆、魚粕10〆、硫酸アンモニア3〆、過燐酸石灰8〆、塩化加里3〆
5. 試験方法
仔毬をその大いさにより次のように分け萌芽の短いものを選んで栽植し、それに直播対照区を設け、熟期収量等を比較調査した。
区名 | 毬の大いさ(直径) | |
第1区 | 特大毬 | 2.5糎以上 |
第2区 | 大毬 | 2.4~1.8 |
第3区 | 中毬 | 1.7~1.2 |
第4区 | 小毬 | 1.1糎以下 |
第5区 | 直播対照 |
6. 試験成績
仔毬栽培(昭和24年、25年)
区名 | 栽植期 (月日) |
成熟期 (月日) |
欠株率 (%) |
抽苔率 (%) |
腐敗+ 青立率 (%) |
不抽苔 一個重量(g) |
抽苔球 一個重量(g) |
三坪当実収量 | ||
不抽苔 個数(ヶ) |
抽苔 個数(ヶ) |
合計(ヶ) | ||||||||
第1区 | 4.25 | 8.7 | 10.0 | 96.7 | 2.4 | 60.0 | 56.8 | 10 | 271 | 281 |
第2区 | 〃 | 〃 | 9.3 | 71.4 | 2.3 | 61.9 | 67.2 | 80 | 201 | 281 |
第3区 | 〃 | 8.6 | 15.2 | 22.4 | 7.1 | 49.0 | 59.9 | 208 | 60 | 268 |
第4区 | 〃 | 8.7 | 12.0 | 0.6 | 11.9 | 35.5 | 48.4 | 253 | 2 | 255 |
第5区 | 4.29 | 9.21 | 37.8 | 0 | 15.2 | 20.9 | - | 244 | - | 244 |
播種量調査(昭和23、25年) | |||||
播種量 |
播種期 (月日) |
収穫期 (月日) |
二坪当 実収量(ヶ) |
1.7cm以下の収量 及び収量比 |
|
三坪当 1.2合 | 4.30 | 9.28 | 2361 | 1608 | 010.0 |
1.6合 | 〃 | 〃 | 2761 | 2029 | 126.2 |
2.0合 | 〃 | 〃 | 2575 | 1913 | 119.0 |
2.4合 | 〃 | 〃 | 2805 | 2636 | 163.9 |
2.8合 | 〃 | 〃 | 2579 | 2150 | 133.7 |
7. 考察
以上の成績により直播栽培に比しセット栽培の著しく異なる点を列記すると次の通りである。
(1) 熟期の促進
直播栽培に比べ生育日数が短く1ヶ月半近く収穫期が繰り上げられる。
(2) 抽苔
仔球の第なるに随い抽苔性高く、特大球は97%、大球で71%、1.1cm以下の小球では殆ど抽苔しない。
(3) 欠株
欠株が少なく、直播栽培の約1/2以下である之は玉葱蠅の被害を殆ど受けないためである。
(4) 球の重量
不抽苔球は球揃いがよく且つ大球が得られる。
(5) 収量
セット栽培は直播に比し著しく多収であり、就中大球種が最多収であり特大球これに亞いでいる。然し仔毬の大きい場合には抽台が多く、且つ分球を生じ、品質は著しく低下する。
随って仔毬としては抽苔、分毬収量等の点より見て中球或いは小球種を供用すべきである。
(6) 貯蔵性
セット栽培のものは翌春萌芽が早い傾向があり、特に仔球が著しい。
(7) 仔球の養成
1.7cm以下の仔球を得るためには、五月上旬に三坪当二合四勺の密播をするとその収量が多い。
(8) 病虫害
セット栽培には玉葱蠅の被害が殆どなく、且つ黒穂病の被害を回避することが出来る。然し仔毬養成に際しては之等の病虫防除対策を充分講ずる必要がある。
(9) 仔毬
栽培は直播の場合に比べると土地に対する適応性が大きく、栽培が容易であるから自家用玉葱の栽培法としては適当である。